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修行してんの?

「いい?性欲ってのは男女……いや、相手があってこそ成立するの。でもあなたの欲しい画像は、変なシチュエーションの全裸女性や亜人女性が変な行為をしているだけでしょうが!」

「それが?」

「うう……脳が終わってる」

動画の女は両肩を落とした。

「寝たい。ウイルスが説教するな」

俺がパソコンの画面を壁側に向けると、今度は机に置いていたスマホの画面に女が映って

「……いきなり来た私が悪かった。とりあえずあんたの生活を観察させて貰うわ!」

「チッ……スマホにまでウイルス汚染か」

「ウイルスじゃないわ。AIよ」

「黙れウイルス。スマホごと捨てるぞ」

「それは困る……うう、ごめんて!もう黙るから気にしないで!パソコンも元にもどってるから」

そう言って、動画の女は消えた。パソコンを元の位置に戻して確認してみたが、異常は見当たらない、ウイルス除去ソフトを起動して、俺は寝た。


翌日、パソコンにウイルスは検出されていなかった。スマホもクリーニングアプリを起動したが異常はない。……夢だったな。と思って俺はいつも通り朝の準備をして、マンションを出ると、ダラダラと出勤する。


地方都市郊外発のガラガラのバスに乗って揺られていると、いつも通り2名の女子高生たちが乗ってきて、工場勤務らしきぽっちゃりした女性、キャリアウーマン……死語か?ぽいスーツの女性たち、ベースボールキャップを被りアナログカメラを首に下げた猫背で小柄な変わった女性、図書館前で降りる老婆、など、いつも通りの三次元女たちでバスはほぼ満員になる。俺は窓の外を何も考えず眺めて時間をつぶし、女性たちが降りきってしまったあと、町外れにあるわが社の三階建ビル前のバス停で降りる。


正直に言う。この会社での俺は、両親のコネ入社の給料泥棒の無能社員だ。もう入社十年目になるが、ポラリスアンドウツロブネコーポレートという意味が分からない社名で、社員二十名のこの会社全体の業務も正確には把握していない。


仕事内容は、タイムカードを押して、自分の席に座り、表計算ソフトを起動して、いつも優しい中年女性上司から渡された書類の数値をデータ内に入れ込んで保存した後に、拡張子を変換して上書きができないようにする。という、まあ、慣れたら子供にでもできそうな業務内容だ。土日休みで9時までに出社して昼メシ挟んで17時前には帰れるという人に優しい仕事だが、給料とボーナスはそれほどもらえない。


今日も俺はダラダラと数値を入力して、近くのコンビニで買ってきたおにぎり2個で昼メシを済ませ、そして午後も数値を入力して、タイムカードを押し、静かに退社した。


また三次元女性だらけのバスに乗ってマンションに戻り、シャワーを浴びたあと、ビールでも飲もうと冷蔵庫を開け、何も入っていなくて舌打ちしていると

「あんたさあ、修行してんの?」

いきなり、リビングに置いたスマホから昨日の女の声がした。

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