第102話 裏56話 AG–02とルー・チャルロイドの過去
少し時は遡り、ルー・チャルロイドが荒野のハシャに戦いを挑み敗戦した帰路の話。
「ゲコ、この儂が城にすら辿り着けんとはな。」
なんとか命からがら撤退できたボロボロのルーは元は30万いた一万にも満たない軍の真ん中で馬車に揺られて1人つぶやく。
「この敗北は痛いのぉ。弱った儂を見て傘下の勢力で離反するものも出てくるじゃろうし、新たな敵対勢力も出てくるじゃろう。その流れは勢いを増し、世界に波及する。…また乱世が始まってしまう。」
ルーは悲しそうな顔をして言う。
「何者だ!!」
外から部下の怒鳴り声が聞こえる。
なにか来たのか?
窓を開けて外を見ると兵に囲まれたさっきまで戦っていた敵の指揮官のゴーレム、AG-02がいた。
まさか、儂にトドメを刺しにきたのか!?
まだやられるわけにはいかん!
痛み、血が流れる体を無理やり奮い立たせて馬車を出る。
「ゲコッ、単身で儂にトドメを刺しに来たか?ゲココ、舐められたものじゃ。」
残された少ない魔力で儂は術を組み始める。
「なぜだ?大魔王ムーの側近であった賢者ルーよ。なぜお前はマスターに戦いを挑んだ?お前ならば戦いを挑んでは行けない相手だとわかっていただろう?」
賢者ルー…懐かしい名前を出してくる。
古き時代の者であったか。
「ゲコ、何者だ?かなり古い時代の話を知っているとは。」
「私はかつてワイス大魔道王国の世界征服兵器AG-01だった者。ルーよ、お前もワイス大魔道王国には何度も外交に来ていたはずだ。」
「ワイス大魔道王国…かつて他国よりも何世代も先の凄まじい魔道工学をもって魔道兵器による強大な軍事力を持っていた国だな。その中でも最後に開発したという究極のゴーレム。AG-01…自らの生み出した最強の兵器によって滅びた国。そうか、ずっと滅びた亡国に佇んでいるだけと思っていたがハシャに降りAG-02となったのか。お前には大魔王ムー様もかつて最大の警戒を払っていたぞ?」
「そうだ。お前はかつて他の者とは違っていた。賢く、無駄な殺戮はしない。弱い者に手を差し伸べる仁義のある者だ。不必要な犠牲を出す者ではない。なぜ、マスターに挑んだのだ?」
「ゲコッ、ずいぶん買い被ってくれているようじゃな。お主ならわかるじゃろう?かつての乱世が!各地で凄まじい争いが起き、血で血を洗う戦いを永遠と続ける。弱き者が殺され、強き者も無惨に死んでいく。したくもない戦いに明け暮れ、味方も敵も大量に殺し殺される。あの時代にこのままでは戻ってしまう!大魔王ムー様の意思を継ぎ、儂がこの世界を安定させる!そのためにはハシャは倒さなければならなかった!!」
「戦場でも話していましたね。」
「今世界は狂い始めている。今までは儂が魔王会議と称して定期的に魔王達を集め、牽制、制御し小さな小競り合いしか起こさせなかった。魔王たちを儂がある程度結束させ、魔王以外の巨人の国 アトラースなどの強大な勢力にも動きを許さなかった。世界の力は安定していた。死の迷宮からナクアが這い出てきて魔王ブーモルを倒し、そして強大な勢力、荒野のハシャが現れた。世界の均衡が大きく崩れたのだ!倒さなければならなかったのじゃ!!ハシャは!…じゃが、儂は負けてしまった。これは決定打じゃ。儂の魔王制度の力は弱まり世界は荒れる。世界は…群雄割拠の時代へと巻き戻る。」
「やはりあなたは今だに賢者なのですね。」
「ゲコ、結局世界を乱世に戻してしまう儂は愚者なのであろうよ。」
「平定すればいいではありませんか。あなたがこれから乱世を平定して…世界征服をしてみればいいではありませんか。」
「ふん、簡単に言ってくれる。大魔王ムー様でさえ叶わなかったことだぞ?」
「世界征服、大魔王ムーもやはり目論んでいたのですね。では、なぜ大魔王ムーも世界征服をしようとしていたのですか?」
「…」
儂は知っている。大魔王ムー様になぜ、世界征服を目論んでいるのか。そして、その理由を聞いて私は大魔王ムー様の力となることを誓ったのだ。
「世界を統一し1つの国にする。そうすることによって国同士の争いを無くす。それが大魔王ムーの世界征服する目的だったのではありませんか?あなたが目指してもいいのでは?」
「儂が世界征服を?」
「えぇ、だって乱世なのでしょ?あなたもその乱世の英雄の1人です。」
「ゲコッゲコッ!そうか、儂も乱世の英雄の1人か。」
確かにその通りじゃ。儂も群雄割拠の1人に過ぎん。
「これを。」
AG-02は一振りの杖を取り出した。
「これは!?」
「マスターにあなたの話をしたら、「じゃあ、これあげる」と。」
「大魔王ムー様の杖!?」
儂は恐る恐る受け取った。
「では、これで。」
そう言うとAG-02は飛び去って行った。
「大魔王ムー様、儂は…」
世界を平和にして見せます。
ルーも世界を狙います!笑
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