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第44話 鬼乗り猫と一緒にガチャを回せ!

 モンスターだまりを撃破した校庭で、茶々子たちはカードで召喚された猫又と向き合っていた。


 その猫又は丸々と太っており、デブ猫という言葉がふさわしい姿をしている。


 自分が召喚したデブ猫に目を輝かせたミユは、でようと手を差し出した。


「かわいい~!」

「ンナ」


 しかし、素早く立ち上がったデブ猫は、差し出されたミユの手のひらをソフトタッチの肉球でインターセプトしてしまった。


「えっ、ええっ? なんでぇ~」

「……ンナ、ウニャ」


 諦めないミユが両手で攻略にかかるも、デブ猫は両前足で鉄壁ガードだ。


 その様子を見ていた茶々子とレナは、顔を見合わせた。


「触られるのが嫌っぽいなあのデブ猫」

「肉球をミユに向けて断固拒否の構えなのです」


 しばらくデブ猫とたわむれようと頑張っていたミユだったが、戦闘の疲れもあり残念そうに諦めた。


 するとデブ猫の方も毛玉の様な香箱座りをしつつ、要注意対象となってしまったのかミユの動きを横目で監視している。


 #####


 校庭に描かれたマラソントラックの中心には、場違いな祭壇があり、三階層への薄く光る魔法陣と青色の魔石ガチャが設置されている。


 そこへ集まる茶々子たちの目的は、もちろん魔石ガチャ。


 一階層のリベンジマッチに燃える彼女たちは、前回と同じく一人二個ずつの魔石を持っている。


「戦列順に回しましょうか。気合を入れて行くのです!」

「いいぞ!」

「おぉ~!」


 茶々子の提案に先ほどから上の空なサキ以外から、元気な返事が返ってくる。


 最前列を歩いていた茶々子が、慣れた手つきで魔石を青色のガチャマシンに投入すると、ゆっくりと回転させていく。


 しかし、一階層の時の様な演出は起こらず、黒色のカプセルと白色のカプセルが一個ずつ飛び出してきた。


 その結果にちょっと残念そうにしつつも二人に場所を譲った茶々子は、祭壇の縁でまだ考え込んでいるサキの元へ行き隣に座ると、なんとなく白色のカプセルを開けてみた。


 カプセルは光り輝きながら消え、茶々子の手には小ぶりな背負い籠が残される。


「わっ! もうガチャをしていたのかな?」

「どうしたのですサキ。ダンジョン内で集中力を切らすのは感心しませんよ?」


 その光に驚いたサキが目を見開いて反応すると、いつもの半目になった茶々子がハズレ景品を手渡しながら、一階層で暴走した自分の事を棚に上げて注意する。


 それを受け取ったサキが月のように金色に輝く目を半月にしながらもてあそんでいると、その様子が気になったのかデブ猫に乗ったゴブリンが近づいて来た。


 猫は背中の毛皮をくらのような形に変化させており、乗騎としての体裁を整えている。


 召喚された者同士で気が合うのか妙に仲の良い二匹は、息の合った様子で正に猫鬼一体ニャンきいったいだ。


 背負い籠を物欲しそうに見つめる猫上のゴブリン。


「何でも欲しがりますね。お前は」

「あげても良いかな?」

「構わないのです」

「ゴブゴブゥ!」「ナナ」


 持ち主の了解を得たサキは、ゴブニャンライダーとなったゴブリンに背負い籠を背負わせてあげる。


 するとゴブリンは手に持っていた棍棒二本を放り込み、空いた手でデブ猫の首の皮をつかんだ。


「ゴッブゴッブ!」

「ンナナーゴ!」


 新たな装備により先ほどの戦闘での疲れが吹き飛んだのか、ゴブニャンライダーはデブ猫をり校庭のトラックを爆走し始める。


 どうやら見た目とは違い中々に俊敏しゅんびんらしいデブ猫は、ゴブリンの重さなど感じていないかのようにトラックをけ回っている。


 そんな様子を見て笑っている二人に、何かを抱えたレナと麦わら帽子をかぶったミユが近づいてきた。


