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2クラッシュ 「ふたりのサークルクラッシャ―」

『プリンセス・オブ・オタサー』

 全国のオタサーの姫たちが集結し、その頂点を目指すという大会のことである。


 住吉美卯は自室のベッドの上で、ケータイを見つめていた。

 時刻は深夜1時を回ったところだが、眠れないのだ。


「……どうしよ」


 誰かに相談しようと思ったが、しかし深夜に電話をかけるのはためらわれた。

 悩み続けているうちに、こんな時間になってしまったのだが。


「ううん、やっぱり、だめだよ」


 美卯は首を振り、枕元に置いてあった招待状を拾い上げた。

 キングサイズのベッドはひとりには広く、寂しさがにじむ。

 今は家族が急用で海外にいるため、あと一週間はひとりのままである。


 ピンク色のパジャマに身を包んだ美卯は身を起こすと、招待状を近くの引き出しにしまった。

 こんな時間まで悩んでしまって、ばかみたいだ。


「そうだよね、決まっているもん」


 迷う必要などない。

 招待状の『欠席』に丸をして、明日投函するとしよう。


『プリオタ』は全国のオタサーの姫が頂点の座を争う大会である。

 ならば、自明の理だ。


「だって美卯、オタサーの姫じゃないもん」


 美卯にとって幸せとは、自分の身の周りに存在しているものである。

 誰かと争って勝ち取るものではないのだ。

 そう、住吉美卯は電子研に属する、ただの一部員なのであった。





 手紙が自宅に投函されてから何日か経ったあとの出来事である。

 美卯は再び日常に戻り、こうして大学にも通っていた。


「あ、す、住吉さん、いらっしゃい!」

「はーい、ただいまー」


 講義が終わり、部室へとやってくる美卯。

 いつものように完全武装のゴシックロリータに身を包んだ美卯を迎えたのは、ガリ崎ひとりであった。


「あれ、ガリ崎くん、他のみんなは?」

「さ、さあ、教授に呼び出されたりしているんじゃないかな? それ、それより住吉さん、ほら、がじゃりこあるけど食べる?」

「わぁい、いただきまーす」


 お菓子を受け取ると、ネズミ耳をつけた美卯はいつものように楽しそうに席についた。


 電子映像研究部の活動内容は、きわめて単純である。

 録画したアニメを見ながら、その感想をダベる、というものだ。

 小規模であり、美卯が入るまでは、ガリ崎とデブ山と四条河原野宮の三人しかいなかったサークルである。

 そこに新入生としてやってきた住吉美卯が、入部したのだった。


 美卯は基本的にどんなことでも楽しむことができる娘である。

 その趣味嗜好は多少サブカルチャーに寄っているものの、体を動かすことだって苦手ではない。

 ぶっちゃけ、どんなサークルに入るかはよりどりみどりだったのだ。


 小学校からの幼馴染も同じく入学したこの大学で、久々にみんなで集まるのも楽しそうではあったのだが。


 しかし、美卯は自らの直感を大事にしたいと思っている。

 男の子三人でつるんでいるその雰囲気が楽しそうで、なんだか懐かしかったというのもあって、彼女はここに入部を決めたのだ。


 もちろん和を乱すようなつもりは毛頭ない。

 だからこそ皆に気を遣い、出過ぎた真似はしないようにおとなしくしているつもりだった。


 しかし、男子三人はそんな美卯に対して、あまりにも主体性がなさすぎた。

 具体的には美卯がなにかをしようと言い出すまで、ひたすらに提案しかしてこないのだ。お前たちがやりたいことはないのか、と気の短い娘ならば言ってしまいそうなところである。

