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4人目の男

 う~~~ん。男友達っていたことがないかったのでよくわかんないんですが……………。これ、どうなんでしょうか??


 私は今左手をアルフレッドと繋いで、右腕をケインに捕まれ、後ろからロークに首元に絡みつかれてます。アルフレッドと自然と手を繋ぐと、2人が不平等だと言いだし、この体制になりました。手を繋ぐ自体を辞めようと進言してみたのですが、街に着くまででいいからとアルフレッドが頑なに言うので了承せざる終えませんでした。が、歩きづらいし、暑苦しい。パーソナルスペースというものは彼らにはないのか?


「やっと着いたぁ。」


 大きな街の入口で私は大きく息をつく。3人は渋々といった感じで体を離してくれました。おぉ、自由!!体を掠める風が気持ちいい。


 着いた場所はサウスの街。始まりの地なんて目じゃないほど大きな街だった。行き交う人の量も桁違いで、忙しなく歩いている。着いたのは昼近くだったため、私たちはまず腹ごしらえをすることにした。

 適度に混雑した店に入っていく。ここでも食事方法は一緒のようで勝手に席に着けば店員さんがやってくる。店のオススメを数品頼んで、並べられた大皿料理を取り分け、いただく。始まりの地の料理より色味が鮮やかになってるが味は大差ない。


 うまいごはんは、幸せだなぁ。


 私はもくもくと自分の皿の料理を平らげていく。そんな時に、バーンと派手な音を立てて横柄に店の中に入ってくる男性がいた。彼は真っ黒な服に同色のレザーっぽいロングコートを着て、短い黒髪に黒い目、背中におっきな黒い剣を背負っていた。日本人と同じ黒髪黒目だけど、ワイルドって感じの顔立ちはこの世界の人なのねと自然と納得させられる。


 3人以外にもイケメンっているんだな。ここ大きな街だし、そりゃそうか。にしても黒一色。


 なぜこんなにまじまじと見てるかって?そりゃ、派手な音に驚いて見ていたら、きょろきょろしていた彼が私と目が合うなり、ものすっごい凄んでいるからです。蛇に睨まれた蛙みたいなものでしょうか?いや、動けるな。知らない人だし関係ないわ。私は目の前の料理に視線を戻す。


 冷めないうちに食べなきゃ、もったいない。


 パクっと再び料理を口に運んだ時だった。ズドッと目の前でものすごい音がした。顔を上げると私の数センチ前に黒く光る幅広の剣がテーブルを貫いてぶっ刺さっている。そして、その柄を持っているのはさっき入口で見た男性だった。いつの間にここまで来たのか、全く気配すら感じなかった。仲間の3人は…………いち早く飛び退いております。


 おいおい。私は助けんのか。勇者だからできるだろって?いや、完全に気を抜いてましたけど。ダメなんですか?食事中でもいつでも警戒しとかないとですか………。無理ですね。集中力すぐ切れるんで。


 呆然としていたら、がっつり見下してくる黒い人はフンッと鼻を鳴らして、口はしを上げた。


「へぇ。避けないとは、意外と度胸あるじゃねえか。」


 いや、単に反応出来なかっただけですが?


「怖くねぇのか。さすが勇者だな。」


 え~、とっても、怖いですが。座ってなかったら尻餅ついてますよ。


「いいね。共に旅するならそのくらい図太くなきゃな。俺の名はカウザー=フロイド。剣士だ。で、どいつと入れ替わる?」

「!!!」


 剣士~ぃ!思い出した!10プレにいたわ。剣士。それで、10プレって他のメンバーに会ったらパーティーメンバーの再編できるんだったっけ。………え?!10人………。ジャンル違うけどこいつもイケメン。………まじか、攻略対象者。キス10人達成賞品。そういうことかぁぁぁぁ。


「えっ………。」


 私が口を開きかけると後から口を塞がれた。振り返ればアルフレッドが爽やかな笑顔を相手に向けていた。


「ここでは店に迷惑が掛かります。場所を移しましょうか。もちろん、この机はきちんと弁償してあげてくださいね。」

「お、おう。」


 アルフレッドに圧されたカウザーが了承したので、私たちは人気の少ない路地裏へ移動した。路地裏といってもちょっとした広場。これなら、小競り合いくらいできる。え?!しないよね?


「場所、移動したぜ。で、どいつと入れ替わるんだ?」


 カウザーは着くなりまたそう聞いて来た。そして、対峙するように立つ私たちをジロジロと見る。私はカウザーの発する威圧感にびくびくしながらもさっき言おうとしたことを答える。


「えっと、すいません。パーティーメンバーを変える気はありません。」

「あぁ?!」


 カウザーは予想外といった感じで顔をしかめた。


「俺はおまえの好みに合わないのか?!」

「あ、はい。」


 カウザーがいきなりしゅんとした表情になる。こういったきつめの顔の人が落ち込むと、とても悪いこと言っちゃった気分になる。


「あ、えっとですね。剣士さんを選ばなかった理由はですね。あなたの攻撃力は高いんですよ。高いんですけど次の攻撃までに時間がかかるし、パーティーメンバーに入れるとエンカウント率がすっごい上がって、回避率がすっごい下がるんですよね。数歩歩いたらまた魔物、みたいな。だから、私のようなのんびり攻略するゲームスタイルには合わないというか………。」


