第82話 母の呪い
「うふふ、そろそろ来る頃だと思っていたわ、デリラ。」
檻の中で手錠をされている王妃が起き上がってこちらにくる。
「はい、お母様。お母様なら情報を掴んでいますよね?今の私たちの状況を。」
「えぇ、わかっていますよ。ハクアはすでに敵の大軍に包囲され、もうすぐ龍の国は滅ぶ。そして貴方の打てる手は限られています。」
「えぇ、そうです。一つは徹底抗戦し滅ぶのを待つ。」
「それはやめた方がいいでしょうね。無意味です。まぁ、誇り高く死にたいというのならば止めませんが。」
「もう一つは最後の賭けで神龍イータル様を復活させる。幸い今は竜王ダイヤという極上の贄が瀕死です。呼び出せる可能性は高いかもしれません。」
「無理でしょうね。封印されている場所の結界はさらに強固になっています。守り人がいるのでしょうね。どれだけ上質な生贄がいるからと言っても時間をかけて準備しなければ破るのは困難でしょう。」
「…。」
「うふふ、わかっているでしょう?実は、貴方が取れる手は、交渉の一択のみです。」
「そうですね。」
「そして、交渉を行うには私の首は必要不可欠でしょうね。」
王妃はそう言うと、手錠を破り、檻を捻じ曲げて出てきた。
「なっ!?」
私は王妃の急な行動に驚く。
まさか!ここで私を消すつもり!?私は王妃を警戒して魔法を練り始めたが…
「ごめんね、デリラ。全ては私のせいよ。」
そう言って王妃は私を優しく抱きしめた。
「えっ?」
「あなたは私の愛と憎しみの結晶。私はイータルを復活させることができる才能をもつあなたをそう育ててしまった。今のあなたの罪はすべて私の責任。」
「お母様、なにを言ってるのですか?」
「でも、私は止まることなんてもうできないの。…デリラ、私を処刑し、その首を持って敵に交渉しに行きなさい。そして戦争を終結させなさい。」
「お母様…」
「これは私が先ほどついに突き止めたイータルの場所です。これを持ってイータルの封印をいずれ直接解き放ちに行きなさい。それが1番確実です。もう遠隔での召喚をしてしまうと私が術者でなかったことがバレてしまいます。だから、次は直接解き放つのです。」
王妃はそういって私に一冊の書類を渡す。
「…死の迷宮100層以降?」
そこには神龍イータル様の封印場所がかかれていた。
「そこが貴方の目的地です。デリア、手段を問わず世界にイータルを解き放ちなさい。」
王妃はそう言うとデリアの目を覗き込む。そして目の奥の奥、心の奥の奥にいつものように、いや、いつもよりさらにさらに強固に暗示をかける。
イータルを解き放てと。
そして自身の持てる力も全てデリラに受け渡す。
王妃は名は黒龍のロベア。
そして、又の名を呪龍 ロベア。
彼女は娘に呪いをかけ続けた。
自分を呪った世界を呪い、滅ぼすために。
「はい!お母様、私のために死んでください!」
デリラは笑顔で私にそう言った。
「えぇ、大好きよ私の愛しの娘、デリア。」
私はそう言ってデリラを強く抱きしめた。
竜王ダイヤ…いや、世界よ。待っていろ、呪い殺してやるぞ。
私は地獄から見ていよう、世界がイータルによって全て滅ぼされる様を。
呪龍ロベアの外伝はまたの機会に…
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