 だが、美卯は尖りまくったファッションに対し、あまりあるコミュ力を持っていた。角が立たない回答なんてお手の物だ。


 というわけで、信頼と説得、言いくるめを駆使しながらも、美卯はこの部活で地味で目立たない役割に落ち着いている。

 美卯のポジションはさしずめ、『オタサーのマスコット』といったところであろう。


「でもみんないないんだったら、まだアニメ見れないね、どうしよっかなー」


 美卯は首を傾げて部屋を見回した。

 部室には様々なアニメのDVDやブルーレイが揃っている。

 最新話を見るのは、全員が集合してからだ。

 誰かがいないときには、それぞれが昔のアニメを見て時間を潰すのが常であった。


 電子映像研究会は、男女混合四人の仲良しサークルである。

 その絆は美卯が入っても変わるはずはないのだ。


 そんなとき、ガリ崎がガタッと音を立てて立ち上がる。


「あ、あのさ、す、住吉……美卯、ちゃん、きょうはこれ見ない?」

「なーにー?」


 彼が差し出したのは、一本のアニメBD(ブルーレイディスク)だ。

 美卯は思わず「あっ」と声を漏らす。それは確かに美卯が気になっていたものであった。

 去年放送されたアニメだ。他の三人はもう見終わっていたので、口には出さなかったのだが。


「わ、これ美卯も見たかったんだ。すごいね、ガリ崎くん、よくわかるね!」

「う、うん……。前にツイッターでつぶやいていたでしょ? それで……」

「そっかぁ、じゃあ見よ見よ」


 にっこりと笑う美卯は、椅子を引いてガリ崎の隣に並んだ。

 ガリ崎が同じ分だけ身を引く。


「ちょ、み、美卯ちゃん……?」

「せっかくだし、近くで見たいなあって。ダメ?」


 美卯に上目づかいでお願いをされて、ガリ崎は真っ赤になって首を振った。


「だ、だめなわけないよ! だめなわけない!」


 必死に叫ぶ。

 ガリ崎は童貞である。刺激が強すぎたのであろう。


 実はこの日をガリ崎は狙っていた。

 きょうはデブ山と四条河原野宮がふたりとも教授の手伝いをするために、遅くなるという日だったのだ。


 アニメのBDを用意し、昨日は美容院にもいった。

 下心なんてあるはずもない。あるはずもないのだが、ふたりが遅くなるのだと聞いたその瞬間、ガリ崎の魂は高揚してしまった。

 ここで動き出さなければ一生後悔する。そんな気になってしまったのだ!


