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夢のお城は夢でいい。

「わー。本物のお城だぁ。」


 テンション高めに喋るはずのこの台詞。私はトーン低めで言う。


 王子と別れて約1日。私たちは城の門前にまで辿り着いた。別に歩き疲れてこんな態度なわけではない。RPGのためか歩くのはむしろ平気だった。疲れているのは精神的にだ。


 昨日、王子達と別れてから王都へと移動を開始したのだが、その道中ずっと愚痴られていた。主にケインからだが、アルやロークも止めるわけではなく追従して来る始末。昨夜はサウスと王都の街境に近い宿に泊まったのだが、寝るまで懇々と説教だった。主に内容は私の軽はずみな言動とドラゴンに対する誤認について。


 軽はずみな言動については私も猛省している。安請け合いしたのは本当に申し訳ないと今は思っている。ドラゴンにはいずれ会うんだし、わざわざ依頼を受ける必要は無かったな………と。しかし、性格というのは反省すれば簡単に変わるというものではない。16年かけて構築されたものは、改善にも時間がかかる。多分これから先も迷惑をかけるだろうな…………。てなわけで、ついでとばかりに謝り溜めしといた。……………つもり。


 次に、ドラゴンについて、最初に出会ったクレ(レッドドラゴン)はたまたま弱っていたために心を許してくれただけで、これは有り得ない事態だったということだ。ドラゴンというのは本来、人間に馴れ馴れしく接触などしてこない凶暴な猛獣らしい。だから、ドラゴンと仲良くなろうだの、ペットみたいにできると考えるな的なことを言われた。

 この説教にはげんなりした。でも、実はドラゴンについては私の認識は変わっていない。元の世界で、イグアナか蛇を飼いたいと言ったときの親の反応に似ていてたからだ。絶対に偏見だ!しかし、これを言うと説教が大幅に長引くので黙って聞き入れたと見せかけた。


 そして、朝からはドラゴン被害の状況確認として王都へ入ったのだが、私はここでさらに意気消沈させられた。王都を歩く人々の服装は皆、ドレスやタキシードみたいな服装だった。街も小洒落ていて華やかで、一瞬で私は場違いな所に来たなと認識させられる。カウザーが王都が苦手だと言った意味がわかった気がした。アル達はこの中にいても馴染んでいるが、私は明らかに浮いている。服装がドレスじゃないってだけではなく、醸し出す雰囲気からして違う。田舎者が都会に来た感覚といったところだ。まぁ、ここでも私たちに注目されることはないが、なんだか居づらくてドラゴン被害にあった場所の確認もブランチで食べたお洒落過ぎるご飯もよく覚えてない。


 と、いうわけで、精神ふらふら状態で今に至る。



 お城は王都の中心。高い壁に囲まれでっかい門には門番らしき2人の兵士が立っていた。彼らは私たちが名乗る前に勇者御一行ですねミスリム王子から伺っております、と仰々しい態度で通してくれる。ただ、行き過ぎる瞬間、僅かに嘲笑うかのような表情が見えた。


 くっはぁー。やっぱ、勇者っぽくないとか、場違いなんだよとか思われたんだろうなぁ。あぁ。もうさっさと国王様の依頼請けて、出る!!


 私はふん!と気合いを入れて前を向く。さすがといえるほど広くてゴージャスで花咲き乱れるご立派な庭を横目に、城に続く幅広の石畳の道を足早に歩く。メルヘンを現実にした風景に、ど庶民の私は王都にいる以上に浮きまくりだ。けれど、これほどになると逆に吹っ切れる。

 かなりの時間を要して、私たちはようやく城の入口に近づいた。テーマパーク並の広い敷地に聳えるのは、テーマパークにありそうな城。そう、世界遺産とかに出てくるような西洋の古城じゃなくて、白い外壁に青い屋根のお城。乙女ゲームですもんね。友人の乙ゲー雑誌に載ってた華やかなめくるめくスチルのオンパレードの背景が思い出されます。

 入口の扉までには20段程ある正面階段があった。そして、その前になぜか2人のおじ様が待ち構えていた。さすが外人顔は老けてもダンディでいらっしゃる。1人はかっちりとした詰め襟の服に左胸には勲章のような飾りがたくさんついていて、腰にはゴテゴテと飾り立てた剣をさしている。もう1人は黒の引きずるほど長いローブに身を包んでいるが、そのローブは金糸銀糸で細かく刺繍されていて高級感たっぷりだった。


