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第41話 ゴブリンと一緒にガチャを回せ!【配信回】

 レナから差し出された手にメイスを持っていない方の手を戸惑いがちに伸ばしたミユは、しょんぼりした顔をして自分のミスを謝る。


「迷惑かけてごめんね。レナちゃん。うまく出来なかったよ」

「あんまり気にすんなミユ。仲間同士で助け合うのは当然だぞ!」


 その謝罪をウィンクして軽く流したレナは伸ばされた手をしっかりと掴むと、一声かけてからぐいと引っ張ることでミユを立ち上がらせる。


「立てるか?」

「うん。もう大丈夫だよ」


 二人の足元で青いモヤを出していた小鬼の残骸が消えていき、後には魔石ではなく一枚の白いカードと余計に持っていた棍棒が残された。


 青い目を輝かせて興味深そうにカードを拾ったレナは小首をかしげながら、それに書かれていた文字を読み上げる。


「なんだろこれ? ゴブリン?」

「それは小鬼の別名だね。そのカードは……!」


 レナの疑問に素早く返答したサキは、カードを目にすると黄色い目を大きく見開きおどろいた。


 ポン太の持つ動画配信中の精霊スマホから、茶々子のダンジョン探索許可の為に視聴してくれている山崎先生とオマケの視聴者である魔法少女の声が聞こえてくる。



:そいつは……。モンスターカードだ。初日で手に入れるとは運が良いな。

:あれが噂のモンスターカード! ところでモンスターカードって何?

:使うつもりで名前を叫ぶと味方としてモンスターが召喚・送還されるカードだ。



 それを聞いて良いことを思いついたような顔をしたレナは、ゴブリン・カードを掲げて叫ぶ。


「来おおい! ゴブリィーン!」

「ええ!? 召喚しちゃうの!? まだ、心の、準備がぁっ!」

「変にトラウマになる前に慣れちまえ! 敵も待ってくれないしな!」


 レナの突拍子もない行動に、口元を押さえて緑の目を見開き慌てたミユが、盾の固定された手を抱きしめるようにして防御態勢をとる。


 カードが光り輝くと、そこには小鬼と違い白目のある目を持つ緑の小人が立っていた。


「ゴブブゴブ」

「何言っているのかわかんね。とりあえず、そこに落ちている棍棒を拾えるか?」

「ゴブ」


 レナを見上げて謎の言語を発したゴブリンだが、こちらから言葉を伝える分には伝わるらしく素直に落ちている棍棒を拾い、元々持っていた棍棒と合わせて小鬼としておそい掛かっていた時の双棍棒スタイルとなった。


 味方として召喚されると聞いていても、記憶に新しい姿を見たミユは盾に隠れるようにゴブリンと向かい合う。


 彼女は少々、小鬼に対して苦手意識を持ってしまった様だ。


 しかし、ミユの盾は大盾と言う訳では無く、腕に固定するタイプの小盾なので全然隠れることが出来ていない。


 ミユの謎行動に呼び出されたばかりのゴブリンも無い眉を寄せて困っている。


「ハッ! 私は何を……? どういった状況なのです?」

「実はミユが戦闘で失敗してね。ショック療法って奴……かな?」

「どこかケガをしたのですか!? すぐに治してあげます! 【いやしの手】です!」

「ゴブゥ!?」


 そんな状況で【ラース】の副作用から復帰した茶々子は、ミユが盾を文字通り盾にして妙な小鬼と向き合っている事に困惑すると、サキの状況説明を聞いて驚き困っているゴブリンをり飛ばしながら、スキル名を叫び辛そうなミユの手足をペタペタと触った。


 すると、石畳ですりむいていたひざがみるみるうちに回復していく。


 ミユは目まぐるしく変わる状況に目を白黒とさせながらも、飛んできて癒してくれた茶々子に礼を言う。茶々子の蹴りで地面に横たわるゴブリンを心配しているので、以外と余裕があるらしい。


「えぇ!? あ、ありがとう茶々子ちゃん。でもゴブリン君の方が重症だよぉ」


 成り行きを見守っていた仲間たちは茶々子の乱入に苦笑いを浮かべつつ、今度は茶々子のスキルについて各々の考えを話したり、ポケットから消毒液を取り出して振って見せたりしている。初回の探索なのでお互いの能力を理解するのも大切なのだ。


「慣れるのが早いなぁミユ。ほー、茶々子のスキルは包帯要らずだし便利だな」

化膿かのうしたりすると困るから、今度からは傷口を消毒してから使ってもらおうかな」



:気になったんだけどさ。どうして緑の子はあんなに疲れちゃったの?

