第32話 幻獣の力を借りてガチャを……?
精霊城の広場にある金色の貢献度ガチャ前で、青いシスター服を着たチャコが水晶を掲げている。その隣には黒いシスター服を着たフィオナも立っており、チャコの行動を輝く緑の目で見つめている。
「『召喚』! キリンさん来てください!」
チャコが掲げている水晶にお願いをすれば、その場に魔法陣が現れて光り輝きモノクロカラーの麒麟が姿を現した。
その様子を遠巻きに眺めていた魔法少女達は、突然の見慣れない存在に立ち上がって注目している。
「はえ~っ。大きいっすね」『幻獣はでかいナー!? 精霊はこんななのにナー』
すぐ近くで麒麟の出現を見たフィオナは両手のひらで口元を押さえて驚いた。その横を浮いているネロも思ったより大きな白黒の馬体に対し、フィオナを盾にする事で姿を隠す。
紅い目でチャコ達を見下ろした麒麟は周囲を見回すが、辺りには遠巻きにして立ち上がっている魔法少女達しかいない。
赤い目を丸くした白黒の馬はチャコに対して、何のために呼んだのかを尋ねるように視線を向ける。
「ここに座ってくださいね」『まさかこんなことの為に呼ばれるとは思わないポン』
そんな視線を受けたチャコは呼んだ目的を果たす為に、ガチャ前へ麒麟を導くと身振り手振りで座ってもらうことに成功する。チャコのやらせようとしている事に気が付いたポン太からは、呆れたような声が漏れた。
その手に一万貢献点コインを具現化したチャコは、貢献度ガチャにそれを素早くセットすると、自分の呼び出した幻獣の白黒の足を掴み蹄をガチャレバーに引っ掛けて回転させていく。
「おお! いい感じのフィット感です!」
『確実に言えるのはガチャの為のフィット感では無いポン』
見覚えのある行動に、麒麟の紅い目が真ん丸になってしまった。
すると金色のガチャマシンが青赤紫と変色するタイプの演出が始まる。
その演出にチャコの期待感は高まり、両手を握り紫の半目を見開いてガチャマシンを見守っている。
チャコが見守る目の前で白亜の精霊城が揺れ始めて、ゆっくりと浮上していく。
ガチャの演出に夢中なチャコ以外の魔法少女達が、その様子を驚き見上げている。
巨大な建造物が大きく動いてしまったので、ガチャ広場の地面はひび割れて崩れていく。
色の変化を続けるガチャマシンもガチャ広場の地面と共に穴へ落下する。
「むむむ、中々に極端な演出ですね」『これは……面倒な事になったポン』
「先輩、先輩! ちょっとこれは不味いっすよ!?」『あーあー。滅茶苦茶だナー』
危険を察知したガチャ見物の魔法少女達は、精霊城から出来るだけ離れたアーチ形の門がある城壁へダッシュで避難していく。フィオナが一生懸命チャコを引っ張り避難しようとするが、演出だと信じて疑っていない彼女は穴へ落ちていくガチャマシンをじっと見つめており、テコでも動かない。
それを見かねた麒麟が、紫の半目を見開き落ちていくガチャへ手を伸ばすチャコを音叉の様な二股の角で吊り下げて持ち上げると、抗議するフィオナの事も襟首を噛んで持ち上げ、崩れるその場から走り去る。
「ああ! 私のガチャ!?」『落っこちたものは諦めるポン』
「グェ―!? 自分で飛べるっすよ!?」『親切な奴だナー』
洗濯物スタイルで角に吊り下げられたチャコの目に飛び込んだのは浮かび上がる白亜の精霊城と、それにぶら下がっている漆黒の城だ。
漆黒の城は逆様にくっ付いているので、目立つ尖塔がまるで根っこみたいに伸びている。
「精霊城にくっ付いている黒いアレは何です?」
『あれは悪魔城ポン。あの様子だと暴走した悪魔が悪魔城を制圧しているポン』
「悪魔と精霊の城がくっ付いているっすかぁ!?」
『大きな異空間を維持する為の知恵だナー。表と裏で使えば半分で済むナー』
担当達の当然な疑問に、二体は軽い調子で重大な事を答えた。
精霊城の元外壁に駆け上った麒麟は、チャコ達を地面へゆっくりと降ろす。外壁の上は逃げてきた魔法少女達でごった返しており、みんな揃って地面から引っこ抜かれた精霊城on悪魔城を見ている。
「どうして浮いているのです?」
『多分、精霊城への増援を防ぐ為ポン。あそこは転移不可だポン』
「増援が無いと、どうなるんすか?」『精霊城が悪魔に制圧されて、まずいナー』
状況の分からない二人は、何やら色々知っているらしい二体を質問攻めにした。
そんなことをしている間に浮かび上がった合体城で動きがあり、逆様の悪魔城から人型をした灰色の悪魔であるガーゴイルの集団が、両手に円柱状の槍を持ち飛び出してきた。
槍を振り回し突っ込んでくる様子は、とても遊びに来たような感じではない。
それに対してチャコは黒いカードを掲げる事で、ロバ耳魔王の姿と成って浮かび上がり、フィオナは飛行マントの力で飛び上がる。
「【アドラメレク】! 襲ってくる悪魔はやっつけます」『麒麟は送還するポン』
「うへぇ、いっぱい居るっすよぉ」『魔法少女もいっぱい居るから大丈夫だナー』
精霊城の青空に侵食する灰色の影を魔法少女達が迎撃する。
元外壁に集まっている魔法少女たちが対空迎撃装備《魔弾の射手》を使い、迫るガーゴイルを叩き落とす。
落とされたガーゴイルを遠距離攻撃手段の無い魔法少女達が袋叩きにしている。
その様子を見てこちらの手は足りていると判断したチャコは、ガーゴイルの湧きだす悪魔城目掛けて突撃した。元を絶ってしまえば良いという考えだ。
それにガチャを邪魔された恨みもあるので、慎ましい胸元にぶら下がるガチャレバーを握る手にも力が入る。
時々かすりそうになる魔弾の射手の閃光に、緊急障壁の指輪によるバリアーがパチパチとスパークして紫電を放つ。
そんなチャコを通すまいと、複数のガーゴイルが進路上に飛び出してくる。
「ガチャレーヴァテイン! 私のURを返すのです!」『まだ演出中だったポン』
チャコの魂の叫びによってガチャレバーから鉄杖が伸び、彼女の手に収まった。悪魔へ振るわれる鉄杖が腕を砕き、鋭い突きが頭を吹き飛ばし、遠心力を込めた一撃が両断する。
道中を妨害するガーゴイル達を一撃のもと粉砕して叩き落としながら、チャコは突き進む。
「先輩~! 置いていかないで下さいっす~!」『無茶苦茶するナー』
—―ヒャア! 悪魔城に騎兵隊の突撃だぜぇ~!
