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第57話 ガチャと少しの協力味の為に戦え!(2)

 迫り来るハープーンの青い刃を空いている片手で受け止めたチャコは、もう片手で操る巨大なむちの上を走ることで助走を付けて飛び上がった。


 飛び上がった先にあるのは、突然の自爆に対して大きな隙を見せている白い十字だ。


「毎回飛んでくるのは心臓に悪いですからね……。こうしちゃいます!」

『レア景品が不良品とは、後で作成者に抗議しておくポン』


 滞空中、持ち主から勝手に逃げようとするハープーンを腕力で無理矢理押さえつけた茶々子。

 彼女は瞬く間に十字の内一つに接敵すると、ハープーンを振りかぶり――そのまま柄で敵をぶん殴った。


 彼女の馬鹿力で殴られた十字は実体の無い雲だったかのように爆散する。


上位光学つらぬくひか「いらっしゃいませーなのです!」

『肉体言語ポン……』


 最後の十字はチャコを脅威と認定して術式を浴びせようとしたが……。

 海中から飛び出した鞭の先端に突き飛ばされてチャコの前に押し込まれたあげく、刃先を握りしめたままな彼女の拳と鞭の先端とでサンドイッチされて爆散した。


 パラパラと白い十字架の残骸が海へと降り注ぐ中、今度は鞭の先端に乗ったチャコが通り過ぎていく。


『流石ですね簒奪さんだつさん。掃討お疲れ様でした』

「それほどでもないです」


 【レヴィアタン】の特性により無傷なチャコは、初手の自爆をスルーしてくれた鬼謀きぼうさんの優しさに内心で感謝しつつ、海上を高速で進んでいく。


 更に強く握られたハープーンの刃は哀れにも指の形にヘコんでしまっている。


 少しすると、輝く海の水平線に巨大な影が見えてきた。

 海上にそびえ立つは白亜の城壁。痛々しくも上部を失ったその姿は、チャコ(魔法少女)にとってもポン太(精霊)にとっても懐かしい存在であった。


 失われたはずの精霊城だ。


 そんな懐かしい場所(精霊城)は下側から生えた黒い尖塔(悪魔城)で自立しており、周囲に先ほどチャコが蹴散らした白い十字架を無数に侍らしている。

 精霊城と悪魔城の接合部には、いくつもの顔が並んでおり、全方位を(にら)む。

 タロスは精霊城を囲っていたはずな外壁を腕のように振り回し、どうやら何かと争っているようだ。外壁はまるで激しい攻撃を受けたかのようにボロボロになっている。

 


『あの巨人は仮称タロス。異空間の狭間に消えた精霊城の残骸が有り余る想像力で動き出した存在です。これ以上機能を取り戻す前に先行している執行官エクスキューショナー達と連携して撃破してください』

「無くなったはずの精霊城が勝手に動いているのです!?」

『なるほどポン。あっアスタロトも居るポン』


 ポン太が指さす先を見れば緑髪の少女悪魔、アスタロトが小型の龍を駆りタロスへ突撃している所だった。

 激しい迎撃を回避した彼女はタロスの上を通過しながら何やら細かい物を振り撒いた。

 すると、ズタボロな城壁から幾つもの巨大なツタが勢いよく生えてきて、タロスの全身を締め上げていく。


「ガアアアアアア!」


 上空でその様子を満足気に眺めていたアスタロトは、自らを拘束するツタを外壁ごと振り払ったタロスの放つ怒りの咆哮に耳を押さえながらチャコの近くへ退散してきた。


「また会ったわねチャコと……ポン太。うるっさい奴よねぇ。困っちゃうわ」

「手こずっているみたいですね。お城が動き出すなんて、かなりの大物です」

『周囲を飛んでいる白いのも邪魔ポン』


 アスタロトが下がった後、周辺から色とりどりの閃光がタロスに集中するが、チャコの感想の通りに大したダメージを与えられていない。現世で許された上位の術式程度で相手をするには的が大きすぎるようだ。

 近接攻撃を仕掛けようにも、タロスの周囲に展開している白い十字に接近を阻止されてしまっている。


「白い奴は精霊城の防衛機能が起動しているの。やり辛いったら無いわ」

「精霊城の……? あの日には、あんなの全く見なかったのですが……」

『思い出したポン。アレはベルフェゴールが設計した防衛設備だから、奴に無効化されていたんだと思うポン』

「ダメダメなのです……」

「ダメダメねぇ……」


 空中で膝を叩いてすっきりした顔のポン太に対し、チャコとアスタロトの二人はジト目を向ける。


「また会ったな。簒奪さんだつさんと……アスタロトか」


 そんな彼らの元に飛んできたのは、潮風で燃えるような赤毛のショートヘアを逆立てつつ逆境にも勝ち気な赤い瞳を輝かせた少女、灼熱さんだ。以前ガチャで当てた飛行マントの扱いには既に慣れているらしく、危なげなく飛んでいる。

 彼女は挨拶もそこそこに、赤い宝石が先端についた杖で自分の肩を叩きながら二人を誘う。


「デカブツに一発食らわせたいんだが、二人とも手伝ってくれないか?」

「久しぶりです。灼熱さん。お安い御用なのです」

「良いわよ。何時までも潮風を浴びているのも嫌だし」

「封じ込め続けるのにも限界がありますね。微力ながら私も手伝いましょう」


 そんな誘いに無敵なチャコは気軽な様子で、アスタロトは自分の髪に触れて溜息を吐きながら、更にはどこからか現れた金髪碧眼の少女、鬼謀きぼうさんも乗った。鬼謀さんは自分の出した魔法盾の上に乗り飛んでいる。


 無敵の守りを誇るチャコを先頭にして突撃を開始した一行。

 彼女たちは鬼謀さんが複数展開している盾で白十字の放ってくる閃光を凌ぎつつ、タロスとの距離を詰めていく。


 攻撃は近づけば近づくほど激しくなる。

 しかし先頭を行くチャコには全く効いていない。

 意味も無くぶんぶん振られているハープーンは少し焦げてしまっているが、主に反逆する装備には良いお灸である。


「ギャガアアアア!」


 近づいてきたチャコ達に対してタロスも黙ってはいない。

 激しい攻撃にボロくはなっているものの、城壁そのものである巨大な両腕を振りかぶり、叩き潰してやると金属をすりあわせたような咆哮ほうこうを上げる。


「むむ……。危ない攻撃が来ます」

「進むのに集中して大丈夫よ。仕込みは済ませてあるの」


 巨大な攻撃範囲を想定したチャコが仲間を守るために巨大(むち)の動かし方を防御軌道に変えようとすれば、彼女のすぐ近くを飛行していたアスタロトが声をかけて制止しつつ、ニンマリと笑いながら爪に青いマニキュアが塗られた華奢な指を鳴らす。


 その瞬間、振り上げられたタロスの両腕が爆発し、中から現れた巨大なツタ達が外壁を失い内装が丸見えになった城壁同士を巻き付けて強固につなぎ合わせてしまった。


 天高く掲げられた両手を縛り付けられた姿は、まるで処刑される寸前の罪人のようだ。


「【炎龍召喚!】焼き尽くせ! フレア!」

『承知した!』


 灼熱さんの叫びと共に、城のごとき巨体を縛られた罪人の前に、その巨体と匹敵する真紅の巨大魔法陣が展開されて、赤く紅く輝いた。


 どこからともなく耳に焦げ付くような声が聞こえてくる。

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