:体調不良なら休んだ方が良いとおじさんは思うよ。体が資本だし。

:精霊の話だとスキルは想像力と呼ばれるモノを使って発動するのだが。

:想像力とやらは行動する気力だとかも含むようでな。

:使いすぎると気力を使い果たして立っていられなくなる。

;へぇ、そのあたりは魔法少女と似ているね。ふぅん。



 ミユの事を心配する声に山崎先生の声が先ほど彼女がふらついた理由を教えている間に、準備を整えて再び進み始めた茶々子たち。


 今度は先頭に棍棒二刀流ゴブリンを歩かせている。


「行けぇ! ゴブリン。骨は拾ってやるから!」

「ゴ、ゴブ」

「レナちゃん。かわいそうだよ」


 肉壁扱いのゴブリンの事が気になったミユがレナに進言すると、ゴブリンが救い主を見たように目を輝かせて彼女の事を見上げる。


「やられても治してあげるから、安心して戦うのです」

「……」

「ひどくなった気がするよぉ」


 しかし茶々子の親切心からの言葉により、今度は再生可能肉壁にジョブチェンジしてしまったので、この世に神は居ないとひざを地についてなげいた。


「いざとなったら僕も指揮で援護するから、大丈夫なんじゃないかな」

「ゴブ……」

「不思議ポン。このモンスター、微小だけど魂を持っているみたいポン」


 最後にサキのはげましを受けて不安そうに歩き始めた再生可能強化肉壁ゴブリンを見たポン太が呟くと、そのピンクの手に持つスマホの謎機能により視聴者たちからの返答が読み上げられる。



:魂? ダンジョンのモンスターって制作物じゃなかったっけ? 魂も作れるの?

:魂の制作ですか。まるで神様みたいですね。

:こんな場所を管理し、モンスターを作り出す時点で神の様なものだと思うが。

:カードで召喚されるモンスターは不思議な挙動をすることが確認されている。



 山崎先生の言葉に全員から視線を向けられたゴブリンは、照れたようにその緑色の頭部からちょっぴり飛び出た角を棍棒を持った手でポリポリとひっかくと、広い通路を歩き始めた。


#####


 しばらくゴブリンを先頭に何事もなく進めば、元々広かった通路が更に広がり大部屋と言っても過言ではない場所に出た。


「ここが一階層の最奥かな、魔石ガチャと二階層への魔法陣があるはず、なんだけど……。」

「おいおい。えらいことになってるな」


 百メートル近い広さの巨大な空間は、何らかの照明の様なものが設置されており、明るく照らされている。


 照らし出された異様な光景を見て、茶々子達は立ち尽くした。


「ゴッブゴブ……」

「ふむ……」

「うわぁ……」

「いっぱい居るじゃねぇか!」

「こんな事は情報に無かったかな……」


 その光景に後ずさりしたゴブリンはすがるような目で茶々子達を見上げ、本当に突撃しなきゃダメか再確認をしてくる。


 その光景から原因を推測した山崎先生の苦々しい声が、ポン太の持つ精霊スマホの謎機能により聞こえてきた。



:これは、誰かが次の階層まで敵を無視して駆け抜けたな。注意喚起(かんき)せねば。

:武器をポイ捨てしたり敵を集めたり。マナーの悪い奴が居るのでありますな。

:良くある。良くある。人間だもの。



 大部屋には五匹もの小鬼たちがウロウロしており、ゴブリンが突っ込んでいっても多勢に無勢で袋叩きにされるのが確信できる光景だ。


「私も鬼ではありません。ここは秘密兵器の出番なのです」

「そうだね。茶々子さん。周囲に人影もないし、試し撃ちには最適かな」


 丁度いい状況にノリノリな茶々子は、サキからの同意にも背中を押され、冷静に夢での訓練を思い出しながら、銃側面に配置されている安全装置の切り替えレバーを安全のアから連射のレに切り替えた。


