第25話 ガチャと少しの安心感の為に行え!
真っ白な空の下で永遠と石畳の続く場所、中位魔法少女への昇格の為に作られた異空間で金色の剣を掲げた青いシスター服の魔法少女がいる。
弟子の中位昇格試験を手伝いに来たチャコだ。
「『聖樹の加護よ!』気合を入れてください!」「良いサンドバックだポン」
宣言と共にチャコが金色の剣を地面に突き刺せば、その場に大きなミカンの木が出現して金色に発光した。すると光り輝く霧が木から噴き出してボロボロになっている中位悪魔に降りかかる。
それを受けた悪魔の傷はみるみる塞がっていき、その場に倒れたままである以外は何の負傷も無い状態となった。
そこへ白いシスター服を着たフィオナがカードを掲げて宣言する!
「次はA三枚と10が二枚の【フルハウス】っす!」『良い回復力だナー……』
無傷のまま倒れている悪魔を三枚の巨大なAカードが取り囲み、その上から無数の魔弾が降り注ぐ!
散々魔弾で打ち据えられた悪魔へ巨大カードが順番になって倒れ込んできて、大爆発を引き起こした!
悪魔は吹っ飛ばされて転がり、全身から煙を上げて大の字になっている。
『………………今だナー!』「【ゲームリスタート】っす!」
カードを全部消してからネロの指示で再びカードを引いたフィオナが目を通すと、緑の目を細めてにんまりと笑い追撃のポーカー魔法を発動した。
「よし! ハートの【ロイヤルストレートフラッシュ】っす!」「キタキタキタナー!」
フィオナの隣に何故かハートの頭巾姿の輝くネロが現れて、爪も無いぬいぐるみな片手ををぴくぴくと動いている悪魔へ向けるとひょいとすくい上げるように動かせば、なんと術式を発動した。
チャコとポン太は後ろで微笑ましそうに語り合っている。
「頑張っす!」「岩石かナー。【極位岩石術式】だナー!」
「極位! でもちょっと規模が小さいです?」「ここは悪魔対策されているポン」
一部が破損している石畳は悪魔を中心にたわむ様に沈んでいき、表面に鋭利な牙を大量に生やすと一気に悪魔へ食らいつく!
大地の口は食らい付いた後もギリギリと自壊しながら締め上げ続けている。
「おーすごいっす!」「うっぐぐ【上位岩石術式】だナー……!」
輝きがだいぶ弱くなったネロが力を振り絞るように腕を振り下ろし術式を発動すると、咀嚼し続ける大地の口を岩石で構成された剣が悪魔ごと叩き潰した!
頭巾が消えてやり遂げた顔のネロは岩石の剣と共にスゥと消えていく。
フィオナのポーカー魔法で一番強い役である【ロイヤルストレートフラッシュ】は、強い役をそろえることで増えた想像力をネロにチャージするものだったのだ。
元上位悪魔なネロは戦闘での想像力の扱いに長けているので、ちょっと息切れ気味だが強力だ。
直線状に叩き潰されて抉られた大地にうつ伏せになり埋まった悪魔は、再びボロボロになって転がっている。
何をしているのかと言えば、フィオナのポーカー魔法の確認だ。役によって破壊力の変わるこの魔法は、どんな結果になるのか事前に知っておかないと前回の様な自爆じみたことになってしまう。
そのことを危惧したポン太が提案したのが、この中位昇格試験での確認。
ここは周辺に被害を出す事の無い異空間であり、耐久力のある的まで用意されている為にポン太が目を付けたのだ。
複製アスカロンの能力が対象制限がない回復だった事も選ばれた理由である。
ボロボロになって転がっている悪魔へ金の剣、アスカロンを掲げた青いシスター服のチャコが無情なおかわりを告げた。
「『聖樹の加護よ!』もう一回です!」「まだ一種類残っているポン」
「中々出なくてごめんなさいっす」『想像力の乱高下に疲れてきたナー……』
試験官役をしている三十センチほどのペンギン姿な精霊は、悪魔相手といっても凄惨な光景に両翼で目を隠しているが、この試験で悪魔を回復する事は違反ではない為に止めることはない。
再び巨大なミカンの木から噴き出す金色のシャワーで悪魔の傷は塞がっていく。
また同じ展開が繰り返され……る事は無くカードを引いて素早く確認したフィオナの目が見開かれた。
その様子を師匠であるチャコは心配そうに見守っているが、ピンクの前足で器用に腕組みして浮いているポン太は泰然としている。
「ミスったっす【ハイカード】っす!?」『残念賞だナー』
「魔法にスカがあるのはちょっと怖いです」「攻撃を外したと思えばいいポン」
魔法で作られた豚が、少し間が空いたので「ようやく終わりかな?」と頭をちょっと上げた悪魔の頭上へ墜落、運の悪いことに蹄で叩き潰した。
そのまま素早くカードを引き直して掲げたフィオナがしっかりと悪魔に追撃を加える。
「惜しいっすロイヤルな【ストレート】っす」『ただのストレートよりも派手だナー』
人型を作った群体の魔弾が連携して巨大カードへ悪魔を追い詰めていき、最後にカードは魔弾ごと悪魔を叩き潰した!
「【ゲームリスタート】っす!」『ここだナー!』
仕切りなおしてカードを引いたフィオナは、今度こそにんまり笑うとカードを掲げた。
「スペードの【ロイヤルストレートフラッシュ】っす!」「これで終わりだナー!」
スペードの被り物をして爪も無いぬいぐるみな腕を真っ直ぐ向けたネロは、得意げにつぶやきながらフィオナの前に現れると宣言した。
「ちょっと楽しみっす」「核熱も苦手じゃないナー。【上位核熱術式】だナー!」
術式の宣言と共にネロの正面には一メートルほどの魔法陣が展開して、そこから白光が照射される!
高熱でボロボロの石畳を溶かし想像力に還していく白光に照らされると、悪魔は黒い影を伸ばして想像力へ還っていった。
その様子を翼の影からしっかりと見守っていた試験官役のペンギン精霊は、師弟に向かってちょっと文句を言いながらも両翼を振り回して合格を祝福する。
「おめでとう! ちょ~っとやり過ぎだけど、あなたは中位の魔法少女でーす!」
「やったーっす! 師匠のお陰っす!」『核熱はやっぱ消費が激しすぎるナー』
「よくやりました! 弟子よ!」「想像力が馴染めばもっといけるはずポン」
合格にシスター服が白から黒に変わっていくフィオナは、紫の半目を更に細めたチャコと一緒に両手を上げて喜んだ。
核熱術式の途中でチャージされた想像力を使い果たし、消えてしまったネロは声だけで早速の反省会をポン太としている。
サッと精霊スマホを取り出したチャコが確認すれば、上位術式級の魔法発動を成功と中位への昇格を達成という通知がきており、小さくガッツポーズをした。
「弟子よ……早速ガチャへ行きましょうか!」『気が早すぎないポン?』
「わかりました師匠!」『ノリノリだナー……』
顔を上げて謎のノリで弟子をチャコがガチャに誘えば、打てば響くように師匠の誘いにフィオナがついて行く。
ポン太が提案したフィオナの魔法確認は済んだので、チャコ本来の目的であるガチャに直行だ。




