第一章 一 始まりの記録
文章構成に誤りがあればご容赦ください。
作品を読んで、ご感想をいただければ幸いです。
そもそも、何故人類という知的生命体がこの地球に生まれ落ちたのか、私はふと考えたことがあった。
それが必然的に起こりうる事象であったのか、それとも自然界の法則の輪の上で奇跡的に起こった偶然の産物であるのか、あるいはどこぞの宗教家が謳うように神の意思とやらによって為されたことなのか、人類の誕生をめぐるこれらの論争は、未だ決着の道には至っていない。
しかし、私個人の考えを述べれば、人類という生命体がこの惑星に誕生したこと自体が、私にとっては不思議でならない。
我々は生きる上で多量の酸素と水分を必需とするが、この二つの自然的産物を生み出したのは、この『地球』という惑星であり、この二つの産物がなければ、我々はいとも簡単に死ぬのだ。
酸素がなければ呼吸はできない。水がなければ身体の活動を維持することもできない。このことは世間一般の常識として教科書で説明され、小さな子供でも理解するのは容易かろう。
我々の生存に欠かせない酸素と水を生み出すことができたこの青い惑星の誕生は、宇宙空間そのものが誕生する要因となったビッグバンや超新星爆発、太陽の誕生と並んで稀な現象ではないだろうか。
この青い惑星は、その内に全生命を育むことができる液体の水を保持することができる一空間に形成され、地殻上の活発な火山活動により発生した水蒸気によって海洋を生じ、その熱水噴気孔や火山活動の高温に耐え得ることができる原始生物を誕生させ、さらには光合成を行うシアノバクテリアなどの藍藻類を誕生させて酸素を供給できるまでに至った。これほどまでに生物が生存することができる環境を創出したこの惑星における数々の進展は奇跡と言っても過言ではないと私は思う。
我々人類は、この星の奇跡の連続によって誕生した無数の生命体の一生命体に過ぎない。しかし、それにもかかわらず、我々は他の生命体を圧倒するほどの高度な知能を得た。それが善きことであるのか、悪しきことであるのかは、人それぞれの見解によって幾通りにも考えは異なるだろう。
この惑星に『地球』という名称を付けたのも、『人類』という一種族であり、この惑星の限られた大陸の上に数多の文明を築き上げてきたのも我々である。
霊長類の一派から進化を重ねたと言われる人類は、誕生間もない頃は石と木の棒を扱って狩りを行い、火の扱いを学び、集団を形成して互いに協力し合いながら生活を営むことで、自分達が生きる術を身につけた。それはやがて、集団の中に指導者を生じさせ、彼らによって無数に存在していた集団が個々の集団にまとまるという状態を生み出した。
個々にまとまった集団は巨大になるに伴って文明を築き、国家を築いた。
その国家を統べる指導者達は、後に必ずある問題に直面したはずだ。それは国家という集団が巨大になればなるほど、それを生存及び維持するためにさらなる資源が必要になるという問題だ。
その問題を解決すべく彼らがどのような判断に辿り着いたのか、それはもはや語る必要はないだろう。
いつ始まったかも分からない遥か太古の時代より、人類の愚かしく醜い時代が幕を開けた。
全てが目まぐるしく入れ替わり、誰もが生き残るために明日へと突き進んだ。
今より数百年前の平穏な時代を生きた者達から見れば、野蛮で醜く、狡猾で獰猛で、救いようのない過去の時代の話しに思えるかもしれないが、平穏な時代を生きた彼らが、自分達より以前の人間とその先の今我々が生きる時代の人間達を比べたとしたら、それは決して過去の時代の話しではなくなるだろう。
ほんの数十年前まで、我々は過去の人類と同じく、限られた資源を奪い合い、権謀術策を用いて争い、時には力に訴えて殺し合ってきた。自国のことのみを考えて動き、他国のことなど露ほども考えず、自国を富ませることのみに躍起になっていたものだ。
人類が成長するにつれて、数多の国家は栄え争い、あるものは滅びた。それと同じように、時代も成長し、栄え、そして滅びてきた。
国家の滅びを容易にしたのは殺戮兵器の発達であり、防御力を遥かに上回る兵器の攻撃力が争いを誘発しやすくし、滅びを加速させたと言えよう。
我々の防御力を遥かに凌駕しうる彼ら、ジェネシスの攻撃力が我々の滅びを加速させるのならば、遠からず我々人類という一種族も、これまで栄えてきた文明のように滅びるだろう。
人によっては、世界が一つに団結しつつあるこの時期に、私のこの考えは言語道断と言いたいかもしれないが、彼らが最初に我々の前に姿を現して言ったように、我々が滅ぶこともまたこの惑星が望んでいることなのかもしれないと私は思うのだ。
これまで我々人類が犯した幾万の過ちと業の報いが滅びであり、彼らがこの惑星の新しい居住者であることをこの惑星そのものが望んでいるのだとすれば、我々と彼らの戦争は偶然ではなく、滅びた種族を苗床として、新たな種族が栄えるという一種の時代の連鎖のような、とてつもない大きな流れが、この星の意思によって引き起こされているのだとは考えられないだろうか。
西暦四千七百二十年 十一月 国連ドイツ空軍中将 エオドリック・フォン・スタミッツ