 すると銃口代わりの二枚の板が少し開いた状態となり青白く輝く。


 茶々子は何度も夢で練習したように銃を構えると、上側に連射モードと表示された四角いスコープを覗き込み迷いなくトリガーを引いた。


 スコープ内の十字に映る小鬼へ音も無く青白い線が伸びて両断、トリガーを引いたまま次々と犠牲者を量産し、最後に訳も分かっていない小鬼へ線をなぞればこちらも両断した後、ゆっくりとトリガーから指を離す茶々子。


 青白い線は消えて、小鬼達は五体共サラサラと黒い砂になっていき、後には魔石だけが転がっている。


 青白い光の一閃により、五体の小鬼たちはなす術もなく撃破されたのだ!


 これが正式名称・魔法戦闘小銃マジック・バトル・ライフル、日本での通称魔戦銃の力。


 元々は十センチの鋼板を易々と貫く車載兵器。


 小型化されたとはいえ一階層の相手には過剰火力そのものである。


 その破壊力に夢で魔戦銃に触れたことのある魔法少女達から歓声が沸く。



:おぉ~! 実物は良い感じじゃない! 

:雑魚悪魔に傷一つ付けられなかったのは何だったのだろうね?

:魔法少女にもコピー品が出回っているのか。弱点はあるが、強力な装備だ。

:ただ、弾薬費がとんでもなく高い……。宗寺そうてらは大丈夫なのか?



 最後に聞こえてきた山崎先生の心配する声に冷や汗を垂らし、スコープ内に表示されたエネルギー残量に愕然がくぜんとする茶々子。


 そこには残量50%の文字が黄色い警告マークと共に光っていた。


「良い殲滅力だね。一階層なら一人で十分だったんじゃないかな?」

「そうでもないのです」


 一瞬の出来事に唖然あぜんとしていた仲間たちの心境を代表し、サキがズレていたメガネを直しながら聞いてくるが、硬い笑顔でそれを否定して悪すぎる燃費を報告する茶々子。


「今のでエネルギーが半分吹き飛びました。ちょっと大盤振る舞いしすぎたのです」

「は、半分? ENパックは一本十万だよね。一階層だと完全に赤字……かな?」


 夢の中では弾数無限だったが、現実だとガンガンエネルギーを消耗してしまうのだ。受付の人が驚いていた理由の一つを身をもって理解してしまった茶々子の背中はすすけていた。


 どうやら初心者の扱う装備では無かったらしい。


 ゴブリンが青い石を五個拾い集めてきたが、一階層の魔石の価値は一個千円程度。


 五万円で五千円稼いだ計算となる。


 浅い階層のモンスターは安いコスト(少ない想像力)で製作されているために、ドロップする魔石のエネルギー量も相応なのだ。


「……まあ、ENパックは精霊からの支給品ですので大丈夫なのです」

「精霊からの支援が半端ないね。それなら安心、なのかな?」

「ただし、一度のダンジョンアタックに1本だけポン。節約して使うポン」


 茶々子は支給品などと言っているが、実は貢献点で買っている。

 お金で買うよりは割安であるが、割安でも十万円相当というのは普通の魔法少女にはとても払えない額だったりする。


 その額、1本につき三千貢献点の所を買う人が少ないので割引されて二千貢献点!