――先に行って情報を流しちゃお~!
――いやいや、戦象隊だ っあぶ! あぶぶ! 流れ弾ヤバすぎぃ!?
そんなチャコの後を弟子と捨て身のウマとウサギや、ゾウの精霊達が追いかける。精霊は不死身ゆえの捨て身により、弟子はネロのサポートのおかげで、どうにかチャコと共に悪魔城の前まで到達した。
「【悪魔の技】! 上位核熱術式! 私の身長+一センチを返すのです!」『出るとは決まっていなかったと思うポン』
チャコの杖先に展開された魔法陣から白光が迸り、出待ちしていたガーゴイル達を想像力に還していく。
「精霊城と悪魔城の間にある光の膜は何です?」
『土地の境界ポン。通れ無いポン』
ポン太の言葉を聞いて、試しに境界へ飛び込んでみたチャコだったが、たわんだ膜に跳ね返されるので進むことが出来ない。
ショートカットを諦めたチャコ達は、超高熱に晒されて溶けた悪魔城へ突入する。
—―アツゥイ!? しっかぁし、根性ぅぅ~! 携帯トロイ発動だぜ!
無事そうな場所に降りたウマ精霊が、暑さに大量の汗を流しながら、小さな木馬を地面に叩きつけて破壊すると、展開された魔法陣から鬼謀さんと巨兵さんの上位魔法少女二人が現れた。
「鬼謀さんに巨兵さん! 二人も来たのですね」
「ウーマさん、ご苦労様。暴走した悪魔に精霊城を取られるのは悪夢ですからね」
「私は鬼謀さんに呼ばれてきたよ。早いねぇ~、簒奪さん」
急に現れた知り合いに驚いて正気を取り戻したチャコは、二人にフワフワと近寄り、溶け落ちてくる溶岩を打ち払う。
鬼謀さんは息も絶え絶えなウマ精霊の事を労わると、頭上から降り注ぐ溶岩を頭上に展開した紫の盾で逸らす。
そして、周辺の暑さに金色の目をしかめた巨兵さんが、素早く修復の魔法を発動すると、続けて巨大な鎧を具現化した。
「【修復】! ガウェイン! よぉし。私達も頑張ろうね」
巨兵さんの修復で、一瞬にして半ば溶解した状態から元に戻った天井は、現れたガウェインの巨体を何とか受け止めた。その場で膝を突いたガウェインが兜を持ち上げると、中からお揃いの鎧を身にまとった水精霊の騎士達がぞろぞろと飛び出し、隊伍を組んで整列した。
「【自在盾】。予定通り、制圧しながら侵攻します。簒奪さんが居るなら心強い」
水精霊の騎士たちは碧眼を輝かせた鬼謀さんの指示により、悪魔城の地下、精霊城に繋がっている場所へと突入を開始する。一歩一歩確実に進む鬼謀さんは水精霊たちを指揮しながら、擬態しているガーゴイルを宙を踊る六角形の盾達で次々と拘束する。
拘束された悪魔達は水精霊から袋叩きにされて消えていく。
「歩きにくいですね。あ、この二人は私の知り合いの上位魔法少女です」『逆様だから、仕方ないポン』
「内部まで黒一色すね。ドーモっす、チャコ先輩の弟子をやってるフィオナっす」『制作費節約だナー』
「簒奪さんの弟子だったんだ。私はエリス。ガウェインが目立つから、巨兵さんと呼ばれているよ」
安定感がある鬼謀さんの戦いに観戦モードとなったチャコ達は、悪魔城を見物しながら突き進む。
「水精霊の騎士隊を指揮してる金髪の娘は、鬼謀さんです」『盾の魔法を使う娘ポン』
「キビキビ指示を出していてカッコいいっす」『敵地で気を抜き過ぎじゃあないかナー……?』
「実際、頼りになるよ〜」
水精霊の騎士隊と鬼謀さんの魔法に守護された一行は、悪魔の本拠地を呑気に行進する。
彼女たちを待ち受けるものとは!?




