第9章 勇者を超える存在へ
【レベル情報】
マルス:290
リード:390
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戦場は、
大地そのものだった。
山脈が、
崩れ落ち。
海が、
蒸発している。
アグノス消滅後も、
世界は安定していない。
次々と、
歪みが生まれる。
世界の縫合戦。
各国連合軍が、
編成された。
総指揮は、
勇者リード。
だが。
実際に前線を
制御しているのは。
マルスだった。
マルスは、
最前線。
歩きながら、
歪みを否定する。
地割れが、
閉じる。
噴火が、
止まる。
世界が、
縫われていく。
兵士たちは、
背後からついてくるだけ。
「……俺たちは、
戦っていない」
誰かが、
呟く。
否定できない。
マルス一人で、
事足りている。
空間の裂け目から、
異界獣が出現。
勇者部隊が、
迎撃。
だが。
触れた瞬間、
消える。
マルスの、
否定領域。
無意識の範囲。
リードは、
剣を下ろす。
戦う意味が、
ない。
休憩時間。
野営地。
リードは、
マルスの前に立つ。
「俺は、
勇者だ」
マルスは、
何も言わない。
「でもな」
リードは、
苦笑する。
「俺たちは、
お前の背中を
追っている」
静かな声。
かつて。
マルスを、
追い出した男の言葉。
マルスは、
焚き火を見る。
揺れる炎。
「追うな」
短い返答。
「進め」
リードは、
一瞬目を見開き。
やがて、
笑う。
「相変わらず、
不器用だな」
マルスは、
否定しない。
次の歪み。
天空。
巨大な裂け目。
空から、
黒い雨。
触れたものを、
消す。
マルスは、
空へ向かう。
足場は、
ない。
だが。
歩ける。
否定耐性が、
空間を固定する。
天空戦。
誰も、
追随できない。
マルスは、
裂け目の前に立つ。
中から、
何かが覗く。
マルスは、
言う。
「戻れ」
裂け目が、
閉じる。
終わり。
地上。
兵士たちが、
膝をつく。
畏怖。
尊敬。
そして。
理解。
勇者とは。
剣を振る者ではない。
世界を、
存続させる者だ。
マルスは、
それだった。
リードは、
マルスの背中を見る。
「……ありがとう」
マルスは、
振り向かない。
言葉は、
不要。
目的は、
まだ先にある。
マルスは、
歩き続ける。