 なんと貢献度ガチャ二十連分だ。


 茶々子の金庫番であるポン太が財布の口を締めるのも納得の価格である。


 世界を救ったり強敵を倒しても、今までの使い道であったガチャに意味が無くなってしまった為、貰った貢献点が大量に余っているからこそ使える武装だ。


「さて、皆さんお楽しみの魔石ガチャです。身長+一センチが待っています!」

「私もだけど、このパーティの皆は魔石ガチャが目的なんだよね?」

「あたしは凄い武器をガチャで当てて強くなるのが目標だ!」

「僕はガチャから出る物品で、人類の発展に寄与したいかな。ミユさんは?」

「私は家族の為にお薬が欲しくて。ガチャ産のお薬は高いから、自力で取りに来たの」


 見事に別々の目的を語る仲間達だが、これは偶然ではない。ガチャが目的の子たちを集める事で、ガチャの機会を最大化するのが茶々子の狙いだ。


 魔法少女として手に入れた景品は直接の交換を禁止されているが、今の茶々子は精霊に推薦された人間としてダンジョンを攻略している。


 故に魔石ガチャから出てくる景品を仲間と融通可能なのだ。


 青色の魔石ガチャマシンにたどり着いた茶々子たちは、合計八個の魔石を四人で割り一人につき2回ガチャる事にした。


 魔石を一つも得ることが出来なかったミユが気にしているが、大部屋で一気に五個手に入れて六個というトップスコアを叩きだした茶々子は気にしない。


「本当に良いの? 茶々子ちゃん」

「良いのです。ガチャは欲しがっていない人が当てることが多いので!」

「悪いな茶々子。この借りは働きで返すぞ!」

「そうだねレナさん。等分が基本とはいえ、僕も頑張らないとかな」


 サキの言う通り報酬の分配はもめ事の原因となるため、等分が基本なのだ。


 本当は経費も等分なのだが、支給品だと言ってしまったので魔戦銃のENパックは茶々子の完全自腹である。


「行きます!」


 青く光る石を二つガチャレバーにセットした茶々子は、掛け声と共にいつもの半目でガチャを回した。


 するとガチャマシン自体がその場で回転し、赤青紫と変色を繰り返しはじめる。


「き、来たぁ!」


 変色を紫で止めたガチャマシンは、同じく紫と白のカプセルを吐き出した。突然の幸運に飛び上がって喜んだ茶々子は、紫のカプセルに飛びつくと慎重しんちょうに開封する。


 開かれたカプセルは輝き、後には金属製の兜が残されていた。


「……兜です?」


 喜びが一瞬で鎮火した茶々子は半目で兜を見つめる。



:一階層でURを当てるとは強運だな。あまり聞いたことが無いぞ。

:幸先良いねぇ。まぁ、この調子で頑張れ! 茶々子!

:でも、兜は……。ちょっと……。

:魔石ガチャの景品って、どこかからコピーしてるって噂だよね……。

:誰かのおさがりってコト!?



 もしかして、という考えが捨てきれない茶々子は兜をかぶろうとしていたが、ポン太のスマホから聞こえてくる声を聴いてぴたりと動きを止めると、兜をキラキラとした目で見ていたゴブリンにかぶせてあげた。


「コレあげるので、頑張るのです」

「ゴブゴブ!?」


 サイズが合っていない兜のバイザーを上げたゴブリンは飛び上がって喜ぶ。


 一連の流れを見ていたミユとサキは、手に持つ魔石を見てゴクリとつばを飲み込んだ。


「ゴブリン君は喜んでるけど……。茶々子ちゃん……」

「凄い装備でもおさがりの兜は厳しいかな」


 そんな二人の様子に実家の道場を手伝うことがあるレナは、苦笑いを浮かべながら豆知識を教えてあげた。


「皆は繊細だなぁ。防具が臭いのはフツーだぞ?」

「「えぇ~!?」」


 二人を驚かせてニシシと笑ったレナは二つの魔石をガチャレバーにセットして、一思いに回転させる。


「さて、山崎先生の言い様からして高望みはしないけど、あたしも回すか。そりゃ!」


 すると、白と黒のカプセルがガチャマシンから飛び出した。


「……ハズレか」

「白は(コモン)で、黒はUC(アンコモン)です。一応UC(アンコモン)からは魔法の品も出るとか」


 その結果を残念そうに見つめるレナに、茶々子がカプセルの色による見分け方を教えてあげた。


 結局残りの二人も似たような結果に終わり、相談した茶々子たちは次の階層につながる魔法陣へ進むことにした。


 一階層では滅多に良い物が出ない事は先生の反応からも明らかなので、ガチャの景品が目当てである彼女達は良いものを求めて突き進む。


 まだダンジョンの攻略は始まったばかりだ。

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