第109話 本当の罠
「バーバル!!貴様ぁ!!」
ダイヤが飛んできたバーバルに向かってドラゴンブレスを放つ。
「おぉ、怖い怖い。これは当たったら結構やばいかも!」
バーバルは旋回してダイヤのドラゴンブレスをかわして凄いスピードでダイヤに向かっていく。
「今は大魔王として協力するのではなかったのか!!この裏切り者の恥知らずが!」
ダイヤはそういうと近づいて来たバーバルにドラゴンテールを繰り出した。
「いやいや、なに勝手に味方だと思ってるの?そもそも君は負けたんだ。責任取って死んで償いなよ。」
バーバルは繰り出されたドラゴンテールもひらりとかわした。
「血吸い虫め、殺してやる!」
「まぁ、そもそも君を殺す機をずっと伺ってたんだけどね。悔しいけど、私と私の勢力では今まで君に勝てなかった。君の派閥はブーモルとミンクだ。そして軍事力では数の多いオークの王であるブーモルは目を見張るものがあった。それがナクアによっていとも簡単に殺されてしまった。君はすごいむかついただろうねぇ。でも、それだけでは私は君にまだ勝てるかあやしい。」
バーバルは楽しそうに続けて話す。
「そして、次にハシャが君を攻めた。これには私も驚いたよ。君があそこまでコテンパンにやられてしまうなんて。これで希望が見えた。しかし、もう一つ問題がある。ルーだ。ルーは私が攻めようとしたら必ず止めるだろう。そして、私は流石にそれを跳ね除けられない。下手をしたら君とルーを同時に相手をする羽目になるからね。だけど、こないだの魔王会議でのルーはかなり違った。なにがかわかるかい?」
「変な杖をもっていたな?あと、少し攻撃的だったか?」
ダイヤは首を傾げて言う。
「愚かなトカゲさん、だから君はこうして私に攻められるんだよ。ルーはね、変わったんだよ。考えが。ルーは今まで私たちを大きな争いが起きないように魔王会議をこまめに開催し、私たちを監視、牽制して調和を目指していた。しかし、この間のルーは違った。あれは調和など考えてはいない。私たちを片付けようとしているんだよ。ルーは私たちのことを今までの統制、調和と言う考えから排除という選択肢に変えたのさ。これで、ルーは君を助けない。つまり、私は君を攻められるようになった。」
「な!あのルーがそんなことを!?」
「ほんとに気がついていないんだね。その証拠に実際に私が動いてもルーは動かなかった。潰しあえってことだよ。ルーはみんなが思っているより怖い魔王だよ。私達が知らない、凄まじい争いの時代から生き残っている魔物なのだから。だから、私も備えなければならない。あの魔王から自分を守るために。そして、君は邪魔だ。あの亜人達との戦いは君があんな多種族の混成軍を指揮して進軍できるなんて、もともと思っていなかった。いや、だからあえてあの場で他の魔王たちにもそれぞれ大軍を出すように仕向けた。私もそしておろらくルーも。君がそれだけ多様の種族の軍を統率して行軍できるわけないと見越して。そして、君は予想通り軍を解散させ、自軍だけで攻めて撤退した。これで君を攻めることのできる「敗走の責任を取らせる」という大義名分ができた。」
「ふざけるな!!」
「魔王モグ軍が敵の援軍として到来!!竜王様!!一度撤退を!立て直しましょう!このままでは!!」
ダイヤの部下が撤退を提案する。
「魔王ミンクは来ないよ。アナスタシアにミンクの国を攻めさせている。援軍をよこす余裕なんてない。…それともう一つ言うのであれば、致命傷だったのは王妃ロベアの死だね。彼女が居たのならば、ここまでうまく事は運ばなかったろうね。」
「くそ!!覚えていろよ!!」
ダイヤは一度撤退を命令した。
「よし!皆のもの、敵の国境防衛ラインを突破した!軍を大きく散開させて街や砦を焼きながら進軍しなさい!もしも、龍都 ハクアを落とせなくても徹底的に龍の国の国力を落せ。力だけで王になった者に世界は統べられないよ。」
バーバルは笑みを深めてダイヤを追った。
この大戦の三大王の本当の罠とは、バーバルとルーによって竜王ダイヤを落とすための戦いそのものであった。
バーバルはダイヤを倒すために。
ルーはハシャから受けた被害を回復させ、最大の軍事力を持つ他の2人の三大王達を争わせることで軍拡を進める時間を作るために。
ダイヤは2人の手のひらで踊らされてしまったのだった。
補足するのであれば、本来の龍の国であればこの策には引っ掛からなかった。それは、龍の国にもルー、バーバルと並ぶほどの知略を持つものが居たからだ。
彼女がいたのであれば、ルー、バーバルの思惑にすぐさま気づき各魔王からの援軍を追い返し、防衛にのみ徹していたであろう。
彼女がいたのであれば、バーバルの侵攻さえも許さなかったであろう。
しかし、その者はもう居ない。
ハシャによって葬られてしまったのだから。
ルーとバーバルの仕掛けた本当の罠にダイヤが嵌りました。
ロベアがいたのなら全く違う戦況だったのでしょう。
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