関係あることよ!
仕事を終わらせ、自宅マンションに戻ると、れいかがメイド姿で迎えてきて
「ちえみ様はとしこ様の散歩に行っています」
と言って、既に出来ていた夕飯を食べるように勧めてくる。食べようとする前にトイレに行くと、その中で何故かスマホからウイルスが
「ご飯食べる前に、パソコン台の引き出しから小型補聴器出して右耳に入れておいて」
「耳悪くないぞ?」
「ちょっと試したいことがあって。あなたのスカウトと関係あることよ!」
首を傾げながら、トイレを終え手を洗い、言われた通り右耳に小さな補聴器を入れる。採用業務に関係あるのなら仕方ない。意味不明だけど……。
れいかに見守られながら夕飯を食べると急激に眠くなってきた。身体が動かなくなってそのまま突っ伏し、寝入ってしまう。
……
「タヌッ、タヌッ!タヌーふわわわわ!」
奇声が聞こえてきて起きる。目の前には豪華な祭壇のど真ん中に人間サイズほどある立ったタヌキの置物が置かれていてその前で、神社の神官が着るような法衣姿の黒髪が腰まで伸びている女性が、長い榊を両手に持ち、全力で左右に動かし祈っていた。
「あの……」
と声をかけようとして気付く。ボクサーパンツ1枚しか着ていない上に全身を縛られている。いきなり女性はこちらを向いて、一重の細長い両目と薄い唇で微笑むと
「ようこそ、我が神のヤシロへ」
と言ってきた。
「なんなんですかこれ……」
女性はニッコリしながら
「我が信者のれいかに頼んで、あなたの食事に睡眠薬を入れてもらい、我々、タヌポーズエクストラの施設に運んでもらいました」
お前を誘拐したよ!とあっさり白状してくる。
「たっ、タヌポーズ……エクストラ?」
女性は嬉しそうに、背後のタヌキの置物を指差すと
「……毎日会社で経理をしていた普通の女だった私の頭にある時、タヌ神様のご啓示が降りてきたのです。それは、とても神秘的なお声でこう言っておられました……」
いきなり女性はバッと立ち上がると、振り付きで
「タヌポーズなのー!エクストラなのー」
と腰を振って踊ると、冷静ば表情で座り込み、真剣な眼差しでこっちを見つめ
「……私はその時、はっきりとわかりました。別の宇宙からとてつもない大きな存在が私に向け、とても重要なご信託を放っていると。すぐに私は会社を辞め、宗教団体タヌポーズエクストラを立ち上げたのです」
「……」
この女は完全にイカれている。これは、とんでもないことになったかもしれない……。