第62話 間話 アイリスのすべきだったこと
そして地龍の大きな口が開き、私に向かう。
今度こそ終わりだと思ったその時。
—待て、アドバース—
巨大な地龍がピタリと止まる。
「な、なんだ?なにが起こったんだ?」
私は何が起こったのか分からず、周りを見渡すが巨大な地龍以外誰もいない。
—やぁ、お嬢さん。君は何でそんなに死に急いでいるんだい?—
「誰なんだ貴様は!?どこにいる!」
—ふふ、さぁ?誰だろうな。俺は最下層 玉座の間にいるよ—
玉座の間!?それって!レオンを生き返らせたって言うあのダンジョンマスターか!
「ダンジョンマスターか!?」
目の前の止められてふて寝しているアドバースと言われた巨大な地龍を見ると本当にダンジョンマスターなのだろう。
—それで、なんでそんなに死にたがっているんだ?—
「ふっ、どうせなら最後に自分の力を試してやろうと思ってな。どうやら私の限界はここまでらしい。どうだ?ダンジョンマスター、私はいいところまで来ていたか?」
そう言って私は笑う。
—いや、全く。まだこのダンジョンの本番ですらない—
「…そうか。まぁ、私なんてそんなものだったのだろう。」
本番ですらないか…。本当に私は何のために生きていたのだろう。
—面白くない—
「えっ?」
—お前は面白くない。お前が俺のダンジョンに入って来てからずっと見た。面白くないんだよ。お前がやってるのは冒険じゃない。ただの自殺だ—
「…うるさい。お前に冒険者の何がわかる!?お前には関係ないだろ!」
—ここは俺のダンジョンだ。つまんないやつはお断りだ—
「ふざけるな!隠れてないで出てこい!お前があの蜘蛛どもを地上に送り込んだんだろう!?全部お前のせいだ!殺してやる、殺してやる!!」
そうだ、こいつが全ての元凶じゃないか!こいつが蜘蛛を地上に放り出したに違いない。
こいつが全部悪いんだ!
—全く。お前はほんとに面白くないな。ラスボスがそんな序盤で出てくるわけないだろ?俺を殺したいんだったらお前がここ、玉座の間にくることだな—
「くそ!くそっ!」
私は悔しさで涙がこぼれる。視界が涙でぼやける。
—ほんとに面白くないやつ—
「面白くない、面白くないうるさい!私はお前のおもちゃじゃない!…さっさとこの龍に私を殺させろ。…もう十分だ。」
私は力を抜いて握っていた剣を地面に落とす。
—おもちゃだよ。この世の全てが俺のな。でも、たしかに面白くないおもちゃは要らないな…なぁ、お前もう生きたくないのか?—
「生きたくないか?だって?生きたいわけないだろ!これから何のために生きるんだよ!私は!!」
私は空に向かって叫ぶ。
—何のために生きているのかって明確に答えられるやつが何人いるのだろうな。みんな、なんのために生きているのかなんてわかってないよ。何かのために生きてる奴なんて少数だ—
私はレオンの言葉を思い出す。
レオンと同じようなことを言うんだな。
—何のために生きるのか?逆に何かのために生きなければいけないのか?そんなことはないだろ?人生そんなつまらなくすることはないだろ?
何のために生きてもいい!
生きるための理由なんていらねぇんだよ!
あっははは!—
「…私だって本当は死にたいわけではない。本当はフロントラインの仲間と一緒に冒険したかった!仲間と一緒に、フロントラインは最強だって、1番すごいクランなんだって世に知らしめたかった!でも、みんな死んでしまった。あの蜘蛛にやられてしまった!私だけ生き残っていい訳がないだろ!?私はあいつらのリーダーなんだぞ!!!」
—お前は死は一つだと思っているのか?—
「どういうことだ?」
—お前の仲間は確かに生物としては死んだだろう。だが、冒険者としては?フロントラインというクランで戦っていた彼らはいつ死ぬのだ?—
「なにを言っている?」
—冒険者が死ぬとき、それは冒険をやめた時だろう!お前のその自殺とも言えるダンジョンでの行動は冒険ではない。今もなお、お前のフロントラインとやらを殺しているのは他でもないお前だ!—
「私が…フロントラインを殺している?」
—そうだ、フロントラインはフロントラインの冒険者が冒険を続ける限り生き続ける!そうじゃないのか?冒険者よ、冒険者にとって生きることってのは冒険するってことじゃねぇのか?ならその反対は死なのか?違うだろ?冒険をやめることだろ!?お前が死んだ仲間にしてやることは自殺なのか?—
「私が死んだ仲間にできること…」
—死んだ冒険者の仲間に、冒険者のお前ができること、それはフロントラインとして冒険し続けることだろ?フロントラインって言うお前の船で死んだ仲間もその思いも期待も夢も、全部乗っけて冒険することだろ?それがお前にできる唯一できる弔い、いや、死んだ冒険者の仲間たちを生かしてやる方法なんじゃねーのか?—
「死んだ仲間を生かす方法…!」
ドキンッと私の胸が高鳴った。そうだ、その通りだ。私がするべきことは死んだ仲間の為に死ぬことじゃなかった。死んだ仲間を生かすために、繋ぐために冒険し続けることだったんだ!
私は落とした剣を拾い、力強く握る。
流れていた涙を止めて、目の前の巨龍を睨みつける。
身体強化の魔法を自分にかけて身体中に力を込める。
「私は、まだ死ねない!仲間に誇れる冒険をするまでは!!」
私は巨龍に向けて剣を構える。
—あはは!面白くなって来たじゃねーか!!アドバースもう動いていいぞ!—
グアァー!!!!
アドバースが吠える。
やっとおやつを食べることができると言った表情だ。
「私は!死ななっ」
最後に渾身の一撃を払った一瞬で私の視界が暗転し意識が途絶えた。
俺は一口でアイリスの上半身を食べたアドバースを見る。
「そりゃ、そうだよな。相手はSSランクのモンスターだ。アドバースからしたらアイリスなんて一瞬だよな。」
ここまでアイリスを奮い立たせておいてあっけなく殺してしまうという…
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