3. ギャング登場
瞼が開くと、サンディは少女にホットコーヒーを出す。
「はいコレ、どうぞ」
その言葉に、少女は恐縮しながらもそっとコーヒーカップに手を振れる。
「ぁ、りがとぅ」
「どういたしまして。あ、一応汚れてたので、洗っちゃいましたよ?」
「はぃ、大丈夫です」
お礼を言うと、少女はコーヒーを口にする。
すると、すぐに表情が和らいでいくように緊張が解けていく。その様子を見て、サンディは安堵した。
しばらく、少女のペースに合わせてサンディもまた、コーヒーを飲む。
「あの、聞いても良いですか?」
「はぃ」
「どうして、あの暗がりを歩いてたんです?」
「……………………ぇっと」
「まぁ、言いづらいんなら良いですけど。でも、この街は安全と言っても犯罪も多いし、ギャングや組の統制もある治外法権の国だから一概には言えません。特に貴女みたいな子とかは…………」
向かいに座ったサンディは身振り手振り加えて話すも、少女の目が合う事が無い。
「まぁ、、、それもそうですよねぇ~……………………ぁ、そうだ!」
サンディの唐突な声に、驚く少女がやっと真正面を向く。
「自己紹介ですよ自己紹介!私達、名前も知らないんですから!まず私からで、サンディと言います!よろしくお願いしますね!」
「私は、、、、、『リン』、、です」
「リンちゃんですかぁ~可愛いお名前ですね~」
「ぁりがとぅ、、ござぃます」
終始、自信なさげで怖気ついた声色。
けれど、対話してくれているだけでも、サンディは嬉しかった。
テイラーとリリーは歩いて、警察本部へと到着した。
正面の自動ドアを潜り、受付へと向かう。
「『ロベッタ』さん、依頼の報告で来ました。さっきマルクドさんと会ったんですけど、こちらにも一応来た方が良いかと思って」
「依頼報告の件ですね。マルクドさんに報告してるなら大丈夫ですよ」
「分かりました」
受付のロベッタが、パソコンに内容を入力する。
すると、後ろからリリーが机に手と胸を乗せる。
「ねね、マルクドおじちゃんさ。何か探してるの?すっごい周り見てたけどさ?」
「そうねぇ、、、、コレ見て」
そう言って、ロベッタはパソコンの画面の向きを変えてリリーとテイラーに見せる。
其処には、一枚の写真の画像が載っていた。
「この子共がどうしたんです」
「それがね、最近ギャングの武力が上がってきちゃってねぇ~。日本も荒廃が進んで海も無くなり大地が増えたじゃない?おかげで、国交を超えて行き来し放題……………………はぁ」
「てことは、密輸とか危ない事し放題って事よね?」
リリーの言葉に、ロベッタは頷く。
「そう言う事。その反動で犯罪係数がうなぎのぼりで、対処しきれない状況なのよ。それに加えて、今じゃ非正規の売買で人も扱われることも多くないのよね」
「つまり、その子共がその売り物だって事です?」
「そうなのよ。だから、怪しい動きや人物が居ないか巡視している最中なの。だからね、もし、見つけたらすぐに保護してほしいの。お願い~」
両手を合わされて懇願されるテイラー。
写真を見て、「わかりました」と一言だけ呟くと警察本部を出る。
帰り道、路地を通りながら周囲を見て歩く。
「人身売買ってさぁ。なんでお金になると、無慈悲になれるんだろうね」
「汚い脳ミソだからでしょ」
「かも。けどさ、それだけ相手を信じたいって思わなきゃついていけないよね」
「だからって、全員がそうじゃない。中には―――――しょうがないって思うしかない人だっているわよ」
「…………………………………………そうかもね~」
歩いていると、マルクドの居た場所にはパトカーが無かった。
他の場所を巡視に行ったのだろう。つまり、この場所には危険な人物等は見られなかったことになる。
が、テイラーはそれでも目線を周囲に向けて警戒する。
結局、子供の姿も無く家へと到着する。
「結局誰も居なかった~」
「この先、見かけたら保護してって話だし良いんじゃないかしら」
「そうだけど~、、そうだけどさぁ~……………………」
階段を登って行くと、居間から誰かが飛び出てきた。
「ぅきゃ!?」
「誰………………ッ!?」
テイラーとリリーの間を小さな子供が走る。
その姿を目で追うと、リリーとテイラーは警察本部で見た画像と照らし合わせる。
「あの子は、、、」
「ぇ!あの子って、まさか、、、、あの画像の、、、、、、」
「リン!待って!!!」
