第116話 魔王と勇者
「潰れたな。ふはは、今度は私の尖兵として自分の仲間を殺すのだ。死ね、偽物勇者!!」
アルモルドはそう言って魔力結晶をルーカスの心臓目掛けて放った。
「ホーリーバリア!ハイヒール!!違うよ、ルーカスは偽物なんかじゃない。」
アリルの張ったホーリーバリアによってルーカスに飛ばされた魔力結晶を防ぎ、ルーカスをハイヒールで癒した。
「お前は…聖女か。」
アルモルドがアリルを見ていった。
「アリル!?どうしてここに?」
アーガストと戦っているはずのアリルが急に現れてルーカスは目を見開いて驚いた。
「私達の攻撃を後押しする形で突如として現れた魔王 シャールブ軍が死霊騎士団を率いるアーガストの背を突いたの。これによって戦況が大きくこちらに傾いたから私が抜けられてここに来れたわ。」
「ちっ、魔王 シャールブ!あの忌々しい悪魔め。ずっと狙われていたということか。ということは、大魔王ルーはやはり大魔王バーバルとも戦おうというわけか。大魔王バーバルは竜王ダイヤとの戦いで手一杯。アナスタシアもミンクを抑えている。私という戦力を削る絶好の好機だったわけだ。まぁ、いい。この愚かな偽物とお前を殺してから対処するとしよう。」
「ルーカスは偽物なんかじゃない。」
アリルは魔王アルモルドを睨みながらそう言った。
「偽物だろう?言われるがまま戦い、殺し、自らの確かな正義を持たない。それは勇者か?違う。ただの兵器であろう?」
「いいえ、ルーカスは本物の勇者です。」
「なぜそう思うのだ?」
「ルーカス、勇者とはなにを持って勇者なのだと思いますか?」
アリルがルーカスに向かって言った。
「何を持って勇者なのか?」
ルーカスは首を傾げて呟く。
「勇者とは自称するものではありません。人々が彼を勇者と呼ぶのです。私は見てきました。彼に助けられた者を、彼に助けを求める者を。彼が助けに来て安心する者を。そうした彼のこれまでの行いが、人々の彼への期待が、彼を勇者たらしめているのです。人々が彼を勇者と讃える限り、彼は勇者であると私は断言します。」
「人々が勇者と讃えたら勇者になれるのか?ふはは!そんなものいくらでも繕えるだろう?人々がそう讃えるのは人々にとって彼が都合がいいからだ。正義であるからではない!!その正義を向けられた者達からしたら、勇者は悪魔のように映るだろうな!」
「正義?ふふっ、魔王である貴方が正義を語りますか。確かに力及ばす助けられないものもいました。ですが、悩み、苦しみ、死に物狂いですべてを助けようとするルーカスの行いが悪であるはずがありません!!ルーカスは正真正銘 正義の勇者です!!」
アリルは魔王アルモルドに杖を向けてそう言い切った。
「アリル…」
ルーカスはアリルの方を向き涙を流す。
「ただの言い訳だろう!!」
アルモルドは魔力結晶をアリルに向けて伸ばす。
「ルーカス!立ちなさい!歯を食いしばりなさい!私が断言します!貴方は本物の正義の勇者であると!ホーリースラッシュ!!!」
アリルはルーカスに向かってそう言い、自身の最強の魔法で向かってくる魔力結晶を砕いた。
「あぁ、アリル。ありがとう!僕は勇者ルーカス!魔王アルモルド、僕はもうお前に惑わされない!正義の天秤!!」
ルーカスの後ろに巨大な光の天秤が現れ、大きく傾いた。
その途端、ルーカスに凄まじい聖気が宿る。
「あぁ、全く本当に相性が悪い…」
アルモルドは魔力結晶を飛ばすが、ルーカスの強力な聖気がそれを弾き、アルモルドに向かっていく。
魔王アルモルドは様々な魔法をルーカスに放つがルーカスの勢いは止まらない。
「これで終わりだ!!」
強力な聖気によって強化された光の剣でアルモルドを貫いた。
「我を滅するか…だが、貴様の小さな手では救える命など高が知れている。人間の兵器であることも変わりない。だが、ふはは。我を滅するという偉業は一つ成し遂げた、確かに貴様は勇者のようだ。」
アルモルドはそう言って崩れ落ちて灰となった。
「あー、面白かった!!ルーカスは仲間に恵まれたようだな。」
高位のマジックアイテムによって目の前に大きな画面が投影されており、そこにアルモルドとルーカスの戦いが映し出されていた。
魔王と勇者の戦いを見終わった俺はご満悦だ。
「…あの最後の勇者の強さ。あれはなにか超越的な力を感じました。」
アステリアが目を細めてそう言った。
「生命の神 エルのような神がこの世界には何柱かいるんだろうな。」
「そうですね。こちらでも色々と調べておきます。」
「あぁ、頼む。…魔王アルモルド。なかなかの人物だったな。生き返らせて、俺の配下に置くか?…いや、それはこの戦いに水を差す行いか。」
俺は魔王アルモルドが使っていった魔力結晶を手のひらに出しながらいった。
この魔法も素晴らしい。
消費する魔力コストはかなり少ないのに汎用性が高く強力な魔法だ。
俺も練習しよう。
「では、アーガストを勧誘しますか?マスターは彼のことも気に入っていましたよね?」
「そうだな。勧誘しておいてくれ。あぁ、無理な勧誘はしなくていい。」
「承知致しました。使者を送りましょう。」
アステリアはそう言って下がっていった。
「勇者ルーカス。アリルに励まされて開き直ったようだが、お前は所詮 人間のための人間の勇者であることには変わりはない。それは人間だけを贔屓するということだ。まぁ、それでもいいだろう。だが、ルーカス自身がしたいことは違うだろう?そんな区別をつけて助けることではないはずだ。」
俺は立ち上がってルーカスを映し出している映像の前に立つ。
「たしかに、ルーカスは魔王を倒せるほどの勇者として超越的な力を持っている。だが、それは借り物の力。力を持っているから勇者なのではなく、その力をどう使うかが勇者が勇者足り得る所以だと俺は思う。だから、俺が見たいのはこれからだよ、ルーカス。楽しみにしている。」
俺は映像に映るルーカスを指差して笑いながら言った。
勇者ルーカス、魔王討伐っ!!
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