第3章 孤独な成長と実力の蓄積
【レベル情報】
マルス:18
---
森の奥は、
昼でも薄暗い。
木々が重なり、
陽光を遮るからだ。
マルスは、
静かに歩いていた。
足運びは軽く、
枝を踏まない。
呼吸も、
浅く抑える。
誰に教わったわけでもない。
生き延びるために、
自然と身についた。
灰等級の依頼を、
毎日こなす。
小型魔獣。
野盗。
害獣。
数は多いが、
一つ一つは地味だ。
だが。
積み重ねは、
確実に力になる。
木の影から、
マルスは覗く。
二体のゴブリン。
短い剣を持ち、
何かを奪い合っている。
互いに背を向けている。
好機。
マルスは膝をつく。
弓を引く。
狙うのは、
喉。
放つ。
矢は音もなく飛び、
一体目の首を貫く。
倒れる前に、
二体目が振り向く。
だが、
遅い。
二本目の矢。
眉間。
ゴブリンは、
声も出さず崩れた。
マルスは、
すぐに周囲を確認する。
増援はない。
安全。
素材を回収し、
歩き出す。
レベルが、
上がった感覚があった。
体が、
わずかに軽い。
――――――
数日後。
草原地帯。
視界が開け、
隠れる場所が少ない。
マルスは、
距離を取る戦い方に切り替える。
遠距離から削り、
近づかせない。
シンプルだが、
確実だ。
三体のウルフ。
一直線に突っ込んでくる。
マルスは、
後退しながら矢を放つ。
一体、
二体。
倒れる。
最後の一体が、
跳ぶ。
マルスは横へ転がる。
牙が、
頬をかすめる。
浅い傷。
だが、
すぐに血が止まる。
「……?」
一瞬、
違和感。
だが、
今は戦闘だ。
至近距離。
マルスは短剣を抜き、
喉を突く。
ウルフは痙攣し、
動かなくなった。
呼吸を整える。
また、
生き残った。
マルスは気づき始めていた。
傷の治りが、
早い。
毒も、
効きにくい。
火傷も、
すぐ引く。
耐性上昇。
ただの軽減スキルのはずだ。
だが、
明らかにおかしい。
胸の奥で、
小さな脈打つ感覚。
言葉にできない。
それでも。
害はない。
なら、
使うだけだ。
――――――
夕方。
小さな廃村。
依頼内容。
「廃村に巣食う魔獣の調査」
建物は半壊し、
風が吹き抜ける。
マルスは、
屋根の残る家に入る。
床が、
きしむ。
次の瞬間。
天井から、
影が落ちた。
巨大な蜘蛛。
牙から、
粘つく液体が垂れる。
マルスは後退。
蜘蛛は糸を吐く。
回避。
糸が腕にかすり、
皮膚が焼ける。
だが。
痛みが、
すぐ消える。
マルスは歯を食いしばる。
今だ。
床を蹴り、
距離を取る。
矢を三本。
一斉射。
目、
腹部、
関節。
蜘蛛は悲鳴を上げ、
もがく。
最後の一本。
口内へ。
絶命。
マルスは、
その場に座り込む。
心臓が、
激しく鳴っている。
怖かった。
それでも。
逃げなかった。
自分が、
少しずつ変わっている。
それを、
実感する。
――――――
冒険者ギルド。
素材提出。
ポリーが、
目を丸くする。
「……最近、
よく依頼をこなしてますね」
「生きるためです」
それだけだ。
ポリーは、
カードを確認する。
「レベルが、
18になっています」
マルスは、
静かに頷く。
たった二。
だが。
一人で上げた、
確かな数字だ。
ギルド内。
数人の冒険者が、
ひそひそ話す。
「あいつ、
ソロだよな」
「灰等級なのに、
結構やってる」
聞こえている。
だが、
気にしない。
褒められても、
嬉しくない。
求めるのは、
結果だけ。
外に出る。
夕焼け。
空が、
赤い。
マルスは弓を背負う。
まだ、
遠い。
白夜の羅針盤がいる場所は。
だが。
確実に、
近づいている。
マルスは、
歩き出した。




