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5人目の男は………。

「うわぁ……、かっこいいっ!!」


 私は目を煌めかせ、大興奮した。


「青い瞳に金色のたてがみ、真っ白な肌にスラリとした長い足、細身なのに筋肉質な体つき。すっっっごいかっこいい!こんなの間近で見るの初めてぇぇぇ!!」


 うっま~、白馬かっこいい!うわぁぁぁ。素敵すぎるぅ~。触りたいぃぃ~。


 私はじいっと白馬を凝視する。3人に押さえ込まれているから動けないが、フリーなら一目散に近づいていただろうに。くそぅ。


「ふっ。私がかっこいいなど当たり前の事だが。そのようにあからさまに褒められるというのも、悪くないものだ。」


 白馬からひらりと降りてきた男性が少し声を弾ませて言った。


 あれ?彼を褒めたつもりじゃなかったんだけど…………誤解させること言った?えっと、私なんつった?


 私は馬から下りてきた男性と自分の発言とを比べてみる。彼は白馬と同じように青い瞳に金色の長い髪を後ろで一つに束ねていた。


 青い瞳に金色のたてがみ……、たてがみっつったよな、聞き間違われたか?

 それから、真っ白な肌にスラリとした長い足………、そこは当てはまる………か?


 彼の肌は日に焼けてないからか白く、足も長いといえば長い。


 後は、細身なのに筋肉質な体つき………、ってんなこた服の上からじゃわからんだろ。


 彼はキラキラとした金色の装飾が眩しい煌びやかな絵本に出てくるザ・王子様のような衣装を着ていた。大きなマント付き。ジャストサイズだが、体型のわかるようなぴっちりした服ではない。


 う~ん。誤解されても仕方ないのかもしれない………??


 私は眉間にシワを寄せながら自分の頭をそう納得させた。現にカウザーはアスナはこういう男がタイプなのか、とか言って頷いている。しかし、付き合い長めのパーティーメンバーたち、私に絡んでいる3人は黙ってはいるがすんごい震えてます。必死で笑いを堪えてるのが伝わってくるんですけど!!勘違いされた方なのに、なぜか私が恥ずかしい感じになってるんですけど!!


「しかし、それなら何故私は選ばれなかったのだ?」


 彼はふうっとまるで劇でもしているかのようなポーズで額を押さえてため息をつく。私はぽっか~んと口を開けた。


 選ばれなかったって、こいつも10プレメンバー………。うわぁ、攻略対象者かぁ。確かによく見れば壮絶に美形だ。ん~と、役者?奇術師?そんな奴いたっけ?あ~、説明書に目を通すくらいはすればよかった。


 唖然とする私に何か気づいたらしい彼はさらりと長い前髪をかきあげた。そして、優雅に右手を胸にあてる。


「挨拶が遅れたな、失礼。私はミスリム=クーデンノール。この国の王子だ。はじめまして、勇者アスナ。」


 彼はそれはそれは眩しい笑顔で自己紹介をした。キラッキラオーラ全開で。


 王子!!王子様か、いたいた。RPGなのに何でメンバーに王子がいるのって思ったわ。はいはい。だからか。だから、10プレが乙女ゲームになったのか。ファンタジー乙女ゲームには王子必須だよね。そうか、あれ衣装じゃないわけね。…………まじ王子様。


「は、はじめまして………。アスナです。」


 頭を下げて動揺で引き攣っているであろう顔を隠しながら返事をすると、アルフレッドがスッと一歩前に移動した。手はいつの間にか離されていた。また、ロークとケインもさりげなく離れ、私の両側に位置を変える。


「お久しぶりです。ミスリム王子。」

「おや。君は私が騎士団から追放した騎士か。勇者パーティーに拾われていたんだな。」


 アルフレッドが胸に手を当てお辞儀をすると、高飛車な笑顔を浮かべる王子。なんと、彼がアルを解雇をしたオカシナ王子らしい……。


「はい。おかげさまで、とても素晴らしいパーティーに出会えました。」


 アルフレッドは平静を装っているが、ちょっと棘のある言い方。王子嫌い感もろ出ています。けれども、当の王子はどこ吹く風だ。


「そうか。それは良いな。それなら、私も楽しめそうだ。」

「「「は?」」」


 王子の発言に対し3人が一斉に不機嫌な声を上げた。ピンと張り詰めた空気が漂う。うわぁ、これは。


「ミスリム王子。申し訳ありませんが、勇者さまはパーティーメンバーの変更は一切しないそうです。……ねぇ、アスナ。」


 アルフレッドは畏まりつつ私に話を振る。全員の視線がこちらに向いた。…………やっぱり。


「そうなのかい?勇者アスナ。」

「はい。」


 私が頷くと、王子は顎に手を当てて考えるような仕草。演劇感が拭えない大袈裟な素振りなのになぜか様になる彼は、見惚れるというか自然と目がいく魅力がある。


「私の何が不足かな?」

「うえ″。」


 あれ?ヤバい?この人、王子様。めっちゃくちゃ偉い人じゃないか?!下手なこと言ったら………生命の危機じゃないのか?えぇっ!いきなりバッドエンド突入とか?

