第101話 アリアの夢
ここはハードル伯爵の執務室。
ここにはルーカス、ロン、アリア、俺が集まっていた。
ここで降伏したアグーの軍団とオークの民達の今後を決める。
まぁ、もう決まっているようなものだがな。
俺たちはアグーに勝利した。
やはりアグーは名将であった。今回敵は3000の軍勢に見えたが、実は両翼に現れたオーク側は最前列だけオーク兵であとは女や子供、老人などの非戦闘員であった。
つまり、両翼に大軍を現れたように見せて、勇者を本陣に突撃させて、包囲し倒そうとしたアグーの策略であったのだ。
そして勇者はまんまとその策に引っかかった。
数の多い討伐隊から勇者を切り離し、突撃してきた勇者をあらかじめ用意していた重装歩兵隊で防ぎ、あとは包囲し撃破する。
勇者はアグーの筋書き通りに動いた。
これはアグーの策を見抜けなかった指揮官のルーカスとロンの失態でもある。
よく見ればわかったのだ。
実はオーク兵はかなり疲弊していた。
アグーは自分の軍団を連れて他のオークの砦から溢れた民たちを救うために奔走しており、軍団もろくに食べれてはいなかった。
そして、両翼にいた民たちの服装もぼろぼろ。
勇者達が取らなければならなかったのは突撃による短期決戦ではなく持久戦。
まぁ、アグーの言動や圧力の掛け方がうまかったので、アグーに心理面も誘導されていたのだろう。
これらは捕らえたオーク兵から聞き出した情報だ。これはこの場で共有された。
「えっ?アグーはいい人だったの?」
アリアが目をぱちくりさせた。
「オークにとってはね。あいつがやろうとしていたことはここでの略奪行為だよ。決して許されるものではない。」
ルーカスがアリアの言葉に答えた。
「理由はどうであれ、あいつらは我が領土を脅かそうとした。全員処刑しろ。」
ハードル伯爵が無情にも判断をくだす。
「御意。」
ロンがすぐに答えて執務室から出て行こうとする。
「待って!!えっ?全員殺してしまうのですか!?なぜです?種族は違えど彼らは我らに降伏しました!そして、その中には戦えないオークの子供や老人などの民もいるんです!」
アリアは驚いて声を上がる。
「アリア、本当はこの場に呼びたくなかった。だが、今回はちゃんと戦争を教えていなかった私にも責任がある。戦争は悲しいものなんだよ。普通、敵軍を捕虜にしたら敵国と交渉して解放する。敵国からの報復があるかもしれないからね。だけど彼らには国がない。言うなれば野盗と一緒なのだよ。いや、モンスターと一緒だ。」
「守っている国がないからって殺してしまうのですか!?」
「では、解放したとしよう。でも、彼らが私の民を襲わない保証はどこにある?殺さずに捕えて置くのにもコストがかかるし、民たちは怯えて暮らすことになる。ならば、殺すのが最適解だ。」
「そ、そんな…こんなことルーカス様も納得されているのですか!?」
アリアは助けを求めるようにルーカスを見る。
「もしも、彼らが村を襲ったとしよう。そうしたらオークの民たちも一緒にここの民を虐殺したことだろう。殺そうとしたのだから殺される覚悟をしなくてはいけない。それは僕も一緒だ。彼らはこの地で略奪を働こうとした。それは擁護するとこはできない。アリアちゃん、これは戦争なんだ。」
「そんなだからって、彼らも困っていたのですし、飢えていたのでしょ?誰も…助けてはくれなかったのでしょう?」
「あぁ、そうだろうな。そして我が領土を襲った。」
ハードル伯爵は極めて冷徹に答えた。
アリアの意見は感情論でしかない。
それは為政者のそれではない。ただの子供の意見だ。
ハードル伯爵の判断は変わることなどなく、捕えられたオーク達はハードル伯爵の命令の下に、ことごとく処刑された。
俺はアリアのお父さんの判断を聞いて思った。
やはり、ハードル伯爵は名君である。
普段は温厚で民のために尽くす。その反面、強力な私兵団を抱え、いざとなったら兵を徴収し数千規模の兵を動かすことができる武闘派の一面もあり、頭も回る。納める領土も経済的に豊かに発展している。
いざという時には冷徹な判断も下せる。それはその判断を下さなければどのような事象が起こるか、被害が起こるかを明確にわかっているからだ。
