神秘的なコラボレーション
よし、今回は長いぞ。一回、立ち上がり、深呼吸をしながらストレッチをする。両手もフルフルと振って完璧なタイピングをするための準備を入念にしてから、再びパソコンの前に座った。
「猫耳と猫しっぽが生えている金髪の美少女が汗だくのサラシとふんどしだけの格好で、黒髪ロング前髪ぱっつんの赤マントと漆黒の鎧を着たはずかそうな美少女に陰気な雰囲気の魔王城で告白されて、顔を真っ赤にして戸惑った表情をしている。それを全裸の青白く薄ぼんやりと発光する妖精たちが遠巻きに見つめている」
カチャカチャッターン!タターンッターンカチャカチャッターンッターン!……決まった……。もはやタイピングが気持ちよすぎて楽器を演奏しているようだ。ふふっ、楽しみだな。早くでてこないかな。
作成ワードが表示されたまま、画像作成しているロード画面を見つめていると背後から
「としこーナカマさんは猫耳が好きみたいですねー」
「ワフウー」
驚いて振り返るとちえみと柴犬のとしこがこちらを見ていた。
「さっ、散歩は?」
「もう1時間歩いてきましたよー?」
「ワンッ」
な、なんてことだ。集中しすぎていて時が経つのを忘れていた。しかも最悪のタイミングでパソコン画面に作成画像が生成されてきた。ちえみは興味深そうにそれを見つめると
「猫耳と猫しっぽ……ふんどしとサラシですかー……私ー明日からその格好しましょうかー?」
「……いっ、いや、そういうことじゃないんだ。全体のシチュエーションが大事というか……」
メモ用紙にとしこがサラサラと何か書いてちえみ伝いに渡してくる。
「おまえ 病んでないか?」
と書かれていたので
「いや、病んでるというか、性癖がマニアックなだけで……」
俺はさっきから何を弁解させられているんだ!ここは俺の家でネット回線も俺が払っていてパソコンも自費で購入したものだ!画像生成もモザイクをかけないといけないような性交渉場面はないので完全に合法だし!何も後ろめたいことはない!むしろ芸術だろこれは!AIと俺の想像力の神秘的なコラボレーションだ!……よし。
「……ちえみ、としこ。俺の大事なプライベートな時間なんだ。今夜は俺は気にせずに寝室でゆっくりしてくれ」
ちえみは少し考えると
「わかりましたーとしこいくよー」
寝室に行ってくれた。よし、ここからが大事なのだ。俺はテイッシュの箱を手繰り寄せる。するといきなり画面が切り替わり
「こらーっ!一人で貴重なタンパク質を無駄にしないで、ちえみちゃんとやりなさいー!」
動画の女が怒った表情で出てきた。
「お前なあ……」
凄い下品なことを言っている上に、俺のプライベートに踏み込んできて、しかもちえみの意思も無視している。無言で俺と自称AIのウイルスは睨み合い夜は更けていく。