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城に泊まることに

「遅かったな、勇者アスナ。待ちくたびれたぞ。それにしても、最初あった時も男共を纏わり付かせていたが、それが常か?」

「すいません。王都での被害場所に立ち寄っておりました。それと、この状況は偶然また起こっただけです。タイミング的な問題です。」


 王子は階段を下りきると、怪訝な顔でそう聞いて来た。今は3人とも私から体を離し畏まっているが、2度もアル達に抱き着かれているとこを王子に見せてしまうとは。いつもって思われても仕方ないのか………。


「そうか。被害場所か。城内の一部も襲われたが見るか?」

「はい。よろしければ。」


 安定の他者に気をかけない王子様。助かったとばかりに、私はすぐに彼の提案に乗っかった。別に被害場所なんて何カ所か見てきたし必要ないが、とにかく場面を変えたい。


 てなわけで、素晴らしい庭を王子先頭に私達4人が歩く。王子自ら案内役というのもどうかと思うが、彼は自分から動くのが好きらしい。サウスの街に勇者がいるというだけで来るくらいだし、10プレメンバーとして冒険の旅に出たりするんだから、そりゃそーか。


「ミスリム王子。襲われたのは城の薬草庫ですか?」

「よくわかったな。騎士。まだ、城内の襲撃情報は外部に漏れてないと思うが。」

「はい、城が襲撃を受けた事さえ知りませんでした。ただ、王都でも襲われたのは薬草を扱っている店ばかりでしたし、この先にあるのは備蓄倉庫だったと記憶しております。」


 アルフレッドと王子が話す。アルフレッドがあまりにも普通にやり取りをしている事にビックリだ。王子を嫌ってると思ってたのは、錯覚だったろうか?にしても、王子と騎士、庭、ん~絵になる。


「そうだな。だが、なぜ薬草など狙っているのか。ドラゴンが弱ってるようだとは聞いてないが。」

「見せないようにしているのかもしれません。野生動物には多い事です。あるいは、別の者が病であるとか。」


 そう、この世界にも薬草があるのです。勿論、怪我や病気を治すのに使用されます。ケインのように回復魔法を使える者は少なく、また、病気は魔法では治せない事からとても重要視されております。はい。それなのにRPGでアイテムとして使用させないとは…………絶対クソゲーの策略だ。


「ドラゴンが他者を助けるために?猛獣にそんな心があるはず無い。」


 むっ、意識を飛ばしてたら、王子から聞き捨てならない言葉が聞こえました。すぐさま私が拳を握ると、さりげなくロークとケインに捕まえられた。


「大人しくしてようね~、アスナちゃん。対応はアルに任せとこうよ~。」

「お前が出るとややこしくなる。しゃべるなよ。」


 2人から耳元に小声でやんわりとそう諭された。さらに、アルフレッドもチラリと私の方を見るとスッと自分の唇に人差し指をあて、シーの合図。幼稚園児かっ。


 え~なに、この暗黙の連携、やだ~。…………まぁ、やらかしそうだったがな。


 私は一応しゅんとしおらしくしてみせる。すると、アルフレッドは口パクでいい子と微笑みをくれた後、王子に向き直った。あ~、幼稚園児どころじゃなく、犬扱いだわ。


「ミスリム王子。お言葉ですが、ドラゴンに心が無いと考えるのは少し性急かと存じます。無機質な物でさえ愛情を注がれれば心を持つ、と身をもってご承知ですよね。」

「…………………。確かに。」


 う~む。私にはよくわからぬ内容だったがアルフレッドの理論に納得する王子。まぁ、ドラゴンの悪口じゃないならいいです。


 そこで丁度、被害現場に着いた。綺麗な庭がいきなり開け、一面無残な荒野が広がっていた。これは王都での現場よりかなり酷い有様だった。王都では店内を啄むように屋根が破壊されているだけだったが、ここは所々地表や大木が大きく裂けていたり、木の倉庫だったのかすごい量の木の板が焼け焦げて散乱していた。

 イエロードラゴンは雷の魔法を得意とするらしい。ちなみにクレ(レッドドラゴン)は火の魔法で、ドラゴンによって魔法属性が違うのだそうだ。そうそう、ついでに言うと私クレについては有らぬトラブルを招くとのことで他言無用と釘を刺されています。


「確認はこれでいいですね。勇者さま。」

「うぇ。は、はい。」


 アルフレッドにいきなりかけられた言葉をかろうじて返した。会話を聞くと口を挟みそうなので、落ちている木の欠片を拾って見ていたところだった。確認は終わりということなのでアルフレッドのところに歩み寄る。


「ミスリム王子。では国王陛下への謁見をお願いできますか?」

「国王に謁見?国王は今、他国に外遊中だが?」


 不思議そうにする王子にアルフレッドは少し顔を引き攣らせる。


「国王陛下からの依頼とおっしゃられていましたよね?」

「これか?これは私からの依頼だが?同じようなものだろう?」


 なにその発想は!?そういうことかぁ。王子をメンバーに選ぶと国王の依頼が断れなくなる、じゃなくて王子が自分で依頼を作ってくるってことかぁ!


 私が驚いてるのを余所に、アル達はやはりなといった顔で小さくため息を漏らした。


「わかりました。王子の依頼はイエロードラゴンの処置ということでよろしいですね。では、用事も済みましたし、我々はこれで失礼いたします。」

「ん?何を言っている?君達にはこの依頼が済むまで城に滞在してもらうよ?」

「「「「え”。」」」」


 勇者一行、始めて声が揃いました。


「我々は正式な依頼を受けるためだけに来ただけですが。」

「そんな、不躾なことをするわけなかろう。依頼主として君達をもてなすように食事も部屋も用意してある。」

「それはお気持ちだけで、結構です。次の襲撃があるとも知れないのに、このようなところで悠長に構えているわけにはいきません。すぐにイエロードラゴンの棲み家と思われる東の果て山に参ります。」


 アルフレッドが丁重に断りを入れる。彼の言うとおり私達は午前中の捜査結果、イーストの街のさらに東方にある東の果ての山からイエロードラゴンが飛んで来ているとの目撃証言により、国王の依頼を受けた後そちらに向かう予定を立てている。…………ネーミングは、気にしない。


「だが、せっかく用意もしてあるし、もうすぐ日も暮れる。今宵だけでも泊まっていけないのか?勇者アスナ………。」


 悲しげな表情を王子に向けられる。ぎゃ~、私に聞くな。そんな風に言われたら。


「じ、じゃあ。一晩だけ。」

「「「アスナ~~。」」」


 すいません。善意は無下に断れません。私、NOと言えない日本人ですから。


「OK!支度しろ!!」


 晴れやかな笑顔で軽快に王子が指を弾くと、庭の物陰からいきなり十数人の黒服メイドと執事の方々が現れた。


 うあっ。どっから湧いてきた?!


 戸惑ってる間に私は数人のメイドに囲まれると、両肩をがしりと素早く捕まれる。


「勇者様は私たちと共においでください。」

「全てお任せくださいませ。」


 彼女達は楽しそうにそう口にして、まるで連行されるように私を城へと引っ張っていく。アル達も執事に捕まって私とは別に城内に連れていかれた。こうして、私はアル達と1人引き離される。


 もしかして、選択肢を間違えた……………かな。


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