第55話 山盛りの魔石でガチャを回せ!(2)
敗者と粗大ごみの転がる石造りの玄室内にて。
茶々子と交代したチエは壁にレバーがついただけ――のように見えるガチャマシン前に立っている。
壁ガチャマシンに魔石を一気に投入した彼女は、両手を使ってガチャレバーを回転させていく。
「一気にいく」
「正しい選択ポン」
:まあ、妥当な判断。URでアレだと微妙だよね~
:アレって自分の想像力で発動しなきゃだしね。危ないし、ちょっとケチ……。
:もっと上の階層に期待といったところでありますなぁ。
その思い切った判断に対してポン太と視聴者から称賛や同意の声があがる中、壁に映し出されたスロット画面が回転を始めた。再びの演出である。
今度は動物の絵柄が揃ったところで止まってみたり、何も揃っていないところで止まってみたりと、止まる度にガチャカプセルが次々と飛び出してくるので少し危ない。オマケに飛んでくるカプセルをゴブリンが集めてしまうので、茶々子とチエのカプセルが混ざってしまっている。
「演出が来たけど……」
「後でまとめて売り払って、半分にすれば良いポン」
:げぇ、危ないね~。
:これでは拾うのが大変です。
:受け止めるためのカゴでも用意しておいた方が良いな。
その物理的に危ない演出を見ていたチエのつぶやきに、肩をすくめながらポン太が返していると、スロットに三つの星マークが並び、ポコンと空いた穴から赤いカプセルが勢いよく飛び出す。赤色はSRである。
危ないので茶々子とは違い無理して取らなかったチエは、広間をコロコロと転がる赤いカプセルを拾いに行った。飛距離はあまりないので踏まなければ安全である。
その間もガチャマシンは、相変わらずに次々と不揃いな絵柄で止まって白いカプセルを出したり、動物の絵柄が揃って黒色や青色のカプセルを吐き出したりしており、配慮の欠片も無い様子だ。
ガチャマシンの様子を無視したチエが拾い上げた赤いカプセルを開くと、中から出てきたのは平べったくて黒い箱だった。
明らかに魔法の品っぽく無いSRに微妙そうな目をした彼女は、黒い箱を二本の指でつまみぶら下げながら小首を傾ける。
「何コレ?」
「それは魔戦銃のバッテリーパックポン。良ければ、茶々子の予備として僕が定価で買い取るポン」
「ううん。お世話になったから、あげる」
「良い子ポン……。今後とも、こんな茶々子をよろしく頼むポン」
「うぅ、ポン太。コートが伸びるので引っ張るのはやめて欲しいのです」
金庫番のポン太はありがたい寄付に痛く感激したのか、いつまで経ってもいじけている茶々子の襟首を持ち上げて立たせると、ジト目で見つめる。
「うぐっ、……チエありがとうなのです」
その視線に耐えかねたらしい茶々子は自力で立ち上がり景品を差し出すチエと向き合うと、頬を掻きながらバッテリーパックを受け取って、探索者学校の白いコートに設けられたポケットの一つに収めた。
「同士に力を貸すのは当然。昨日と違って今日は中々運が良かった」
渡した後にむふんと腰に手を当てたチエと頬を叩いて気合いを入れ直した茶々子の二人は、顔を見合わせると清々しそうに笑った。
そんな二人とそれを見守るポン太の元に近づいてきたのはゴブリンだ。
そこら中に転がったカプセルを拾い集めてきた彼の背負いカゴは、色とりどりのカプセルでいっぱいになっている。
「……昨日の惨状と比べたら、どんな結果でも良くなると思うポン」
ガチャカプセルと術式爆弾をまとめて回収したポン太は手に持つ精霊スマホで現在時刻を確認すると、ピンクの前足を高々と掲げて撤収の号令をあげた。
「……さて、ちょうど区切りも良いしこのくらいで帰るポン。この階層は入り口に繋がっているから直接帰れるポン」
「第四階層はどうやっていくのです?」
その言葉に茶々子が疑問の声を上げると、精霊スマホをつついて何やら調べたらしいポン太が答える。
「この階層を突破したら、ダンジョン棟の二階に設置されている魔法陣の使用が許可されるらしいポン。そこから行ける階層が第四階層ということになるポン」
「なるほど、確かに何か言ってましたね。了解です」
「わかった」
号令を受けた茶々子達は粛々と転移の魔法陣に乗り込み、光と共に消えていった。