 私があわあわしながら答えると、カウザーはきょとんとした顔になる。こいつ、感情が顔に出るタイプだ。


「それが、選ばれなかった理由か?」

「は、はい。すいません。ごめんなさい。許してください。」

「………。容姿や性格じゃないのか?」

「へ?!」


 私はペコペコ下げていた顔を上げた。こっちがきょとんとなってしまう。


「これ、乙女ゲームだろ。」


 おうっ。やっぱ来るかの回答でした。が、新キャラまで知ってるとは………まあ、妥当か。


「あのっ、乙女ゲームはやらないで、RPGだけ進めてます。」

「………へぇ。好みの男がいないのか。」

「いや。そうじゃなくて。」

「ん?気に入ってる奴がいるのか?ルートには入ってないみたいだが………。」


 カウザーは勘違いしやすい男らしい、めんどうな奴だ。


「だから、気に入るとか関係なくて、乙女ゲームはやらないんだって。」

「??なぜ?」


 なぜ??そりゃもちろん、リアル体験なんて無理だからですよ!あんな甘々シーンできるわけないでしょうが!ましてや、もっと凄いことになるんだぞ!生命も貞操の危機も…………。考えただけでも、怖いわっっ!!


 と、言えるはずもなく。恋愛する気ないんで。くらいしか答えられない。


「ふ~ん。でも、誰かに惚れるのって制御できねぇだろ。俺がおまえに惚れたように。」

「は………い?!」


 私はびっくりした顔をカウザーに向けた。けれど、彼はいたって真面目に鋭くも熱い視線をまっすぐ向けてくる。


「明日奈。俺はお前に惚れてる。あの時から………ずっと。」


 カウザーは低くしっかりと通る声で告白してきた。


 ほ?惚れ?え?さっき、ついさっき会ったばかりですけど。あの時って?………そういえば、アル達も会って半日後には告ってきてた。なにこれ、ゲームの通常スタンス。でも、システムがやってるわけじゃないって言ってたし。


 私が複雑な顔をして黙り込んでいたら、カウザーは少し戸惑った顔をする。


「………俺がわからないのか?そうだ!こいつは、分かるだろ?!」


 カウザーはそういうと右の首元から鎖骨にかけて描かれているタトゥーを示した。Zような飾り文字。どこかで見たこと有るような、無いような。私の反応が悪いせいか、彼の顔は益々陰っていく。


「俺はお前の………。」

「「「言うな。」」」


 カウザーの言葉を今まで黙って聞いていた3人が遮った。カウザーはハッとすると、やっちまうとこだったと小さく呟いて、頭をがりがりと掻く。


「な、なに……?」

「何でもないですよ。」

「こっちの話~。」

「気に食わなかっただけだ。」


 気付かなかったけど、3人はぴりぴりムード全開だ。確かにパーティーメンバーを取って変わられるかもしれない奴だもんな。いや、待てよ?変えてあげたほうが良いのかな?休息は必要だよね。私の都合で変えないなんて言うのは良くないのかもしれない。思い立った私は3人に聞いてみる事にした。


「メンバー変えたほうが良いのかな?」

「今の話の流れで、なんでそうなんだよ。おまえは僕が居ないと困るんだろ!」


 怒れるケインにぐいっと腕を捕まれて大きく揺さぶられる。あ、頭が、脳が揺れる。


「でも、ずっと戦いの旅って疲れるんじゃないかと思い直して。なら、交代していったほうがいいのかと。」

「それで。私の目の届かないところで他の男のルートに入るのですか?」


 ロークが首元に腕を絡めてきて、髪に口づけられる。ぐぇ。今度は首が苦しい。


「いやいや、ルートに入るもなにも。乙女ゲームやらないし。」

「流されやすいアスナに言われても、不安だ。俺はこの手を離す気はない。」


 アルフレッドが手を繋いできて、指が指の間に入れられぎゅっと力を入れられる。う、ちょっと痛い。


 なんか、この状況って街に来る前に逆戻りじゃ。いや、それより酷くなってる。…………ふおっ!


「ぎゃ~、くっつくなぁ~!くるしぃ~っ。わかったから、メンバーチェンジしないからぁ~。」


 私は大慌てでさっきの言葉を取り消す。3人がギュッと体を寄せてきたからだ。いくら勇者力でも、支えられる自信はない。


「ブッ。あははははははっ!!!あーっはははっ。」


 私たちのやり取りを見ていたカウザーが、デカイ声で笑いはじめる。私、この世界で笑われることが多いな。今回は私の所為だけじゃないと思うけど。


「ははっ!おまえら、苦労してんな!これならまだまだ急がなくても落ちそうもないな。メンバー入りはまた次に会った時でいいや。でも、ちゃんと考えといてくれよ。」

「いや。だから、変えないって言ってるでしょ。ほら、また怒りマーク出てるって。やめてよぉ。」

「あっはは!おまえら面白れー。」

「笑い事じゃないぃぃ。どうにかしろ~。」

「いいけど。俺が手出すと余計拗れるだろ。」

「なんとっ!悪循環っっ!!」


 カウザーと話ながら、3人からは体を離そうともがいていると、にわかに路地が騒がしくなった。そのざわめきはどんどんと私たちの方に近づいてくるので、つられるようにそっちに目を向けた。と、ちょうど白馬に乗った男性が路地を渡るところだった。


「噂どおり、こんなところにいたか。勇者は。」


 男性はそういうとこちらへと馬をゆっくりと向けた。

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