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第9話 SR以上確定!SRガチャを回せ!

 夕焼けに照らされた無人の部屋に異形のモノが現れた。


 その頭には外周に天をく尖った装飾付きな金の王冠が乗っており、背中からは巨大なコウモリの翼が生えている。


 この部屋の主であるチャコだ。


 黒猫のぬいぐるみを持ったチャコは、その場で一回転するというガチャの低レア演出の如き素早い行動で変身を解くと、茶々子に戻ってぬいぐるみを机に置きポン太へ宣言した。


「ポン太〜! 貢献度ガチャをやりますよ!」

「貢献点は入ってるけど、気が早すぎポン」

「魔法少女はずいぶん金持ちなんだナー……」


 その発言に、巨大ハムスターのポン太は黒いつぶらな目を半目にして苦言を呈するが、それに対して紫の目を半目で固定したままの茶々子は、自分の赤い精霊スマホを取り出してガチャ画面を起動し始める。

 机に置かれて二本の足で立ち尽くす黒猫ぬいぐるみのネビロス改めネロは、自分の上司から授けられた語尾をなんとか使いながら、依頼直後な魔法少女がやろうとしている行動の金満さに赤い目を見開いて驚いている。


 貢献度ガチャは悪魔で言えば一日中、悪魔城の購買で働いて貰える悪魔点を一発で吹き飛ばす行為だ。


 精霊の扱う貢献点と、悪魔の扱う悪魔点は、紛争時の賠償ばいしょうを単純に済ませる為、物資に対する価値が同じになっていて、その副作用としてお互いに点の価値が分かりやすくなっている。


 精霊スマホのガチャ画面を起動した茶々子は、ガチャ画面をスクロールして目を付けていたガチャをポン太達に見せた。


「今度はSR(スーパーレア)以上確定なこのガチャで当てちゃいますよ~!」

「これは……UR(ウルトラレア)の確率が10%になってるポン」

「高額なガチャだナー!?」


 茶々子の見せたガチャはSR(スーパーレア)以上確定ガチャで、R(レア)が排除されている代わりにSR(スーパーレア)が90%でUR(ウルトラレア)は10%になっている貢献度ガチャだ。


 当然そんなガチャが普通に回せるはずもなく必要な貢献点が十倍になっており、このガチャを回すためには千貢献点が必要。


「今回の《《執行任務》》は何点もらえましたか?」

「悪魔の拠点撃破は一律いちりつ四万点の所、現世での緊急だったから五割増の六万点と、そこのネビロス……ネロの教育費に千点がもう振り込まれてるポン」

「ガチャが六十一回出来ちゃいますね……!」


 茶々子がガチャる前に回す回数を決めるために、今回得た貢献点を確認すればポン太が紫の担当用精霊スマホを取り出して貢献点の残高とその内訳を教えてあげる。


 それを聞いた茶々子は今回得た貢献点をほとんど全部使って回す気だ!


「十連を三回でやめておいて半分は貯金するポン」

「その次で当たるかもしれないです」

「今日は二回も行ったけど、拠点撃破の依頼なんて滅多めったに来るものじゃないポン。貯金しておいた方が良いポン」

「むぅ、仕方がありませんね」


 ポン太の説得によって、半分は貯金する事にした茶々子だが三万点は一気に使うようだ。


 机の上にいる黒猫ぬいぐるみのネロは、上側の両角から小さなコウモリ羽の生えたスマホを持ってひざいた。

 悪魔側にも精霊スマホの代わりに悪魔スマホがあり、ネロはそれで自分の資産を確認していたみたいだが赤い目から滂沱ぼうだの涙を流して放心している。


「俺の最強要塞跡地が、もう売られてるナー……」

「それならば支払いがとどこおることはなさそうだポン」

「私の毎日ガチャ十連無料が確定したんですね!」


 素早い資産売却を悲しむ新米精霊にその教導役のコンビは、教導に対する報酬の支払いが履行りこうされることを確信した。協定を破ったのが悪いので同情はしない。


「さて……。今日こそは当てちゃいますよ~!」

「一回和牛ステーキ五枚だポン。それを十連だから精霊城のサービスで海外旅行だって行けるポン」


 ポン太の誘惑を振り切った茶々子は、力の入った指先を十回ガチャるのボタンに合わせてタップすると、特に何の演出も無く赤色のSR(スーパーレア)以上確定貢献度ガチャの画像から赤色のSR(スーパーレア)カプセルが十個流れていく。


「……」

「何か言うポン」

「あと二回……」


 その結果に一瞬固まっていた茶々子だったが、ポン太の言葉に気を取り直して再びの十回ガチャるをタップした。

 先ほどと同じく赤いままのガチャマシンの画像が赤いSR(スーパーレア)カプセルを十個吐き出す。


 むきになった茶々子がもう一度十回ガチャるを押すが、また同じ画像が流れて茶々子の三万貢献点は全て赤いSR(スーパーレア)カプセルに変換された。


無残むざんな結果に現実逃避を始める茶々子。


「あれ? 間違えたかな? このガチャってSR(スーパーレア)確定ガチャだったのです?」

UR(ウルトラレア)は10%になってるから間違いは無いはずポン」

「凄い勢いで散財したナー。人の不幸で元気づけられるナー」


 凄惨せいさんな結果にうつろな紫の目でガチャ画面を見つめる茶々子へ、自分でも確認したポン太は貢献度ガチャの表示確率が正しいことを伝えて、完全に他人事であるネロは人の不幸によって悲しみから立ち直り、やれやれとでも言うように両手を持ち上げて笑っている。


 スマホを片手に固まっている茶々子へ、建設的な提案をするポン太。


「SRでも今使ってる貢献度ガチャ装備に重ねれば無駄じゃないポン。それだけ引いたならいくつかは使ってる装備と同じモノがあるに違いないポン」


 貢献度ガチャの目玉はなにもUR(ウルトラレア)のみでは無い。SR(スーパーレア)に設定されている装備もまた有用な効果を持っていて、茶々子のマントや手袋もパワー系と呼ばれる装備であり、一カ所につき筋力パワーを50%加算強化する強力な効果を持つ。


 魔法の物品であるので被った装備は効果を重ねることが出来て、一度重ねるごとに一割増し程度だが効果が強化されていく。

 茶々子は数多の爆死を繰り返しているので、大量に手に入れた茶々子にとってのハズレであるSR(スーパーレア)によって凄い筋力パワーを獲得しているのだ。


 割増しにされるのは、悪魔との戦いで成長した魔法少女としての筋力なのでかなり強力。


 このパワー系装備は、空からの急降下で槍を取り落とさなかったり、全身鎧を着てもケロリとしていたりと茶々子の戦術を支えている装備であったりする。


 ポン太の提案に気を取り直した茶々子は、赤い自分用の精霊スマホで確認して、何個か出ていた被り装備を精霊スマホの獲得景品一覧から取り出した。


「二つのパワーマントと、三つのパワーグローブがありました!」

「結構出たポン。もう+いくつになるポン?」

「これでマントは+25ですね。グローブはまだ+15です」


 +はその装備を重ねた回数の事で、色々と合わせて四倍のパワーを茶々子に与える事になる。

 茶々子が手渡した装備を受け取ったポン太は、紫の担当用精霊スマホに収納することで装備を重ねた。


 担当用のスマホには変身時の装備も収められていて、同じ装備を放り込めば自動で重ねてくれる便利な仕様になっているのだ。


 目的の身長+一センチは出なかったが戦力的には強化された茶々子。


 身長のために順調に苦行を積んでいる彼女は、はからずも効率的に強くなってしまっている……!

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