「やあやあ、勇者御一行。ようこそ、いらっしゃいました。私は国家騎士団、団長ドルトス。」

「私は、王都魔導士長エンフィ。お見知りおきを。」


 2人のおじ様が優雅に手を胸にあてて挨拶してきた。ぐおっ、いきなりお偉いさんのお出ましだ。


「アスナです。勇者をさせていただいております。」


 私も緊張しながらぺこりと頭を下げ、挨拶を返した。礼儀とかわからないが、粗相だけはしないようにしなければ。


「それにしても、門番から聞いてお待ちしておりましたが、まさか歩いて参られるとは思いませんでしたな。門からここまでかなりの距離があったでしょう?」


 騎士団長さんが口はしを上げ、軽く笑いながら話しかけてくる。


「そうですね。さすがお城、まるで巨大テーマパーク並に大きいですね。でも、大丈夫です。テーマパークでは皆歩いて回るのが普通ですから、このくらいの距離なら楽勝です!お気遣いありがとうございます!」


 私は大丈夫ですとばかりに胸を張って返した。すると、今度は魔導士長が話しかけてくる。


「あぁ、貴女は異世界の人でしたね。通常、城への来訪者は馬車でここまで来るもので。我々の良識とは随分違うようですねぇ。」

「え、馬車……。あぁ、それで道幅がすごい広いんですね。すいません、そういったものに馴染みが無くて。や、あの、でも知ってます。自動車が開発される前の交通手段ですよね。」


 私なりに分かりうる知識で返答すると、おじ様2人は元々渋い顔をさらに渋くさせた。


 はっ!しまった。元の世界の用語を使ってしまったから何言ってんだコイツみたいに思われてる…………。今更、訂正もできないっつーか、他の表現わかんないわ。


 こりゃ、ヘラヘラ笑っとくしかないな。と、ニコニコ顔をしていたら、ゴホンと騎士団長さんが咳払いし、表情を戻す。


「ところで、勇者殿の御一行にいるのは、我が騎士団を追放された騎士とお見受けするが、ご存知でしたかな?国家騎士団には彼などより、もっと腕の立つ者が大勢います。なんならお貸ししましょうか?」

「それなら、魔導士もですね。魔導士団にも入れなかった取り柄のない黒魔導士と戦闘では全く役に立たなくて魔導士団から排除された白魔導士を連れているようで。こちらにも選りすぐりの人材が沢山おりますよ。」


 騎士団長さんと魔導士長さんはにやりと高慢な笑顔で、私の後ろにいたアル達3人を見やった。私もチラリと後ろを振り返る。3人はばつが悪そうに目を伏せていた。おじ様方の言っていることは確かなようだ。


 アルが騎士団を辞めさせられたのは聞いていたが、ロークやケインも魔導士団とやらに関係があったとは。ん?となると、私のチームって落ちこぼれ集団ってことか。ま、筆頭である勇者がどーしようもない私だから、彼らは十分優秀だが。う~ん、もっとすごい人か~……………??


「そんなに強い人達がいるのに、なぜ弱い我々に依頼がくるのでしょうか??」


 私はおじ様2人にきょとんと首を傾げて聞いてみた。すると、さっきまで自信満々でこちらを見ていた仲良しな2人がお互いを冷たい目で見合う。


「国家騎士団がドラゴンに傷一つ付けられない不甲斐なさの所為でこのようなことになったのですよ。」

「なにっ!貴様ら王都魔導士連中だって手も足も出なかっただろうがっ!」

「ドラゴンには魔法耐性があるんです。そっちでしっかり対処していただかないと。」

「はん!だから魔法使いは肝心なところで役に立たんのだ。」

「ふん。体しか取り柄のない筋肉馬鹿が。」

「てめぇ!ケンカ売ってるのか。」

「そちらこそ。年甲斐もなくやる気ですか!」


 一触即発。おじ様2人は何故か口喧嘩を始めた。


 えッ?あのっ?弱い私たちがドラゴンや魔王退治に駆り出されるのは、勇者や10プレメンバーにはなにか特別な力とかがあるのか聞きたいのですがっ…………。


 尋ねたいがおじ様2人の言葉の応酬に入り込める隙がない。さらに、今にも剣と魔法で戦い出しそうな雰囲気だ。理由がわからず戸惑っていると、いきなりアル達3人が私に抱き着いてくる。


「ありがとうございます。アスナ。」

「アスナ~。ほんと大好き~。」

「さすが、僕の女だ。」


 うええっ!?なんだこれは~??礼を言われることも、好かれることも、俺の女呼ばわりされる展開もなかったでしょ~よぉ。そんなことより、私は特殊能力があるのか知りたいんだよ。


 さらに理由がわからないが、まずは彼らの腕から抜けようと身をよじっていると、バンと城の大きな正面扉が開いた。そして、ずらりと黒服のメイドや執事らしき人が並ぶ。それに気づいたおじ様2人は言い争いをやめ、お辞儀をして階段の両サイドに別れた。ピンと張り詰めた空気の中、現れたのはミスリム王子だった。1日ぶりに見る王子様は相変わらずきらびやかで、バックのお城が大変よく似合っている。そんななか、王子が優雅に階段を下りてきた。

 こ、これは!!様になりすぎで、まるで宝塚!!今にも歌って踊り出しそう…………あ、王子は男だ。

 

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