 かくして、作戦はうまくいった。

 美卯はガリ崎の隣で、わくわくしながらテレビを見つめている。

 いい匂いするし、たまらない。


 こんなに可愛らしい女の子とふたりきり。ガリ崎にこの世の春が訪れた。

 今夜はツイッターで「三次元に浮気しちまったかもw」なんてつぶやくとしようじゃないか。

 そう思った次の瞬間であった。


「うっすー」

「はー、かったるデブー」


 四条河原野宮とデブ山が連れ立ってやってくる。

 ガリ崎の春は終わった。

 ツイッターでつぶやくのは「三次元に浮気しようと思ったけど無理。やっぱり二次元最高」だ。


 一方、美卯はわざわざ立ち上がると、新妻めいた笑顔で彼らに手を振った。


「ふたりとも、おかえりなさい」

「わ、住吉ちゃん」

「たたたただいまデブー!」


 ふたりは喜色満面になる。

 後輩で小さく礼儀正しくて可愛らしい女の子だ。彼らにとって美卯は妹のような存在であった。


 代わりにムッとした顔を見せたのは、ふたりきりの時間を邪魔されたガリ崎であった。


「なんだよ、早かったじゃないか。ちゃんと手伝いしてきたのかよ」

「いやー、それがかったるいから、途中で抜けてきちまったぜ」

「ふたりぐらいいなくなったって、バレないデブ。それより今週のライブフレンドアイドル(仮)を早く見るデブー」


 ふたりの物言いに、イラッ、である。

 ガリ崎もまた立ち上がり、唾を飛ばしながら怒鳴る。


「なんだよそれ、手伝いはきちんとやらないとダメだろ!」

「え? え? なに怒っているんだよ」

「それに今は美卯ちゃんと、アニメ見てんだよ! 察しろよ!」

「それもう去年見たデブ。きょうはラブフレ見る日デブ!」

「前から言おうと思ってたけどな、お前デブデブうるせえんだよ!」


 瞬く間に険悪な雰囲気だ。

 特にガリ崎は頭に血が上っているようだった。


「お、おいやめろよガリ崎! 住吉さんがいるだろ!」

「先に美卯ちゃんをないがしろにしたのはお前たちだろ!」

「つ、つかお前なに美卯ちゃんとか言ってんだよ! 気持ち悪いだろ!」

「き、気持ち悪いとかないだろ! 別に俺が美卯ちゃんって呼んだってお前に関係ねえだろ!」

「デブー! デブー!」

「黙ってろこのデブ!」


 まさしく一触即発。

 男子三人による、取っ組み合いの喧嘩が起こりそうだった、そのときである。


 ――バァン! と鋭い音が響き渡った。


 美卯が思い切りテーブルを叩いたのである。

 三人は突然の物音に身をすくませていた。


 美卯は滅多に見せない冷たい表情で、彼ら三人を見つめている。

 三人はその美卯を前に、身動きが取れないようだった。

 ネズミ耳をつけた美卯の眼光は鋭く、三人は蛇に睨まれたカエル状態であった。


 ガリ崎の癇癪などよりも、美卯の厳しい表情によってこそ、室内の緊張は張りつめていた。

 デブ山など、今にも泣き出してしまいそうだったのだが。


 その導火線が弾け飛ぶ寸前に。

 ――絶妙なタイミングを見計らって、美卯はニッコリと微笑んだ。


「みんな、落ち着いて? ちょっと頭冷やそ?」


 うっ……、とガリ崎がうなだれた。

 美卯はそんな彼にも、優しい言葉をかける。


「ね、ガリ崎くん、BDはあとで見よ? みんな来たんだから、きょうはこれからアニメ最新作でいいでしょ? あ、そうだ、美卯ね、きょうみんなにチョコレート持ってきたんだ。ほら、みんなで食べながら見よ見よ」


