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第60話 間話 アイリスとレオン

少年の家は貧相だった。

必要最低限のものしか置いておらず、置いてある物といえば、そのほとんどが冒険に必要なもの。

場所も大通りからは外れた人気のない裏路地の一室。


Cランクモンスターのクレイジースパイダーを討伐できるくらいの冒険者なのだからある程度は金はあるはずなのに、なんでこんな場所に住んでいるのだろう?


「あはは、家汚いですよね。おしゃれとは程遠いし…すみません。」


「ひっぐ、いや、大丈夫だ。」

レオンは私をボロボロのソファに座らせてくれた。おそらくこれがレオンのベッドなのだろう。

これ以外に部屋で寝れる場所ががない。


「俺、数ヶ月前にこっちに越して来たばかりで、冒険者もやっと一端にお金がもらえるくらいになって来たばかりで家具とかも買えてないんです。あ、俺レオンって言います。」


「そうだったのか。私はアイリスだ。」


「アイリスさんですね。落ち着きましたか?」


「あぁ、だいぶ落ち着いた。ありがとう。」


「何があったのか話してください。話せば少し楽になるかもしれませんよ?」


「そうだな…」

私は少年いや、レオンにすべてを話した。

不思議とレオンには抵抗なくすべてを話すことができた。


「アイリスさんってあのフロントラインのアイリスさんだったんですか!?」

レオンは私がフロントラインのアイリスだとわかるとあわあわと慌て始める。


まぁ、今はただのアイリスだが…


「そうだったんですね。それはお辛いでしょうね…」


「あぁ、もう私は何のために生きているのかわからなくなってしまったんだ。」


「何のために生きてるですか…」


「あぁ、もう生きる意味ないと思ってしまってな。いや、むしろ生きていていいのだろうかとな。」


「あっいや、そう言う意味ではなくてですね。生きる意味って改めて考えると難しいなって。」


「えっ?」


「だって、そうでしょう?何かのために必死に生きている人なんてあんまりいないんじゃないかって。あっ、もちろんそう言う人もいるでしょうけど、みんななんとなく生きてるんじゃないかなぁって思いまして。」


「ぷっ、あはは、たしかにそうだな。何にかのために生きているやつなんてあんまりいないかもな。」


「まぁ、俺は目標くらいはあるんですけどね!」


「ほう?どんな目標だ?」


「アイリスさんも辛いこと話してくれたので俺の秘密をお話しますね。」


「レオンの秘密?」


「俺、一回迷宮で死んだことがあるんですよ。」


「死んだ?でも、今レオンは生きてるじゃないか。」


「えぇ、だから生き返ったんです。ある約束と引き換えに。」


「生き返っただと?あっはは、レオンは面白いやつだな。」

死んだものが生き返るなど聞いたことがない。

御伽話の魔法でもあるまいし。もしそんなことが可能ならば世紀の大事件だろう。


「本当なんですよ。僕はスケルトンにやられて一回死んだんです。そして死の迷宮の玉座の間にいる存在、ダンジョンマスターによって生き返ったんです。」


「ダンジョンマスターだと!?」

レオンの目を見るが嘘を言っている者の目ではない。

まさか本当に?


「いや、正確にはダンジョンマスターかは正体を明かしてくれなかったんでわからないですけど、それくらいしかそんな存在思い浮かばなくて。それで、その僕を生き返らせてくれた者と約束したんです。死の迷宮最下層 玉座の間に行くって。それが今の僕の目標です。まぁ、アイリスさん程の人の前で言うのも恥ずかしいんですけどね。」 


私はキラキラした目で、どこか夢に向かって必死に冒険をしているであろう少年レオンの話を聞いて冒険者の初心だった頃を思い出した。おそらく、この貧相で家具もない家も、掃除もあまりいき届いていない汚い家も、冒険に必要な装備やアイテムなどに資金を当てているからであろう、ずっとダンジョンに潜って家を留守にしているからであろう。

その証拠にレオンの体にはかすり傷や擦り傷でいっぱいだ。手も剣を握りすぎているせいか、手の皮が剥けているのだろう。手に巻いている包帯から血がじんわり染みてきている。

私も最初の頃はレオンと同じようにすべてを冒険に捧げて、なにをするにもドキドキしていて楽しかった。

レオンの話が嘘でも幻でも本当でも、レオンは今の私にとって、とても眩しく感じた。そして、その泥臭く冒険しているであろうレオンのことが好ましく思えた。


「あぁ、レオンなら行けるよ。私達が行けなかったところまできっと…」


「えっ?なに言ってるんですか?まだアイリスさんも冒険者なのでしょう?だったら競争ですよ。どっちが先に玉座の間にいけるのか!」


レオンの言葉に私はハッとする。

そうか、私はまだ冒険者なのか…


「あぁ、そうだな。競争だ、レオン!」


「はいっ!」

私とレオンはそう言って笑い合った。


「そのクレイジースパイダーは自分で狩ったのか?」

私はレオンの装備を指差しながら言う。


「えぇ、また死んじゃうかと思いましたよ。中層に現れたんですよ?」 


「中層に?Cランクモンスターが?」


「えぇ、蜘蛛たちの侵攻直前くらいの話ですがね。」


「なるほど、それはおそらく奴らの尖兵だったのだろう。生きていてよかったな。」


「えぇ、本当に。僕もアイリスさんが生きていてよかったです!」


「ふっ、そうだな。」

私は生き残ってしまったと言った方がいいだろうがな…


私はまた悲しくなって俯いてしまう


「そんな悲しい顔をしないでください。」

レオンが私の肩に手を置いて慰めてくれる。



これではどっちが高ランク冒険者なのかわからないな。

流石にかっこ悪すぎるか…


「な、生意気だぞ、レオン!私を慰めるなんて。せめてAランク冒険者にでもなってから、って、わあっ!」


「えっ!?うあっ!」


私はそう言って慌てて立ちあがろうとすると、思ったより力が入らずソファに倒れる。

そうだった、かなり酒を飲んだあとだったんだ。そのあと大泣きしてかなり酒が身体に回っていたのか。


レオンも私が急に立ち上がって倒れたため、私が倒れないように引き戻そうとしたが、バランスを崩して一緒に倒れてしまった。


そして、レオンが私に覆い被さり、押し倒したような格好になってしまった…


「す、すみませんでした!!」

レオンは急いで立ちあがろうとするが、私はレオンの首に手を回して立ち上がらせない。


「レオン君、泣いている女性を家に連れ込んで押し倒すなんてやるじゃないか。」

私はレオンの耳元でささやく。


「えっ!?いや!そんなつもりじゃなくて!えっと!ほんとに!!」

レオンの顔がどんどん赤くなっていく。


まったくかわいいじゃないか。


「あははっ!冗談だ、ありがとうレオン。元気が出たよ。」


「えっ!?は、はい!」

レオンは慌てすぎてなにが何だかわからなくなっているな。




元気を取り戻した私はソファから起き上がる。

そして、レオンに礼を言ってレオンの家を出た。





最後は試してやろう。

私がどこまで行ける冒険者なのかを。






そしてそこで死のう。仲間への懺悔を胸に。


最後に少年レオン、いや、冒険者レオンに会えてよかった。

レオンが弄ばれましたね…


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