第二章 怪しい二人
今日も同じ日が続くことに、安心しつつもちょっと退屈だなと思っていると朝からお客さんがやってきた。
うちでは酒場だけではなく、二階を使って宿舎もやっているので朝からお客がやってくるのは珍しくはないのだが、
その風貌はちょっと形容ができなかった。一人はちょっとした青年でどこにでもいるといったかんじで顔はちょっといじがわるそうなところがあるけど、
まだそれは普通ではあった。しかし……
「おーい、こいつにみとれてないで、宿の主人を早くよんでくれないかな?」
にやにや顔をしながらカウンターにひじをついて青年は私に催促したけど(今思えばあれはつかみはOKなんて考えていたと思う)、あ、すいませんといって奥へとひっこんだ私は今も大きい人のことを考えてた。
何故ならもう一人のインパクトが尋常ではなかったのだ。
まず青年の頭二つ分背が高いその身長、しかも青年は私より少し背が高いくらいだから、男性の平均くらいはあるので、
その身長の高さは本当に大きい。そして体全体を被い、顔を目深に隠しているフードがより怪しさを倍増させていた。
あまつさえ、肩幅は……断言してしまえば人間のそれではなかった。町で一番の木こりの人の肩幅もすごかったけど、これとは
比較にならない大きさだ。ざっと二倍以上はある。
とりあえず、私は混乱した気持ちを振り切るために父を呼ぶことにした。
「父さん、お客さんよ。」
すぐに「父さんと呼ぶな、マスターと呼べ」という声とともに父がやってきた。
マスターっていう柄じゃないのにねぇ。つくづくそう思うけど、そっちのほうが洗練されててかっこいいだろ、とは父の言
そして父がカウンターへいき、流石の父も面食らっていたが(普段接客はまかせろと父は豪語していた)、すぐに普通に対応していた。
父はそこから二、三、話をした後、私を呼び、上の宿舎へと案内するよう私に言った。
私は上へ行くよう二人を促し、(大きい人が階段を上るたびに音がするかと思ったけど、その体型のわりに足並みは丁寧であまり音を立てることはなかった)
部屋の説明を行った。
「朝は私が運びますが、お昼は外でたべてもらいます。夕食は下の酒場で食べてくださいね。わたしは下で酒場の給仕をしなくちゃいけないから。」
と業務的な説明をした。まぁ初めての客だし、近くのおいしい所とかもおしえてあげてもよかったんだけど。
「ふーむ、じゃあ君と二人でお酒を飲みたいときはいついけばいいのかい。」
といってきやがったので、使い慣れないおべっか「やだー、冗談きついよー」で笑ってごまかそうとしたら。
「なーんてな、おれもお前のようなじゃりはごめんこうむる。」
むかぁ!
むこうずねけってやりたかったけど、てそそくさと退散することにした。
後ろを振り向いてみると、大男がなぜか肩を落としているように見えたのは気のせいだろうか。
まぁいいや、どうせこんな安宿(自分で言ってて悲しくなるなぁ)すぐにでていくだろうしね。
そう思いながら一階につくとすぐに父によびとめられた。
「なに?、とうさん。」
「マスタァ。」
当然聞き流して次の言葉を催促する。
「あー、それとあのお客さんな、ちょっと長居するらしいから。その間の世話頼むわ。」
えー。
今日はなんて日なんだろう。布団の整理とかけっこう大変なのですよ。他にも人が泊まるとなるとそれだけで、私の時間がなくなっちゃう。
はー、とため息をつきつつ、今日はもうこれ以上なにもおきることはないだろう、と気分を変えて買い物にでもいこう。
ひきずらないのが私のいいところなのだよ(えっへん)
しかし、今日の事件はこれだけで終わっていなかったのを私は次の日の朝に知るのであった。