第129話 蟻との会合
俺らはついに98階層に向かう階段の前に到達した。
ここまで到達したことのある者は勇者パーティーとアイリスしかいないだろう。
つまりほとんどの者が初めて到達したと言うことになる。
「皆、聞いてくれ!これから先、98階層には化け物がいる。もしも巨大な龍を見たらすぐに逃げてくれ。やつはおそらくSSランクモンスターだ。絶対に勝てない!そして、98階層を支配しているモンスターは蟻のモンスターだ。こいつらもやばい。強い上に数が多い。囲まれないように注意するんだ!」
アイリスが前に出てきて皆にそう呼びかけた。
アイリスの情報に冒険者の皆がざわざわし始めたところにキュアがパチンと手を叩いた。
「はーい、皆さん気を引き締めてください。次の階層が私の目的の階層になります。では、進みましょう!」
キュアはそう言って護衛を連れて階段を降りていく。
冒険者達は慌てて依頼者であるキュアのあとを追った。
「ここは森か?」
アルドが98階層に入って周りを見渡して言った。
そう、98階層から99階層は広大な森が広がっている。
しばらく周辺を警戒しながら歩いていると蟻の偵察していた一個小隊と出会った。人よりも大きい巨大な蟻のモンスターだ。
「戦闘体制!蟻だ!気をつけろ!もっとあるかもしれない!」
アイリスが皆に命令を出す。
蟻たちも威嚇し始め戦闘体制に入る。
「待ちなさい!!絶対に攻撃は許しません!」
キュアが急に大きな声を出してみんなを制した。
そして蟻の前に出てくる。
「おいおい!お嬢ちゃんあぶねーぜ!?こいつらは98階層の強力なモンスターなんだ!俺たちでも油断はできねぇ、守れなくなるから下がれ!」
アルドが必死に呼びかけるが、キュアは無視して下がらない。
「こんにちは、私は地上の権力者です。貴方達にお話があって来ました。どうか一度貴方達の王とお話できませんか?」
キュアは丁寧にそう言って、頭を下げて誰もが見惚れるような礼をした。
「ギィ?」
蟻たちは互いに顔を見合わせ、首を傾げた。そしてその後、触覚を動かし始めた。
キュアは笑みをこぼす。
明らかに高度な知能があると確信したからだ。
2、3分だろうかそのまま時間がすぎた。
そして俺たちの頭に念話が響いた。
「私は蟻の女王 クルアです。来訪者よ、我ら蟻の一族になんの用があって来たのでしょうか?」
「はい、できれば直接合ってお話ししたいのですが…いかがでしょうか?」
「…いいでしょう。しかし、会うのは貴方と護衛のみです。少しでも妙な真似をすれば貴方を殺します。そして、お仲間の皆様も。」
クルアがそう言うとワサワサと周りから大量の蟻のモンスターが現れて囲まれた。
「はい!もちろんです!私の話は貴方にとっても有益なお話だと思います。では、そうですね。白銀、一緒に着いてきてくれる?」
「えっ、俺!?なんでだ?」
なんで俺指名?
「だって、あんまり連れて行っちゃ行かないって言うし、この中で一番強そうなのは貴方でしょ?早くきて。」
キュアはそう言って案内と思われる蟻に連れてきた護衛と一緒に着いて行った。
仕方なく俺もその後を追う。
「勝算はあるのか?」
俺は蟻の女王のクルアの元に行く前に少しキュアことバーバルとすこし雑談をすることにした。
「もちろん!もともとここにいたはずのナクアも地上で悠々自適に暮らしてるでしょ?彼らにも地上に出てもらってさ、暮らしてもらおうかなって。私の国が蟻が外で暮らすことを認めるのさ。ナクアがルーにブーモルの森を与えたように私も彼らに土地を与える。その代わり武力を貸してもらう。どう?なんとかなりそうじゃない?」
バーバルは簡単そうに俺にそう言った。
「そう簡単にいくかな?まず、お前は向こうの軍事力を知らない。彼女らの軍事力はおそらくルーすらも凌駕する。お前の助けはいらず地上への侵攻を行える。お前の許可などいらない。そして、一番危惧しなければならないのはお前が借りようとしている武力がお前に向かないかだ。もしも、蟻たちがお前に牙を向いたらどうする?お前は眠れる獅子を目覚めさせただけかもしれないぞ?」
「うふふ、そうね。そうかもね。でもさ、それもありじゃない?これから竜王ダイヤが死んで、私が死んで、ルーも蟻に殺されて、その蟻もいずれは誰かに殺される。死んで殺して殺されて、どんどんどんどん世界は変わっていく。もしかしたら最初に死ぬ大王は、ダイヤじゃなくて私やルーかも知れない。それだって構わない。世界が変わっていくその歯車を私が大きく回せたのなら…それはそれで私は満足なのかもしれない。」
バーバルは恋する乙女のように手を胸に当て、真紅の瞳をうるわせて頬を赤め恍惚な表情でそう言った。
「あー、なるほど。狂ってるのか…でも、その感覚、わからなくないぞ。そうだよな、面白いよな。世界をぐちゃぐちゃにかき回してその中に身を投じるのは!」
俺は兜を脱いで、満面の笑みをバーバルに見せる。
「あら、やっぱり貴方すごく欲しくなっちゃったわ。どう?私の側近として命を捧げてみるのは?」
バーバルはそう言って俺の腕を取り、自分の腕と絡ませて上目遣いでそう言ってくる。
「気が合うようだが、俺は誰にも降らない。」
俺はバーバルの腕を払ってそう言った。
「そう、本当に残念。あぁ、あと、こんな事言ってるけど本当に死ぬつもりはないわよ。蟻の女王とはちゃんと交渉してみせるわ。」
バーバルは少ししゅんとしたが、はっきりとそう言った。
「あぁ、楽しみにしている。ここで死んでくれるなよ、お前も俺を楽しませてくれるこの世界の1人なのだから。」
俺は少し笑みを浮かべながら、そう言って真っ直ぐバーバルの目を見つめた。
バーバルは次の言葉が出てこなかった。
なぜならば、この時、自分より弱いはずのこの目の前の冒険者が自分よりも遥か上位の存在に感じ少し怯える自分がいたからだ。
この世界を統べる3人の大王の1人である始祖の吸血鬼バーバルが怯える存在。
そんな存在いるわけもないのに、確かにバーバルは一瞬怯えて声がでなかったのだ。
バーバラは第六感でジンのなにかわ感じ取ったようですね。
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