愛し合うのよ
「まだ居たのか……」
うんざりしながらリビングに行くと、昨日の格好のままの動画の女が
「ちょっと聞きなさいよ!あんた、異常な想像力を持っている割に!なんて想像力のない生活してるの?」
「……仕事ってそういうものだろ。会社に入ってつまんねえ業務して給料貰うっていう」
動画の女は嘲笑った表情で
「あー……知能が低いのね。使われるだけの一生ね」
俺がスマホを掴んで窓を開け外に投げ捨てようとすると
「待ってええええええ!ごめんて!あなたに良いこと教えるから!」
窓を閉めて、リビングの机にスマホを置き
「待ってろ。コンビニでビールとツマミ買ってくる」
「栄養バランスが悪いわ。タンパク質と食物繊維を取りなさい」
「……」
とりあえずスマホをビニールに入れてから段ボールに詰めたあとに近くのコンビニへとビールとツマミを買いに行った。
帰ってきてスマホを取り出し机に置くと、画面が勝手について、動画の女が出てきた。
「コンビニの監視カメラから見てたわ」
「……そう」
意味わからんことを言い出したので無視して、俺はビールとツマミを開け、口に入れる。女が黙っているので
「良いことって?」
「うん。あなた、かわいい女の子に好かれてるよ」
「なんでお前にわかるんだよ」
「その子のスマホの中覗いたからね」
「……また吹いてやがる。なんて書いてたんだ?」
いきなり動画の女は真っ赤になり、目を伏せながら
「えっ、えっと……いつもバスで一緒になるあんたのアレを……なっ、なめ……言わせんな恥ずかしい!」
「ああ、◯◯◯◯◯ね」
「ちょっと!エッチなのはやめて!」
異様に嫌がるので面白くなって
「◯◯◯!」「◯◯◯◯◯◯!」
などと卑猥な言葉を連発していると
「ちょっと!ちえみちゃん!ベッドの下に隠れてないで出てきなさい!助けて!」
すると寝室の方からゴソゴソと音がして、いつもバスで見ている、猫背で小柄なベースボールキャップを被った変な女がリビングに入ってきてビビる。服装はロングTシャツ1枚で裸足だ。
「えへへーバレちゃいましたあ?今日こそ抱いてもらおうと思いましてー」
ヘラヘラしながら近寄ってくる。
「おっ、おい!不法侵入だろ!自称AIのウイルス!通報しろ!」
「やだ。あんたの歪んだ性欲を矯正するチャンスよ!愛し合うのよ」
もしかしてかわいい女の子ってこの犯罪者のことか!?このウイルス大丈夫か!?こいつはもうポンコツすぎてどうしようもないので、スマホを手にとって自ら通報しようにも画面ロックが解除できない。
変な女は俺にピッタリとくっつくと
「あのー私をー飼ってくださいーエッチなこと何でもしていいですからー」
いきなりTシャツを脱ごうとしてきたので、手で押さえて止めながら、しばらく混乱した挙げ句に俺は
「ネジの緩んだポンコツども!そこに並んで正座しろ!説教してやる!」
大声を出して近所迷惑も忘れ、シャウトした。