第4章 最初の英雄的偉業
【レベル情報】
マルス:25
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山道は、
冷たい風が吹き抜けていた。
岩肌に、
霜が張りついている。
マルスは、
斜面を慎重に登っていた。
今回の依頼は、
中級。
「渓谷に出現した
骸喰竜の討伐」
本来なら、
中級パーティー向けだ。
だが。
誰かが行かなければ、
被害は広がる。
報酬も、
破格だった。
マルスは、
足を止める。
谷の底。
黒い影が、
蠢いている。
骨で覆われた体。
赤い眼光。
骸喰竜。
想像以上に、
大きい。
息を呑む。
だが、
引き返さない。
距離を測る。
風向きを読む。
狙撃位置を、
探す。
その時。
悲鳴。
谷の反対側。
五人組の冒険者が、
崖際に追い詰められていた。
中級パーティー。
既に、
一人が倒れている。
マルスは、
瞬時に判断する。
放置すれば、
全滅する。
マルスは岩陰から飛び出し、
弓を引いた。
狙うは、
眼。
放つ。
矢は、
骸喰竜の右眼に突き刺さる。
轟音。
骸喰竜が、
咆哮する。
冒険者たちが、
こちらを見る。
「援護だ!」
誰かが叫ぶ。
マルスは、
走りながら矢を番える。
次は、
関節。
前脚。
貫通。
骸喰竜の動きが、
鈍る。
だが。
口が開く。
黒い炎。
ブレス。
マルスは横へ跳ぶ。
岩が、
一瞬で溶ける。
掠った熱が、
腕を焼く。
だが。
痛みは、
すぐ薄れる。
「……いける」
根拠のない確信。
だが、
体がそう告げていた。
骸喰竜が、
尾を振る。
マルスは、
岩を蹴って宙へ。
回転しながら、
矢を放つ。
口内。
矢が突き刺さる。
黒炎が、
途切れる。
冒険者たちが、
体勢を立て直す。
剣士が突撃。
魔法士が詠唱。
マルスは、
距離を保つ。
矢を、
連射。
一射ごとに、
確実に削る。
骸喰竜が、
地面を叩く。
衝撃波。
マルスは、
吹き飛ばされる。
背中を強打。
息が詰まる。
だが。
骨が折れる感覚は、
ない。
立ち上がれる。
胸の奥で、
何かが脈打つ。
見えない膜。
そんな感覚。
骸喰竜が、
再びブレスを吐く。
マルスは、
正面から受ける。
黒炎が、
体を包む。
だが。
焼けない。
溶けない。
炎が、
存在しないかのように消える。
冒険者たちが、
凍り付く。
「な……」
マルスは、
歩く。
炎の中を。
弓を引く。
狙いは、
核。
胸部中央。
放つ。
矢は、
一直線に貫いた。
骸喰竜の動きが、
止まる。
崩れ落ちる。
谷に、
静寂が戻る。
しばらく、
誰も動けなかった。
やがて。
「……助かった」
中級パーティーのリーダーが、
頭を下げる。
「名前を、
教えてくれ」
「マルスです」
それだけ言う。
称賛は、
いらない。
素材は、
最低限だけ受け取る。
それ以上は、
辞退した。
街へ戻る。
噂は、
あっという間に広がった。
「骸喰竜を、
ソロで倒した弓使い」
「炎を、
正面から受けたらしい」
冒険者ギルド。
ローガンが、
マルスを呼び止める。
鋭い眼光。
「……お前、
何者だ」
「灰等級冒険者です」
ローガンは、
鼻で笑う。
「馬鹿を言うな」
カードを確認。
無言になる。
「……確かに、
灰等級だな」
マルスは、
黙っている。
ローガンは、
しばらく考え込み。
「昇格試験を受けろ」
「はい」
それだけでいい。
マルスは、
外へ出る。
夜空。
星が、
瞬いている。
自分は、
何者なのか。
まだ、
わからない。
だが。
進む。
ただ、
それだけだ。




