第63話 間話 アイリスの一撃
俺は一口でアイリスの上半身を食べたアドバースを見る。
「そりゃ、そうだよな。相手はSSランクのモンスターだ。アドバースからしたらアイリスなんて一瞬だよな。」
「殺しちゃうんですね…」
俺の隣で控えているアステリアがジト目で俺を見ている。
「アドバース、下半身は食べるな。それ以上は蘇生がめんどくさくなる。」
下半身も残さず食べようとしているアドバースを俺は止める。
アドバースは一瞬ピクリと止まったがそのまま下半身も食べようとした。
「ほう?俺の命令を無視するのか?アドバース。」
アドバースは今度は完全に静止し、アイリスの下半身を涎を垂らしながら見つめる。
グァアア!!!!
食欲より俺への恐怖が勝ったのか、しばらく悩んだあと、大きく吠えて空を睨め付けてどこかに去って行った。
「我がマスターの命令を無視するなどあってはなりません。あの地龍の首を刎ねて参ります。マスターご許可を。」
アステリアが俺に対して膝をつく。
「…いや、いい。それは違う。」
俺はアドバースを処分することを少し考える。命令を聞かないから処分するというとはすこし違う気がする。アドバースは俺の命令を聞く義理はないのだから。
だが、俺の勘がアドバースはここで処分しなければいけないと言っている。しかし、それは俺のやり方に反する。
まぁ、どう転がってもアドバース程度が俺を脅かす事は不可能だろう。だったら別に何かする必要はない。
「さて、パーフェクトリザレクション!蘇れ、冒険者アイリス。」
俺の魔法を受けたアイリスの身体が元に戻り、蘇る。
アイリスは別に殺さなくてもよかった。でも、死にたくて死ぬのと死にたくなくて死ぬのでは死の重さが違うだろ?
アイリスには死の重さを知って欲しかった。
一度挫けた者は立ち上がる時にこそ強力な力を得る。
それは物理的な力ではなく意思の力。
俺が見たいのはアイリスがどう立ち上がって俺をどのくらい楽しませてくれるのかだ。
「なんでこの娘も生き返らせるのですか?なにがマスターの琴線に触れたのでしょうか?」
アステリアが首を傾げて聞いてくる。
「こいつはついさっきまで死にたいと思っていたんだ。でも、今は生きたいと言って立ち向かった。面白いと思わないか?」
「なにがでしょう?面白いのでしょうか?」
「あぁ、面白いよ。思い一つで、言葉一つで、人の行動は大きく変わる。だが、変わらない者もいる。変わらない者はそこまで。変わった者はどこまで変わるのか見てみたいと思わないか?」
「私にはわかりません。」
「お前にとっては弱いやつがもがいているようにしか見えないだろうな。どれだけ強くなっても俺たちから見たらそれは誤差だ。でもな、見たいのはどれだけ強くなったかじゃない。まぁ、俺はそれも見たいが…どう冒険してなにを成すかだ。見てろよ、お前もこいつらの冒険に引き込まれる者の1人になるさ。」
「なるほど?マスターの趣味には付き合います。」
「趣味か、まぁ、趣味なんだろうな。」
俺はアイリスを上層へと転移させる。
アイリス、お前の剣は少し届いていたぞ?
俺はアイリスが最後の死ぬ瞬間に払った剣が削ぎ落とした一枚の龍鱗を手元に転移させる。
アドバースは痛くも痒くもなかったし、気づいてもいなかっただろう。すでに新しい鱗も生え変わっている。
だが、もし、アイリスがまだクヨクヨしていたらこの一撃は届いていただろうか?剣を最後のその瞬間まで諦めずに払っていただろうか。
これはアイリスが最後の瞬間まで諦めなかったから届き得た結果だ。勝負は一瞬だったけど…
ふふ、SSランクモンスターの龍鱗を削り取るなんてやるじゃないか、アイリス。
さて、記念にこれでなにか作ってやるか。
アドバースの龍鱗が宙に浮く。
そしてそれはだんだんと形を変えて、指先が鋭利に尖っている一つの籠手へと変形した。
…うん、鱗一枚じゃ両手は無理だったよ。
俺は作った籠手をアイリスの右手に装備させた。
大地龍アドバースの龍籠手
ランク:レジェンド
大地龍アドバースの龍鱗で作られた籠手。
———に作られ、アドバースの力を最大限引き出している。
装備者には魔法操作が大幅に上昇、魔法防御上昇、物理防御上昇、土魔法吸収を得られる。
「アイリス。君がこれから作り上げるクランを俺はここで楽しみに待ってるよ。」
俺は最後にそう言って笑った。
うまい、うまい、うまい、うまい。
なんだこの生き物は。
柔らかくて、ジューシーで、いい匂いで、凄まじい旨みが押し寄せてくる!
あぁ、うまい!蟻なんて比べものにならない!
こいつはどこから来たんだ?
あぁ、もっと…
俺にこの種を食わせろ!!
アドバースは人の味を覚えちゃいましたね…
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