表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/78

第59話 間話 アイリス

フロントラインが壊滅した。

その事実はただ私を押しつぶす。


あの時こうすれば、


私の采配が、指揮がよくなかったのか、


見誤ったのか、


私の選択は正しくなかったのだろか、


いや、そもそも私が冒険者になどならなければみんなは死なずに済んだのではないか、



私は部屋に閉じ籠りそんな問答を頭の中で繰り返す。


私は生きていていいのだろうか。

死ぬのがせめてもの責任の取り方なのではないだろうか。


そう思い出して辛くて辛くて仕方がなかった。


私は酒に逃げることにした。

ギルドの酒場に向かい、一杯二杯と酒を飲み干すたびに頭がぼーっとして忘れられる気がした。

もともとあまり酒は得意ではない。すぐに酔って気持ち悪くなるが、トイレで吐いてまたすぐ体に酒を入れた。


1人で酒を飲み、1人で吐く。その繰り返し…

これがクーリッヒで最強の一角まで上り詰めたクランマスターの末路だ。


全ては私の責任だ。


ギルドに白銀に煌めく全身鎧の男が入って来た。


私はゆっくりとそちらの方を向く。


白銀だ。


白銀が帰ってきた。

低ランク冒険者ながらもSランク冒険者とも引けを取らない強さをもち、白銀の異名を持つ冒険者だ。


あいつ!どこにいたんだ!?

まさか逃げていたのか!?あの戦いから!


あいつがいれば戦況は変わっていたんじゃないのか!?


あいつがいれば、もしかしたら、私のフロントラインはまだ存続していたのではないか?


あいつさえいればもしかしたら…


なぜ一緒に戦ってくれなかったんだ…


そう思うと私は居ても立っても居られず、立ち上がって気づいたら白銀に詰め寄っていた。




「白銀…なぜ今まで居なかったのだ?」

私は白銀にすごい剣幕で詰め寄った。


「すまなかった。」

白銀が申し訳なさそうに答える。


「大勢のものが死んだ。街も半壊している。なぜお前ほどの力を持つものが残って戦わなかったのかと聞いている。」


「出なければいけない用事があったのだ。すまなかった。」


「ふざけるな!周りを見てみろ!皆傷だらけだ!お前は一体なにをしていたんだ!なぜ貴様は何も失っていない!なぜ帰ってきた!?なんで…戦ってくれなかったんだ。」 

私はそう言うと、へたりと地面に座り込む。酔っていたのにもかかわらず急に立ち上がったせいもあるのだろうが、急に力が抜けてしまったのだろう。



「待て、アイリス。白銀は悪くない。いや、むしろこの戦いに大いに貢献している。」

騒ぎを聞きつけたアルドがリーナを連れてやって来た。


「どういうことだ。こいつはあの戦いにいなかったではないか!」


「そうだ。白銀はなんのようだかは知らんがクーリッヒにはいなかった。しかし、援軍の勇者達を呼び込んでくれたんだ。」


「白銀が勇者を?」

確かに関係がない勇者が援軍に駆けつけたな。


「そうだ。勇者が戦っていた魔王 アルモルド軍との戦いを白銀の活躍で勝利に導き、勇者達をクーリッヒに送り込んでくれたのは他でもなく白銀だ。なんでも、死霊騎士団と団長のアーガストを1人で食い止め撤退させたらしい。その証拠に見ろ、白銀の鎧を。矢傷や刃物で斬られた傷でいっぱいだ。高純度のミスリルの鎧がだぞ?相当な激戦だったはずだ。それに、ところどころ霞んでいる。錆びるはずのないミスリルがだ。おそらくアーガストの瘴気に当てられたんだろう。それほどの死地に白銀は立っていたんだ。」

アルドの言った白銀の戦績にギルド内の冒険者たちがざわめく。



「くっ…!」

確かによく見ると新品同様だった白銀の鎧は傷だらけだった。私にもこの傷を見ればどれだけ激戦だったのか想像がつく。


「白銀だってクーリッヒのためにみんなのいないところで命張って戦ってたんだ!そんなことも知らねぇで勝手なこと言ってんじゃねぇよ!!」

アルドが私に怒鳴りつけた。


「…すまなかった。どうやら私が間違っていたようだ。どうかしてた。」

そもそも白銀は全く悪くないのだ。クーリッヒのために命をかける義理もないのだから。


そんなのは初めから…知っていたのだ。


「いや、一緒に戦えなかったのは事実だ。すまなかった。」

やめてくれ、謝らないでくれ白銀。


「もう休め、アイリス。疲れすぎだ。」

アルドが心配そうに私に言う。


「…あぁ、そうだな。」

私は泣くのをぐっと堪えてギルドを後にした。


家に帰る途中も泣きそうになる。


自分が惨めでとても情けない。


死んで行った仲間たちに顔むけできない。


今の自分の姿を見られたくなくてできるだけ人目がない道から家に帰る。



「痛っ!あっ、大丈夫ですか?」

私は俯いて歩いていたため、前にいた少年に気づかず、少年に当たって倒れてしまった。

ぶつかった少年が私に声をかけて手を差し伸べる。


「す、すまなかった。」

私は少年に謝る。


よく見るとその少年は冒険者のようだ。クレイジースパイダーの赤い毛皮の装備をつけているようなのである程度は実力がある冒険者なのだろう。



「本当に大丈夫ですか?」

本当に心配そうに少年が私を見つめる。


「あ、あぁ。これくらい何ともない。」

何で転んだくらいでこんなに心配されるのだろう?


「でも、泣いていますよ?」

少年はそう言って私の目元の涙を拭き取る。


「えっ?あれ?」

私も目元を触ると涙が流れていた。


そう、私は泣いていたのだ。

拭いても拭いても涙が止まらない。


「ちょっ、えっ!?と、とりあえず、ここ、僕の家なんで休んでいってください。」

大泣きしている私を見て少年が慌てて家の扉をあげた。

この目の前の扉が少年の家のようだ。




私は言われるがまま少年の家に上がったのだった。

泣いてる美女を家に連れ込んだっ!?


「面白い!」「続き読みたい!」「最後まで見たい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!一言でも感想お待ちしております!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