第10章 伝説の定義
【レベル情報】
マルス:320
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世界は、
静かだった。
嵐は去り、
空は澄み。
歪みは、
消えた。
だが。
人々の心には、
新しい恐怖が残る。
マルスという、
存在。
救った。
だが。
理解できない。
理解できないものは、
畏れられる。
王都。
評議会。
各国の王と、
重鎮が集まる。
議題は、
ただ一つ。
マルスを、
どう扱うか。
「封印すべきだ」
「管理下に置くべきだ」
「神と同列にすべきだ」
声が、
飛び交う。
その場に、
マルスはいない。
呼ばれていない。
リードは、
立ち上がる。
「彼は、
人間だ」
沈黙。
「俺たちと、
同じだ」
「だが力が違う」
「力だけで、
測るな」
リードの声は、
震えていた。
かつて。
追放した。
過去が、
刺さる。
「彼は、
選ばなかった」
「支配を」
「破壊を」
「ただ、
歩いた」
沈黙。
結論は、
出ない。
一方。
マルスは、
辺境の村にいた。
名もない村。
畑を、
手伝う。
井戸を、
修理する。
子供と、
木の枝で遊ぶ。
誰も、
正体を知らない。
マルスは、
それでいい。
夜。
焚き火。
星空。
弓を、
磨く。
否定耐性は、
常にある。
だが。
使わない。
使わなくて、
いい世界。
それが、
理想。
足音。
リードが、
現れる。
「探した」
マルスは、
頷く。
「世界は、
お前を恐れている」
「そうか」
「……それでも、
守る」
マルスは、
焚き火を見る。
「好きにしろ」
短い。
リードは、
笑う。
「相変わらずだな」
沈黙。
風の音。
「俺は、
勇者を辞める」
マルスは、
少しだけ、
視線を向ける。
「肩書きは、
要らない」
「俺は、
ただの剣士になる」
「お前の隣で」
マルスは、
首を振る。
「並ぶな」
「遅れる」
リードは、
苦笑する。
「追う」
マルスは、
何も言わない。
翌朝。
マルスは、
村を出る。
一人で。
リードは、
追わない。
理解している。
マルスは、
誰の上にも立たない。
誰の下にも、
ならない。
ただ、
歩く。
やがて。
人々は、
噂する。
剣を持たない伝説。
王に仕えない英雄。
世界を、
否定から守る者。
だが。
マルス自身は、
何も名乗らない。
名は、
いらない。
歩みだけが、
残る。
それが。
伝説の、
定義だった。