 

「あ、あの。王子様………だから?」


 私は突如出現した死亡フラグに焦りすぎ、なんだそれな答えを口にしてしまった。


「あ?俺には色々言ってたくせに、王子への理由はそれだけか!?」


 ここにきて、今まで外野にいたカウザーが私の言葉に食いついてくる。


 それだけ………じゃないに決まってんでしょ!王子は直接攻撃も魔法攻撃もそこそこ熟すオールラウンドタイプ。それはいいが、カリスマスキルで低レベルの魔物には出会わなくなる。さらに、王様からの依頼が増え、断れないというオプションつきだ。………ついでに言えば、おまえ、剣士と組み合わせはイケイケどんどんってな感じで行く手は手ごわい魔物どっさり。手っ取り早いレベル上げには最適だが、死にまくる可能性大なんだよ。

 のんびりやりたくて、めんどくさいのは嫌で、メンバーが死ぬのは最も苦手な私には不向きなキャラクター。

 なんて王子様相手に言えるわけないでしょう。


 掘り下げて来るんじゃねぇよ。とカウザーに心の中で毒ずくも引き攣り笑顔で笑うしかない。私のことだ、うまく言おうとしてもどこかで絶対ぼろが出る。それならここは一辺たりとも言うべきじゃないと思う。だって、ケインが恐ろしい目で睨んでるんだ。しくじるなよって!!


「王子だからか………。慎ましやかだなぁ。君は勇者、身分など気にせずともいいんだぞ。」


 王子は私の答えに満足気にしている。どうやら、回答はセーフだったようだ。


「ミスリム王子。そのような事のためにサウスの街まで、わざわざ足を運ばれたのですか?」


 これ以上突っ込まれたら自爆しそうだと思っていたら、アルフレッドが話題を変えてくれた。王子もそのまま乗って来る。


「無論、国王からの依頼があって君たち勇者パーティーを捜しにきたんだよ。」

「依頼………。」


 依頼と聞いた途端、我メンバー一同の周りにはどんよりとした空気が漂う。かく言う私も。


 国王からの依頼は大抵サブストーリー。請けなくてもゲーム自体に支障はないはず。めんどくさいし、断っちゃおうかなぁ。あ、でも、このゲームはRPG部分はかなり削られているはず。メインストーリーに絡んでるかもしれない。


「あのっ。依頼内容を聞いてもいいですか?」

「よかろう。実は、ここ数日間に、王都がイエロードラゴンの襲撃を受け……。」

「了解!やります!喜んで!!!」


 私はドラゴンの単語にさっきまでの態度を一変、話の途中にも関わらず弾かれるように右手を上げて元気に快諾する。途端にガッとケインに手を下ろされ、ギュムッと口をロークに塞がれる。が、時すでに遅し。


「そうか、そうか。この私が直々に足を運んできた依頼。断るはずも無い。」


 王子はご満悦で私の返事に大きく頷く。いや、アスナはおまえじゃなくてドラゴンに釣られたんだよ。とメンバー3人は王子に死んだ目を向けるが、やはり王子はお構いなしだ。


「では、早速君たちには城へ出向いてもらおう。私は一足先に戻る。また、後程会おう、勇者アスナ!」


 王子はバサリとマントを翻すと、ひらりと馬に跨がり颯爽と去っていった。芝居のようなマイワールドを展開させていた王子を見送り、取り残された私たちに暫く沈黙が流れる。


「あははははっ!」


 豪快な笑いで沈黙を破ったのはカウザーだった。


「アスナ、おまえ面白い!あー、ついてってもっと見てぇんだけど、俺、王都は苦手なんだよなぁ。ま、おまえとは、またどっかで会えるだろうし、ここで一旦離れるよ。けど、次こそはメンバーチェンジよろしくな!じゃあな!!」


 カウザーは言いたいことだけ言い放つと、ゲラゲラと笑いながら路地を出て行った。


「…………はぁ」


 新キャラたちが消えて、3人から誰とはなしにため息が漏れる。私はというと、半分以上ドラゴンの事で頭が埋まっていた。自然と顔がにやけて、止まらない。


「ウフッ、ドラゴン………♪」


 私がポロリと口を滑らすと、3人がギロリと睨んでくる。


「「「アスナ~~。」」」


 あれ?れれれ…………。怒ってる。なぜに?なんで?何が???


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