「私には触らせてもくれなかったのにぃ……。ゴブリン君が羨ましいよぅ」

「あっはっは。あいつらの相性が良かったんだろ」


 仲良さげな二匹の様子を見て、ハンカチにみつきながら嫉妬しっとの炎を燃やすミユ。

 このハンカチと麦わら帽子にはラベルが付いており、どうやら新品がガチャ景品としてコピーされたモノらしい。


 二階層の魔石は一つ二千円なので高い買い物だ。


 その様子を大笑いしたレナの腰には、新たな二本の鞘が差し込まれている。


「僕も回すとするかな」


 明暗の別れた二人のガチャ結果を確認したサキも魔石を握りガチャりに向かった。


「そろそろ、私も例のスキルを使ってみますか」

「制限スキルだっけ。大丈夫なの?」

「ポン太に動画を撮ってもらっていれば大丈夫なのです」


 手持無沙汰てもちぶさたとなった茶々子が腕まくりをしながら、彼女が遅れる原因となったスキルを使おうとすれば、一緒に暇している二人も興味深げにその様子を見物し始める。


「『聖なる血』です!」

「ドリンクサーバー、だな。うわっ、ノンアルとか書いてあるぞコレ」


 茶々子の宣言により現れたグラスのセットされたドリンクサーバー。それに存在する二つのボタンに突っ込みを入れたレナは、額に手を当ててダメだった理由を理解する。


「お酒が出ちゃうのがダメだったみたいなのです」

「そうなんだ?」


 感心したような表情のミユを横目に、ポン太が確実に撮影していることを確認した茶々子は、ゆっくりとノンアルでガチャると書かれたボタンを押し込んだ。


 ボタン周辺に並んでいる文字が次々と点滅していき、最後に光ったのは『ラース』と書かれた場所。


 すると、燃え盛るように赤い液体がグラスへ注ぎこまれ、濃いブドウの香りが周囲に広がった。


「ふ~ん? これって茶々子が一階層で飲んでいた飲み物だよな」

「その通り。アブナイ奴なのです。もう一発『聖なる血』!」


 グラスをひょいと持ち上げ、怪しげな薬を見るような目で『ラース』を見つめるレナ。

 そんな彼女を他所に腕をグルグルと回して体の調子を確かめた茶々子は、行けそうだと連続でのスキル使用に踏み切った。


 ドリンクサーバー内に現れる新たなグラス。


 再びのノンアル聖なる血ガチャで光った場所には『エンヴィー』と書かれており、現れたグラスに緑色の液体が注ぎ込まれると、周囲に爽やかなマスカットの香りが広がる。


「香りは良いのですが、これも変な効果が有りそうな……」

「僕の出番かな? 基本スキルはある程度習得しているんだ」


 そのグラスを手に取り緑の液体を揺らしながら悩む茶々子へ、ガチャを終えたらしいサキが縄と石板を片手に戻ってきた。


「よろしくです」

「お安い御用さ。『物質鑑定』……これは集中力を増す代わり、一つの物事に固執させる飲み物……かな」


 頼もしい仲間の言葉に『エンヴィー』を差し出した茶々子は、サキから語られる効果を聞いて「またデメリット付きか」と渋い顔になる。


「いい絵が撮れてるポン」


 ポン太はその表情を至近距離で撮影しながら、茶々子の持つ『エンヴィー』を精霊スマホのストレージ機能で片づけた。


 いつの間にかレナも手ぶらになっているので、持ち運びにくい飲み物類はポン太が運んでくれるらしい。


「そんじゃ。次の階層に行ってみるか!」

「賛成です!」


 武器を手に入れてもまだまだ満足しないらしいレナと、目的の為なら努力を惜しまない茶々子は、三階層への魔法陣に踏み込んでいく。


「待ってよぉ〜」

「コレ、どこの文字なのかな……」


 大きめな麦わら帽子の調節ヒモを引っ張り頭に固定したミユは、石版に夢中なサキの手を引きながら、慌てて二人の後を追う。

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