第31話 ガチャと少しの連帯感の為に成せ!
真っ赤な夕日が海原に沈もうとしている。不吉なほど赤い空には雲一つないが、その代わりにポツポツと黒い点が存在する。
それは無数の飛行機らしきモノ達と、その周囲を固める人型達だ。
飛行機に見えるのは胴体と一体化した巨大な翼をもつ首なしの悪魔で、胴から伸びる無数の手には大量の爆弾が抱えられており、頭がない代わりに腹の中心に顔があって真下を睨む。周囲の人型は背中から翼の生えた悪魔で、両手に大盾を持っている。
それぞれ見た目は違うが、その体は同じく頑強そうな岩製だ。
この異形の姿をした悪魔達は、その姿によって役割を完全に分担しており、荷物を持つ事と地上を見る事に特化した作りの首無しが爆撃役を担当し、汎用性のある人型は盾を使っての護衛役を担当している。
夕日の光に赤く彩られた浜辺で、悪魔を迎え撃つのは、魔法少女の集団。
その中でもただ一人青いシスター服に赤いマントを羽織った上位魔法少女、チャコは身長が伸びたからか自信満々で先頭に立っている。その隣にはチャコの弟子であるフィオナが黒いシスター服のそでを握り控えめに立つ。
フィオナは執行官ではないが、チャコが執行補佐官として連れてきた。
執行補佐官というのは執行官のお手伝いさんであり、何か報酬を貰える訳では無いが《《執行任務》》に同行できる存在の事で、報酬については無報酬ではあんまりなので、チャコが《《執行任務》》の報酬を半分わけてあげる予定。
チャコとフィオナ以外の皆は空飛ぶ台車に一眼望遠鏡が付いたようなものに乗っており、真剣に悪魔の爆撃部隊を睨んでいる。
彼女たちも執行官ではないが、緊急事態に精霊城から対空迎撃用装備として《《魔弾の射手》》と呼ばれる装備を支給された熟練の魔法少女達だ。
自分が場違いな所に来てしまったのではないかと、ちょっと涙目なフィオナがここへ連れてきたチャコに縋りつき尋ねる。
「師匠ぅ……。私は飛行練習と聞いて来たっす。決戦とは聞いてないっすよ」
「実戦で飛行練習です。飛行できる魔法少女にとって、あの悪魔はカモですよ?」
チャコは慎ましい胸を張って当然の事のように答えたが、その答えに納得できないフィオナが敵の数についてチャコに縋り付いたまま言及する。
「でもでも、なんか多くないっすか?」『街を吹き飛ばせそうなほど飛んでるナー』
「ちょっと多いですが、あいつらの攻撃手段は爆弾だけです。【アドラメレク】!」
カードを掲げる事でロバ耳魔王の姿になり腰に手を当てたチャコが、浮かび上がりながら爆撃部隊の致命的な弱点をフィオナに教えてあげた。
その説明に勇気をもらったフィオナは、先日当てたUR装備でチャコを追って飛び上がる。
「飛んでいれば、反撃されないって事っすか?」『妙な連中だナー』
「そうです。オマケに顔が胴についてるので正面から近付いても気が付きません」
『楽勝ポン』
チャコ達が悪魔の爆撃部隊を目指して飛び発つと、地上の魔法少女達によって対空迎撃用装備《魔弾の射手》の一眼望遠鏡から雨あられと閃光が放たれ、チャコ達の突撃を援護してくれる。
チャコ達は魔法少女達の放つ色とりどりの閃光に紛れて悪魔の周辺に接近する。
閃光から爆弾持ちを守ろうと、盾持ち達が前に出てきた。
盾持ちはその身を盾にして閃光を受け止める。
その守りをすり抜けた閃光が運の悪いことに爆弾持ちの持つ爆弾に命中して爆発。他の爆弾にも次々と誘爆する。自分の手に持つ爆弾が誘爆する様子を目を見開き見ていた胴にある顔は、爆発の真っ白な光に包まれ爆散した。
大爆発に混乱した隊列へ、接近したチャコ達が畳みかけるように一撃する。
『チャンスポン!』「【悪魔の技】! 上位核熱術式!」
チャコが誤射防止の為に追加魔法陣を使わず両手を前へ突き出せば、正面に展開された魔法陣から白光が奔り護衛ごと爆弾持ちを焼滅させていく。
「【ゲームスタート】っす!」『よし来たナー! この場面なら手数だナー!』
「10が三枚に9が二枚の【フルハウス】っす!」『ぶちかませナー!』
そんなチャコの後ろからタイミングを計り飛び出したフィオナがカードを掲げれば、無数のスート魔弾が展開されて悪魔達を打ち砕く。
穏やかな海が悪魔達の落下を受け止めて波打った。
悪魔達もやられるばかりではなく、盾を構えたガーゴイルが突撃してくる!
