第60話 ガチャと少しの公共性の為に戦え!
コンビニの自動ドアが開くと、茶々子とレナの同室二人組が出てきた。
二人は探索者学園の制服を着ており、学校帰りのようだ。
「ちょっと品薄気味です」
「最近は物騒だからな。仕方ないさ」
探索者学園は広大な敷地に建てられた学園である。
ダンジョンが存在するので、間違っても魔物等を逃がさないように周囲を防壁で囲まれた陸の孤島だ。
しかし、広い敷地内に何もないのは非常に不便なため、こういったチェーン店は一通り揃っていたりする。
こういった場所でのアルバイトは常に戦う気はないエンジョイ勢からの人気が高い。
どちらかといえばガチ勢である二人は単純に買い物に来ただけらしく、コンビニのロゴが印刷されたビニール袋をそれぞれ持っている。浮かない表情をしているので、お目当ての品は手に入らなかったようだ。
「むむ?」
「おっ?」
そんな二人の行く手をレナの《《最近は物騒》》という言葉の原因が阻んだ。
それは一昔前の不良みたいな格好をしたマネキンであった。
金色のリーゼントは真っ白な顔面に陰を作り、威圧感を醸し出している。
真っ白な特攻服には「夜露死苦」や「天下一」等のありがちな刺繍が施されており、いかにもといった感じである。
こういった悪魔はあり方を人々の想像力に依存している。
ゆえに量販店で発生した後、不良のたまり場というイメージからコンビニ前に来てしまったと思われる。
「すっぞオラ! オラオラ!」
威嚇する不良マネキンは、目も無いくせにガンを付けながら二人に迫る。
「ラッキーです! 人が集まる前にやっつけちゃいましょう!」
「仕方ねぇな。ちと勿体ないが、逃げるほどの相手じゃないか」
丸腰であるにも関わらず殺る気満々の茶々子は、紫の半目を輝かせてビニール袋を放り投げた。手のひらを向ける様子は手慣れており、スキル発動の準備万端である。
仲間の様子に息を吐いたレナは、中腰になりつつビニール袋を地面に置いた。
青い目を細めて相手を見定めた彼女は、背負っている竹刀袋を握りしめる。
続く宣言で竹刀袋は――炎上した。
「『炎剣衝波』《ヒートウェーブ》! せい!」
「すっぞ!?」
燃える竹刀袋が振り下ろされると、燃えさかる熱波が剣閃となって襲いかかる!
不意打ち気味の攻撃を受けた不良マネキンは炎上。自慢のリーゼントは燃え上がり、特攻服にもドデカい勲章が付けられた。
しかし、あまり大きなダメージを与えられていないのか、炎上しているマネキンはピンピンしている。
『炎剣衝波』《ヒートウェーブ》はレナの習得した新スキルだ。
装備の劣化と引き換えに熱波を放つ遠距離攻撃である。
その威力は装備の強度に比例するのだが……。
レナが握っている竹刀袋が燃え尽きると、残ったのは黒焦げの竹刀。
どうやら竹刀では強度不足だったらしい。
「チッ! 一本くらい剣を持ち出しておけば良かったぜ」
レナはボロボロと崩れ落ちる竹刀を投げ捨てながら舌打ちする。
そんな彼女へ炎上マネキンは怒りの叫び声を上げながらタックルを仕掛けてきた。
「オラオラオラ!!」
「『聖なる血』です!」
「オッラ!?」
そのタックルに合わせるようにスキルを発動したのは茶々子だ。
彼女の宣言と共に現れたドリンクサーバーは、炎上するマネキンに衝突しようとビクともしない。
突然の衝撃に炎上マネキンが頭を振っていると、突然現れた箱型ドローンに突き飛ばされた。
「来たか!」
「コンビニ店員さんが通報してくれたみたいです」
箱型ドローンは二人の前に無理矢理着陸して、箱のフタを開放する。
箱の中に入っていたのは所狭しと詰め込まれた剣。
通報で状況を把握した探索者学園からの緊急支給である。
ダンジョン周辺や特徴的な場所には想像力が集まる。
そういった想像力が集まる場所では、悪魔化が発生しやすいことが分かっている為、探索者学園は緊急時の即応体制が整っているのだ。
箱から剣を抜いた二人は、尻餅をついているマネキンに対してニヤリと笑った。
「竹刀代を回収しないとな!」
「今から楽しみです!」
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不良マネキンの悪魔を撃破した茶々子とレナの二人は、ダンジョン棟二階にある購買部に来ていた。
購買部の隅に設置された。とある施設に用があるからである。
「今日こそは当てます!」
「気合い十分だな。まぁ、目の前にニンジンがぶら下がってれば当然か」
レナがチラリと見た先で、『身長+一センチ』と大きく書かれた券が額縁に飾られている。
ここには他にも剣やアクセサリーなどの品が頑丈そうなショーケースに飾られており、まるで博物館のような風情だ。
この場所はダンジョンから持ち出されて探索者学園に売られたガチャ景品の一時保管場所である。
同時に成績優秀者等への特別報酬として、一時保管品を景品にしたガチャも行われているのだ。
報酬なのにガチャなのは、ダンジョンと合わせてのことである。
――一時保管ゆえに保管の期間が過ぎれば、手に届かなくなるということだ。
気合いに燃える茶々子は画面に当選景品が表示されるタイプのデジタル式ガチャマシンに特別報酬引き換え用のコインを投入した。
彼女の目の前で景品表示画面が光り輝く!!!