後からサンディが慌てて飛び出す。
そこを、テイラーが肩を掴んで止める。
「落ち着いて、サンディ何があったの?あの子は?」
「ぇえっと、、、その、、あの、、、、」
慌てて混乱した状態のサンディ。
「とりあえず落ち着くのよサンディ~!ファイトだよ!」
「応援してどうするの。まずは、、、、こうッ」
テイラーはすかさずサンディの頭頂部をチョップした。
勢いよくサンディはしゃがみ込んで頭を抑え込んで、唸りだす。
「ぅぅ~」
「ちょちょちょォ!?なんでェ!?応援駄目で暴力大丈夫って事あんのぉ!?ダメでしょうがぁ!!」
「取り乱した時はコレが一番。さ、話しなさい」
「はぃ……………………」
頭をさすりながら、もくもくと上がる煙。
「あの子は、、、起きて外に出たら倒れてたんです。だから、家で看病してたんですよ」
「なら、どうしてあんなに慌てて?」
「それがですね?リンちゃん、窓の外見たら急に怖い顔して飛び出しちゃったです!何か震えてもいたから、心配で、、、」
テイラーはリリーの顔を見る。
「もしかして、ギャングの誰かが近くを歩いていた?」
「となれば、そのリンちゃんって子共が危ないわね」
「え?えぇ?どういうことです??」
テイラーが階段を降りる。
リリーはサンディの身体を起き上がらせる。
「さっき私たちも警察本部で報告に行ったらね、、、ギャングの人身売買で捜査している子供がいるって、さっきの子共の画像見せられた、、、、の~よ!」
「ぁりがとう~、、、、、、、って、えぇ!?人身売買!!??」
驚いているサンディに、テイラーが階段の途中まで駆け上る。
「急いで、追っ手が目視できた」
テイラーの言う通り、外に出るとスーツを着た男達が家の前で取り囲む様に待つ。
その様子を見て嫌そうな顔をしながら舌を出すリリー。
「ぅえ~。本当にギャングじゃん!なんで私達なのよ~!!」
「もしかして、私がリンちゃんを看病したから?」
「それで、情報を持ってると思われたか。とにかく、関わりを持ったと相手に認識された以上はコッチも手を出さざるおえないわ………」
構えるテイラー。
その様子に、一人の男がポケットから手を出して煙草を口から離す。
「嬢ちゃん、良い根性してるな。けど、うちらの生きる世界に踏み込んだからには、けじめ着けてもらうよ」
「けじめって何?アンタらの生きる世界に入っても無いわよ馬ァ~鹿!」
「リリ―!挑発しちゃだめじゃないですか!」
「良いじゃん!本当の事なんだし。てか、勝手に集まって暴動起こそうって、それこそ何も考えてない馬鹿のやり方なんだから!ねぇ~テイラー」
「そうね」
三人の会話に、いsびれを利かせた男は煙草を落して強く靴で踏みしめた。
「いい加減、口閉じれ。もう良い。どこにでも売りさばいてやれお前ら。あの口が達者な女は体はとんでもねぇから高値で売れるだろ」
「なななぁ!?私!?今、私の事言ったでしょー!この変態!!」
怒るリリーに対して、男達は、刀と銃を取り出した。
同時にリリーは銃、テイラーはナイフを取り出す。
「行け、お前ら」
その合図で男たちが前に出る。
その瞬間――――
「先にこっちで先手打つわよ!」
リリーはテイラーが横に移動したときに待った髪の中から銃弾を飛ばした。
一人の男の肩に被弾し、周囲が避けた隙をテイラーは見逃さない。
右から姿勢を低くして走りながら、ナイフで男たちの手元を斬っていく。
「ぅがぁ!」
「コイツぅ!」
「あぁが!!」
悲痛な叫びが舞う中、テイラーの背後を長刀で振りかざす。
しかし、其処へリリーが銃弾を放ち、負傷させる。
「助かるわ」
「まっかせて!こっちで自由にやるから、、、、サンディ行って!」
リリーの声に、サンディは走る。
後を追いかけようとしていた数人を、リリーは撃ち防ぐ。
「まったく、レディのお尻追いかけるなんて百億光年早いっての!」
一息つくと、真後ろから首に腕を回されて締め上げられるリリー。
「ちょ!く、、、くるし、、、ぃ!」
足をジタバタさせてリリーはもがくも、力一杯に首を絞め落そうとする。
徐々に、顔を真っ赤にさせるリリー。
そこへ、テイラーが駆け込んで宙を舞いながら首を掴み横に曲げる。
すぐに、腕の力が抜けて男は倒れ込んだ。
「げほッ、、、げほッ、、、!」
「大丈夫」
「大丈夫、、、、助かったわッ」
残った数人の男達。
テイラーとリリーは背中合わせに立ち上がる。