慣れない空の戦いで下への注意を怠っていたフィオナへ、両手の盾を突き出した巨大な石像の繰り出すシールドチャージが迫る。
「足元注意です! ガチャレーヴァテイン!」『良い教材だったポン』
弟子の危機に気が付いたチャコが、胸元のガチャレバーを捻りながら宣言して割り込み、素早くガチャレバーから伸びた鉄杖を岩石の巨体へ振りぬくと、その一撃で盾を腕ごとスクラップにされた盾持ちは、爆弾持ちを巻き添えにしてぶっ飛ばされた。
二体の悪魔がぶつかり合って混乱している所へ、今度はチャコが突撃する!
「【悪魔の技】! 必中の呪い!」『やられたらやり返すポン』
チャコの宣言に捩じれた鉄杖は、飛行の勢いのまま二体の悪魔を貫いた。
カードにしている余裕は無いと判断したチャコは、悪魔達を貫いたままの鉄杖を勢い良く振りぬく事で一体を無理矢理に引き抜き、深く刺さってしまったもう一体を蹴り砕く。
自由になった悪魔達は、穏やかな顔で真っ逆さまに海へ落ちていった。
左右に鉄杖を振る事でこびり付いた悪魔の真っ黒な血を払いながら、紫の半目を細め油断なく周囲を警戒するチャコに、キョロキョロと周りを警戒するフィオナが近づいて来た。
「師匠ぅ~! 助かったっす! 突っ込んでくるなんて……」『油断したナー』
「いい練習になりましたね。空中戦は足元からも来るのです」『油断大敵ポン』
チャコ達の強襲に散り散りとなった悪魔達は、地上から放たれる七色の閃光に次々と撃ち落とされていく。盾持ちも地上と強襲してきた二人のどちらを対応するべきか迷ってしまうので、爆弾持ちを守ることが出来ていない。
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「これで最後です。【悪魔の技】! 必中の呪い!」
最後まで生き残ってしまった盾持ちを背後から近寄ったチャコが貫き、ガチャレバーを回転させる。
絶望の表情を浮かべた悪魔は段々と薄くなり、後には一枚のカードが残された。
チャコがヒラヒラと舞うカードをキャッチして、その内容を読み上げる。
「ガーゴイルです。石の体で飛ぶ根性のあるやつ」
『根性じゃなくて想像力で飛んでるポン』
チャコの解説にポン太がツッコミを入れていると、だんだん慣れてきたフィオナが飛んで来た。
「コレを練習と言っても良いのか判断に迷うっす」『完全に実戦だったナー……』
「言ったとおり練習に丁度良かったでしょう?」『実戦に勝る経験は無いポン』
腰に手を当てて笑って誤魔化しながら降下していくチャコをフィオナが首を傾けながら追いかける。
たくさんガチャを回すために、ちょっと厳し目な場所に連れてきてしまったことは内緒なのだ。
「怪我無く無事に訓練出来たしヨシッ!」と開き直ったチャコは、次のガチャに期待しながら帰還する。