例えば、今回のオーク達を解放したとすれば、やはり食料に困りハードル伯爵領ではなくても村を襲い略奪を働くだろう。かといって、捕らえておくにも警備をさせる兵隊がいる、食料がいる、医薬品がいる、コストがかかりすぎる。さらに捕らえている軍はアグーの歴戦の軍団である。領内で捕えておくには危険すぎる。かといってブーモルの国は無くなっているため引き渡し先もない。
ならば、殺すしかないだろう。
その冷徹な判断を下せる領主がどれくらいいるのだろうか。
アリアとは打って変わってアリアのお父さんは優秀な貴族なのだ。
今回のアリアの行動はさすがに目に余る。子供だからと言って許されるレベルを超えている。
アリアがこの戦いでなにを思い、なにを成したいのか。
その答え次第ではアリアはもう見ていても面白くないかもしれない。
そうなれば、もう俺はスケさんとしている意味はなくなるだろう。
もうアリアには十分すぎるほど力を与えた。アリアにもう義理は返している。
アリアには輝くなにかをもっているように見えたのだが、それは俺の見当違いだったのか?
俺とアリアはアリアの部屋に戻った。
アリアは布団に入りずっと泣いていた。心優しいアリアには戦争はとても辛いことだったろう。
「スケさん、なんでこんな悲しいことが起こるの?みんな仲良くしたらいいのに。」
アリアは布団から出てきて、涙を流しながら俺に聞いてきた。
—それはみんなが思っていてみんなができないことだ。みんなが仲良くと言うのは意外にとても難しい。種族の違いや食べるものの違い、差別や思想、人が多ければそれだけ色々な問題が起きる。結局はみんな自分が1番かわいいからな。他人を犠牲にして自分を助けようとする—
「悲しいね。みんなが尊重し合える国はないの?」
—さぁ?本当に尊重し合える国があるのかな?どの国も難民は嫌がるしな。わざわざ助ける国はないだろう?—
「…私が作りたい。」
—えっ?—
「私が作りたい。みんなを受け入れて仲良くし合える国を。どんな種族も関係ないそんな国を。」
—ど、どう言うことだ?人間もモンスターも亜人もってことか?—
「うん!全種族が平等で仲良くできる国!素敵でしょ?」
アリアは泣き止み、ニッと無理やり笑顔を作って涙を拭きながら言った。
—アリア…わかっているのか?モンスターも従えるってことは、魔を従える者。それを人は魔王と言うんだぞ?—
「魔王か、じゃあ、私はだれよりも優しくて強い魔王になる!」
そう言ってアリアは小さな胸を張る。
—あ、あははは!!!面白い!面白いよアリア!!魔王になるのか??人間の魔王!!それが君の選択か!いいじゃないか!いいじゃないか!!—
俺は狂ったようにカタカタと笑った。胸が高まる。ドキドキする。
最高に面白いじゃないか!!
世界で初めて人間で魔王になる、それがアリアの答えか!
「大変そうですけど、目指してみますわぁ!もうこんな悲しいことが起きないように最後にみんなが辿り着くような最高の国を。」
—あぁ!楽しいだろうな!だけど、それは茨の道だよアリア。だれもできなかったことだからね。これまで以上に勉強しなきゃならないし、強くならなければならない。もしかしたら、勇者と戦うことになるかもしれない—
「でも、やってみてもいいでしょう、スケさん?ずっと着いてきてくれるでしょ?ずっと見てくださいまし。私の…冒険を。」
ずっと泣いていた少女はもうここにはいなかった。すでに決意を決めた強い目をした女性がそこにはいた。
あぁ、アリア。なんでそんなに俺の心を刺激する言葉を選ぶんだ。
そんなことを言われたら…
—あぁ、ずっと見ているよ。成功してもたとえ道半ばでボロ雑巾のように死んでしまうとしても俺はずっと見ていよう—
答えてしまうだろう。
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アリア編は一度ここで終了です。
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自分勝手なアリアお嬢様のこれからが楽しみになってくれていたら幸いです。
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