第45話 ガチャと少しの人情味の為に学べ!【配信回】
薄暗い墓場の拓けた広場に存在する魔法陣が急に光り輝く。
現れたのは快進撃を続ける茶々子たちだ。
彼女たちの現れた広場は古風な黒いガス灯に照らされており、二階層の時とは違い周囲に人一人いない。
その事を不思議に思った茶々子たちが辺りを見回すと――
「イヤーッ!」
「ぅおっ!? どうしたミユ」
心配するレナにミユは緑の目を見開き見上げつつ、ゆっくりと指先を彼女達を照らすガス灯に向けた。
「ぅ……上……!」
「マジかよ……」
急な明るさの変化に目が追い付いていなかったレナも、ガス灯にテルテル坊主の様な姿で吊るされた見覚えのありすぎるモノが段々と見えてくると表情が引きつった。
吊るされていたテルテル坊主は、白いコートを着た三人の探索者学校生徒。
ガス灯で照らされた姿は、まるで見せしめとして処刑された罪人のようだ。
最悪の状況を想像して絶句する二人に、ポン太の持つ精霊スマホから山崎先生の声が掛けられる。
:二人とも安心しろ。気絶して吊り下げられているだけだ。
:基本的に精霊の目的は人間の想像力を集める事なので。当然ですね。
:ハードな展開におじさんも忘れていたけど、学校のダンジョンだったね。
:入り口前に居たってことは、彼らも例の爆走犯の被害者なのかな。
:ああ、安全対策は万全だ。コートの力で体に大した負荷はかからない。
:その代わり、常に想像力を消耗するからな……。良ければ降ろしてやってくれ。
「お安い御用ポン」
山崎先生のお願いを受け、ピンクの前足に光り輝くハサミを具現化したポン太は、ぐったりとした三人の哀れなる犠牲者達を吊り下げる縄を断ち切っていく。
#####
「本当にありがとう! あんな状態でも意識はあったから辛かったんだ……!」
「こちらこそ、素晴らしい情報に感謝しないと、かな」
救助された三人は揃って頭を下げると、出待ちの猫又集団が居なくなった二階層へ帰っていく。
彼らが休んでいる間に、三階層でも前の階層と同じパターンで情報を得ることに成功したサキは、帰っていく三人をホクホク顔で見送った。
「それにしても。迷いそうで嫌な階層だな。ガス灯以外に大した目印が無いなんて」
「僕としては、力尽きると敵に吊るされるって情報が衝撃的だったかな」
両腕を組み赤い前髪を整えながら三階層への文句を言っていたレナは、犠牲者達の刑執行がモンスター達の手で行われていたことに苦笑いを浮かべるサキと同調した。
「だよな。まあ、放置してたらゾンビ戦法がやれちまうから、クニクのサクってヤツなのかもなぁ」
そんなレナの考えをポン太の持つ精霊スマホからの声が補足する。
:それもあるが、他にも無茶をする生徒を抑制する為の安全弁でもある。
:安全弁?
:放置するわけにもいかんのでな。教員がダンジョンの閉鎖時間後に救助する訳だが……。
:練習で無茶をする子は、本番でも無茶するわ。成果を求める子に効くのは、ペナルティね?
:そうだ。救助された者は一日の間、ダンジョンへの入場を禁止する事になる。
「それは困りますね。慎重にいくのです」
「閉鎖時間まで吊られたままで待つなんて絶対に辛いよぉ!」
そのペナルティに表情を険しくした茶々子。
彼女の目的は激レア景品である身長+一センチを当てることなので、そんな時間の無駄は許容出来ないのだ。
ミユは救助が来るまでの辛さを思い、茶々子と共に表情を険しくして周囲の警戒を始めた。
「ああ! 居たよ! 歩く羊頭!」
「頭だけですが、悪魔そっくりなのです。」
その甲斐もあってか、素早く発見された三階層の敵は茶々子の言う通り、悪魔そっくりな山羊の頭部に手足の生えた怪しげなモンスター。
薄暗い中、まばらに建てられた墓の間をねり歩く姿は、その怪しさを倍増させている。
「作戦通りにいこう。『攻勢令』! ゴブリン突撃!」
「ゴブゥ!」「ナァゴ!」
サキの号令により赤く輝いたゴブニャンライダーは、眼にも止まらぬスピードで首悪魔へ突撃する!
赤い輝きに気がついた敵は両手を前に突き出すと、ゴブニャンライダーに迎撃の火球を放った。
首悪魔は炎の魔法を使ってくるのだ!
その威力は術式の様に可燃物が無くても燃え盛るほどではないが、単純に飛んでくる炎というものは恐怖心を煽る。
しかし、突撃しているのは茶々子の魔戦銃の一閃を見たことのあるゴブリンだ。
あれに比べれば容易いと、乗騎の首の皮を引っ張ることで指示を伝えて火球を回避し、背負い籠に放り込んでいた棍棒をすれ違いの抜き打ちで叩きつける。
かわされた火球は墓石に直撃し、炎の華を供えた。
格下に打たれたことで怒り心頭といった様子の首悪魔は、通り過ぎたゴブニャンライダーを追いかけるように向きを変えて両手を突き出し、その背中に刃を突き刺された。
「囮作戦成功です!」
「ちぇりゃあああ! 頑丈だな。『強斬撃』・胴!」
茶々子の不意打ちに対応しようとした首悪魔は、続く大剣を構えたレナの連撃からの、胴と言いながらも姿形のせいで頭を両断する一撃に、青いモヤを吹き出して消えていく。
赤く輝く二人の足元には、青い石が残された。
フッと赤の光が消える。
「ガス灯を辿っていけば、次の階層への魔法陣があるという話だったかな」
「道は遠いねぇ。行こう。ゴブリン君」
「ゴブ!」
石を拾った茶々子の周りに集まってきた仲間たち、サキは道順を再確認し、ミユは何故か装備している麦わら帽子の縁を抑え、点在するガス灯の光を睨んだ。
「サクサク行こうぜ!」
「ガチャが待っているのです」
大剣を背に戻し、お気楽そうに進むレナに、ペナルティの危険よりガチャを取った茶々子も剣を腰の鞘に収めてついていく。
薄暗い墓場を点々と照らす古風なガス灯達だけが、この先にあるものを知っている。




