第8章 世界級脅威との戦争
【レベル情報】
マルス:250
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空が、
裂けていた。
雲ではない。
世界そのものが、
割れている。
黒い亀裂から、
何かが滲み出す。
《概念侵食体アグノス》。
世界を、
内側から食い破る存在。
神殿の鐘が、
鳴り続ける。
終末警報。
各国の王、
勇者、
聖女、
賢者。
すべてが、
一箇所に集められた。
マルスは、
中央平原に立つ。
一人で。
誰も、
隣にいない。
それが、
最適配置だった。
亀裂から、
黒い腕が伸びる。
触れた地面が、
消える。
土ではない。
存在そのものが、
なかったことになる。
兵士が、
悲鳴を上げる。
逃げる間もなく、
消える。
神殿騎士団が、
突撃。
光の神術。
直撃。
だが。
アグノスは、
揺れない。
逆に。
光が、
歪む。
神術が、
崩壊。
詠唱者が、
吐血する。
「効かない……」
絶望が、
広がる。
マルスは、
一歩前へ。
地面が、
軋む。
否定耐性が、
世界と共鳴する。
黒い腕が、
マルスを掴む。
――掴めない。
腕が、
消える。
アグノスが、
反応する。
巨大な目が、
開く。
視線が、
向けられる。
マルスに。
概念破壊波。
空間が、
粉砕される。
だが。
マルスは、
立っている。
何も、
起きない。
周囲が、
凍り付く。
「……世界の、
防壁」
誰かが、
呟く。
マルスは、
歩く。
アグノスへ。
一歩。
二歩。
距離百メートル。
黒い触手が、
雨のように降る。
すべて、
消える。
否定される。
マルスは、
弓を引く。
魔力を、
最大まで込める。
狙いは、
中心核。
存在の、
重なり合う点。
放つ。
矢が、
進む。
空間を、
貫く。
アグノスの核に、
突き刺さる。
黒い悲鳴。
世界が、
揺れる。
だが。
消えない。
再生する。
マルスは、
理解する。
これは、
破壊対象ではない。
拒絶対象だ。
マルスは、
矢を下ろす。
否定耐性を、
意識する。
「ここに、
存在するな」
言葉は、
世界命令。
アグノスの輪郭が、
揺らぐ。
侵食が、
止まる。
存在が、
薄くなる。
黒い亀裂が、
閉じ始める。
アグノスが、
もがく。
マルスは、
歩みを止めない。
一歩ごとに、
否定。
存在を、
拒む。
やがて。
アグノスが、
消えた。
痕跡すら、
残らず。
空が、
元に戻る。
静寂。
誰も、
声を出せない。
マルスは、
弓を背負う。
やったことは、
ただ一つ。
拒絶しただけだ。
それだけ。
だが。
世界は、
救われた。