 美卯がぴょんぴょんと飛び跳ねながらチョコレートを配ると、一気に空気が弛緩していった。


 しばらくは居心地が悪そうにしていた皆も、アニメを見て美卯がはしゃいでいる姿を見ると、徐々に和んでいったようだ。

 無理矢理ではあるが、一同はすぐに元の仲良し三人組としての雰囲気を取り戻した。

 ガリ崎も「フ、俺もずいぶんと甘い夢をみたものだ……」とつぶやいていた。キャラが全然違っていた。


 帰り際、美卯が「ね、ガリ崎くん、すぐ怒っちゃだめだよ?」と告げると、彼は他のみんなに素直に謝っていた。

 根はいい男なのだ。ただ、甘い夢を見てしまっただけなのだ。


「ごめんな、みんな。住吉さん、きょうは、すまなかった」

「ううん、いいんだよ」


 美卯はニコニコと笑い、みんなに手を振る。

 そうしてきょうは解散となった。



 のだが――。

 美卯は帰り道、思わずため息をついてしまった。


 住吉美卯は、オタサーの姫ではない。

 ないはずだった。


 でも、時々思う。

 自分はもしかしたら、オタサーの姫なのかもしれない、と。


 三人が仲良くする姿を、美卯はすぐそばで見ていたいだけだったのだ。

 ただそれだけのことがしたかったのに、美卯の存在が三人に悪影響を与えてしまっている。

 きょうはガリ崎があんな行動をしたが、以前にもデブ山や四条河原野宮が似たようなことをしでかしたこともあったのだ。


 ただみんなで仲良くいたいだけなのに、やはりそれは無理なのだろうか。

 男女の間に友情は存在しないのだろうか。


 そんなことを考えながら家についたところであった。

 サングラスをかけた黒服の男がふたり、自宅の前で待ち構えているのを見た。



「……えっと、うちになにか、ご用ですか?」


 話しかけるのは若干の躊躇があった。なんとなくケータイを握り締めながら、おそるおそる声をかける。

 すると、オールバックの黒服が無言で胸ポケットから差し出してきた名刺を見て、美卯は眉をひそめた。


「……プリンセスオブオタサー運営委員会役員の方が、うちになにか……?」


 さらに警戒を強める美卯に、その黒服はゆっくりと口を開く。


「貴女にはぜひ参加していただきたく、お願いに参りました」

「……そんな義務はないはずですけど」

「どうか、お願いします。」


 黒服は後ずさりする美卯を見据え、告げた。


「前回大会優勝者の住吉美卯さまには、ぜひとも参加していただきたいのです」


 はぁ、と美卯は大きなため息をついた。

 自宅にまでやってくるとは。


「ここではご近所さんの目が気になりますので……とりあえず、中へおあがりください」




 こうなることを、予想していなかったわけではない。

 居間にふたりを通し、対面のソファーに座って美卯は紅茶をすすっていた。


「……それで、美卯に、ですか?」

「はい」


 実際、サングラスを取ってみると彼らはごく普通のオタクであるように見えた。

 なんとなくかっこつけたファッションをしているが、『プリオタ』は基本的に日本経済のトップに位置するオタクたちが運営しているので、さもありなんである。


 差し出された紅茶に手を出さず、男は情熱的に語る。


「前回優勝者の住吉さまは、その圧倒的な姫力ひめりょくで会場の全員を魅了してくださいました。自分たちはあのときの感動を、また味わわせてもらいたいのです」

「……優勝した美卯が、会場で言ったことを覚えていますか?」

「はい」


 隣の黒服がスマフォを取り出した。

 そこに映っていたのはご丁寧にも、美卯が優勝した去年の映像だ。

 美卯はきらびやかなステージに立ち、マイクを片手にこう叫んでいた。


『住吉美卯は、オタサーの姫を引退します! そして、普通の女の子に戻ります!』


 その宣言を聞いた途端、スマフォを持っていた黒服が涙ぐみ出した。

 もうひとりが彼の肩をぽんぽんと叩き、「わかるよ……」とつぶやいた。なにがだ。


「ともあれ、そんなことを決めたのに、たった一年で戻ってくるっていうのは、さすがに無理ですし。ものすごいかまってちゃんみたいですし」

「いえ、大丈夫です。ネットゲームの世界では、引退した人が戻ってくるのとかよくありますし。電撃復活とか言えば、なんとでもなります」

「なるのかなぁ……」


 思わずつぶやいてしまう。

 涙ぐんでいた黒服は、必死に首を縦に振っていた。


「伝説のオタサーの姫『四つ耳の兎姫(フォーチュンバニー)』こと、住吉美卯さまのお噂はかねがね……。きょうはお会いできて光栄です!」

「あ、はい」

「去年、高校三年生だったというのに、大学見学でたまたま訪れたサークルを見事にクラッシュし、『プリオタ』への招待状を送られたんですよね! それからも見学ごとにクラッシュし続け、結局第四志望の今の大学に進むしかなかったという! その見事な姫っぷりはここ十年でも一番の姫らしさでした!」

「わああああああああ!」


 美卯は叫びながら頭を押さえた。


 住吉美卯はオタサーの姫ではない。

 ではなかったのだが、オタサーの姫だった頃もあったのだ。

 いや、違う。弁解させてほしい。皆があんなにコロッと自分に惚れてしまうだなんて思わなかった。

 こう言うと、すごく高飛車ないけ好かない女の言い訳に聞こえるかもしれない。

 だが、違うのだ。美卯は本当に、自分がこんなにモテるだなんて、思わなかったのだ。


 美卯の周りにはずっと、もっともっとモテる女子たちがたくさんいた。

 ふたりの幼馴染にしたって、ひとりはまさになんでもできる完璧超人で可愛らしい女神のようだったし、もうひとりは中学のファッションリーダーとして大活躍する美人だった。

 それは単純に美卯の周りの平均値が高すぎたというだけの話なのだが。


 美卯は自分がチヤホヤされるというのが信じられなかったのだ。

 こんな、何のとりえもない地味で平凡で、世界の才能レースとも言える競技から早々に引退を決め込んで、あとは周りの人が幸せそうにしているのを眺めるだけでよかったはずの自分が、まさかモテまくるだなんて。


 最初のうちは確かに気持ちがよかった。

 人生で今まで味わったことがない類の快感だった。

 自分の些細な行動が周りの人に大きな影響を与え、彼らの幸せの総量を著しく増やしてゆく。

 美卯を中心としたグループは、自分たちこそが世界でもっとも幸福であると実感できる日々が続く。

 だがそれは幸せという名のバブルでしかなかった。


 バブルはすぐに弾ける。美卯を取り合って友情にヒビが入ってゆく男子を見るのが辛くて、美卯は最終的にいつも逃げ出していた。


 美卯はどちらかというと自分は器用なタイプだと思っていた。ひとつのサークルの人間関係ぐらいはコントロールできると思っていた。

 でも違うのだ。違ったのだ。


 ――チヤホヤされると、良い気分になってしまうのだ!


 細かなことに気がつかなくなってしまうのだ!


「女の子がいるサークルに入っても、なんかみんな美卯ばっかりちやほやして、だから女の子も出ていっちゃうし、そしたら美卯ひとりがなんかすごくちやほやされちゃって、美卯のせいでみんなが争うし、みんながサークルやめちゃうし……」

「それは美卯ちゃんがかわいいからですよ!」

「わあああああああ! やめてえええええええええ!」


 美卯は必死に頭を振った。違う。そうではないのだ。

 ゴシックロリータだって媚びているからじゃない。獣耳だってかわいいから、好きだからつけているだけだ。

 こんなロリロリしいアニメ声だって、ドレスが似合わなくなるほどに大きく膨らんでしまった胸だって、親から与えてもらったものだ。あざといとか言われたって困るのだ。


 好き放題に人間関係を破壊しては、相手を自分に依存させるのが大好きです、とかのたまうような友達とは違うのだ。

 違うのだ!


 誤解を恐れずに言えば、美卯はむしろモテたくないのだ。

 ただ、幸せになりたいだけなのである。

 みんなでだらっとして、アニメの感想などを語り合うスペースがあればいいのだ。

 しかしそれが、どれほど難しいことか!


「やだよー、美卯出ないよー、絶対出たくないよー。ひーめひめひめひーめひめー。言われたくないよー」

「美卯ちゃん世界一かわいいよ! まさに天性の姫! 生まれながらのサークルクラッシャー!」

「やめてよー……」


 美卯は力尽きたようにうなだれた。

 そうして、ゆっくりと自分がつけていたネズミ耳を外し、ゆっくりとテーブルの上に置く。


「美卯はふつーの女の子に戻ります……」

「おお、耳をマイクのように……」

「山口百恵ちゃんだ……」


 さすが『プリオタ』運営役員だけあって、アイドルにも造詣が深い。

 しょうがないな、と黒服ふたりは顔を見合わせた。そして、うなずく。


「……仕方ありません、住吉美卯さま。本当のことをお話します」

「ふぇー?」


 顔をあげた美卯に、黒服たちは真剣なまなざしで告げる。

 それはまさしく、彼らが美卯に頭を下げにやってきた本当の理由であり――。

 ――そして、彼らの切り札であった。


「今度の大会には、やつが出場します。

 前年度、住吉美卯さまの手によってオタサー界を追放されたはずの悪魔――。

 ――『楽園簒奪者クラッシャーオブデストロイヤー』、白鳥しらとり椿つばきが出るんです」



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