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第23話 精霊城の喫茶店でガチャを回せ!

 ポン太の勧めで精霊城の喫茶きっさ店にやってきたチャコ達。


「いらっしゃいませですワ! 精霊の喫茶きっさ店へようこそですワ!」


 木製のドアを開けると入店を知らせるベルが鳴り、水で出来た女性の姿をした水精霊ウンディーネが歓迎してくれた。ウェイトレス風の恰好に姿を変えていて芸が細かい。


「個室で予約のポン太だポン」

「承りましたワ!」


 それに対して手慣れた様子のポン太が予約を伝えると、メニューが全て想像力で出来ているためカロリーゼロな事もあって魔法少女で賑わう店内を通り抜け、ドア付きの個室に案内される。


「こちらですワ」

「ありがとうポン」


 店の奥に設置された個室内には何故かたくさんの卓上ベルが置いてあり、しっかりとしたテーブルと普通の椅子いすが二つに、精霊用と思われる足の長い椅子まで二つ用意されていた。



 全員が座るのを確認したポン太がピンクの前足で普通の卓上ベルを鳴らせば、テーブルの上が光り輝きそれぞれの前にコーヒーと取り皿、更には真ん中に山盛りのホットケーキが現れた。ホットケーキには四隅にアイスクリームやシロップにバターが並べられている。


 ピンクの前足を広げてそれらを勧めながら、ポン太が話を始めた。


「これは僕のおごりポン。正直な所フィオナの出す攻撃力は想定外だったポン」

「ごちそうさまです。私もちょっと甘く見ていたので危ない所でした」



 ピンクの前足を器用に組んでひじをテーブルに乗せた前傾ぜんけい姿勢のポンタが、黒い目を閉じてフィオナの叩きだした強力な魔法を評価する。

 その横に座るチャコも牛乳瓶型のベルを鳴らして呼び出したミルクを大量に投入しながら、想定外な弟子の魔法威力にはおどろいていた事を認めた。


「ゴチになるナー! 相性最高だからナー! もっとたたえろナー!」

「ポン太さんゴチっす! チャコ先輩! さっきは助けてくれて感謝っす!」


 ポン太の向かい側に座るネロは突然の称賛しょうさんにコーヒーに砂糖をたくさん放り込む手を止めて胸を張っていて、そんな黒猫の横では何も入れずにコーヒーを飲んでいたフィオナが向かい側のチャコにビシッと頭を下げて助けてもらったことの礼を言っている。


「そこで僕が考えたのは、全部のやくを広い場所で試してみる事だポン」

「確かに一度は試しておかないと、危ないかもしれませんね」


 ミルクを入れすぎてあふれそうなコーヒーをソーサーごと持ち上げて飲むチャコは、ようやくコーヒーに手を付け始めたポン太の提案に賛同した。


「そんな都合のいい場所あるかナー? 【ストレート】であの破壊力だからナー」

「試せるものなら試したい所っすけど、あれ以上を試して大丈夫っすかね?」


 ホットケーキをフォークで丸ごと突き刺してかじりつくネロは、その役の確認案に対して疑問の声を上げた。

 コーヒーとホットケーキを少しずつ楽しんでいたフィオナも自分の引き起こした大爆発を思い出したのか少し青い顔をしている。


 コーヒーカップをソーサーからピンクの前足で持ち上げたポン太は、自信ありげにつぶらな黒い目の片方をウィンクしてみせる。


「僕にいい考えがあるポン。確認する事があるから、詳細は次の機会に話すポン」


 #####


 しばらく後、コーヒーというよりもコーヒー牛乳を飲み干したチャコが、コーヒーとホットケーキを幸せそうに楽しみ終わったフィオナをガチャに誘う。


「弟子よ……早速ガチャの時間です」「……たまにはやめないポン?」

「えーと……はいっす! 師匠!」「あんまり見習わない方が良いナー」


 チャコが始めた突然の師匠ムーブに、何とか乗ってきたフィオナが室内をサラッと見渡すが普通の喫茶きっさ店であり、それらしいものは何もない。


「ここでガチャが引けるんすか? 見当たらないっすけど」

「おっと、そうでしたね。このベルを鳴らします」


 たくさんあるベルの中からガチャマシン型の物を引っ張り出したチャコがそれを鳴らすと、開いた天井から金色のガチャマシンが伸びてきてテーブルの上にガチャレバーが出現した。


「おお……! 何だかガチャらせたい意志を感じる充実っぷりっすね」

「初心者に広場での貢献度ガチャはおススメしづらいですからね。その為に用意したんだと思います。さあ、一緒に引きましょう!」


 ちゃんと初心者なフィオナのことを考慮していたチャコは、段々とオープンな場所でのガチャに誘う事で弟子をガチャ沼に引きずり込もうとしている。


 人前でガチャるのは初心者にとって敷居しきいが高いのだ。


 今回の相手は雑魚悪魔以外なので一律三千点を暴れる前に倒した為、五割増しの四千五百点。五百点は魔法少女保険の追加支払いに消えて二千貢献点ずつだが、チャコには昨日今日の分で合わせて二十連分ネロからの支払いがある。


 四十枚の百貢献度コインを具現化してテーブルに並べたチャコ。


「出ることは分かりましたからね。数で攻めますよ!」「少しは貯金するポン」

「ネロさんから聞いてはいたっすけど、ずいぶん出したっすね」「やばいナー」


 そんなことを言いながらもチャコを真似て、今回の稼ぎの全てである二十枚の百貢献度コインをテーブルに並べてにんまり笑うフィオナ、師匠も師匠ならば弟子も弟子である。


「その思い切りの良さ、素晴らしいです!」「??? なんでそうなるポン?」

「それほどでもありまっす!」「フィオナ!? フィオナさーん、ヤメロナー!?」


 その行動にチャコは大変喜んで弟子の事を称賛しょうさんし、ポン太は机の影でこっそりと開いていた師弟用のマニュアルを二度見して不思議そうにしている。


 胸を張るフィオナを止めようとネロが声を上げてすがり付く。が、普段愛想の良くないネロがすがり付くのは彼女を喜ばせる事しかできていない。


「今回は私が先に行くっす!」

「行くのです! 弟子よ!」


 ご機嫌なフィオナによって投入される貢献度コイン、一枚二枚たくさんと、また枚数の分からなくなった彼女は、全部のコインを投入した。


 ネロにまとわりつかれながらゆっくりとガチャを回転させるフィオナ。


 すると部屋の明かりが消えて天井からぶら下がるガチャマシンが回転しながら周囲に光を放つ演出が始まった。


「これは見たことのない演出です!」「なるほどポン。……成功体験ポン?」

「おお! 何だか胸が高鳴るっす」「勝ったナー!」


 謎の演出に二人の期待感が高まる。ポン太は得心が行ったように頷いて、ネロの方はぬいぐるみな爪も無い両手を上げて喜んだ。


 上から大量に落ちてきたカプセルは机に落ちる前に減速、ゆっくりとフィオナの前に整列した。その中には凛然りんぜんと輝く紫のカプセルもある。


 その紫カプセルを選び拾ったフィオナはゆっくりと開いてみせる。


 するとカプセルは光り輝き、その手には赤色のマントが握られていた。それを広げて見せるフィオナ。


「それは知り合いが出していたやつですね! 飛行マントです」「良いモノポン」

「名前からしてチャコ先輩みたいに空を自由に飛べるっすか?」「慣れ次第だナー」


 それを指差してチャコが名前を告げれば、名前から能力を想像したフィオナはちょっと楽しみそうに顔をにんまりさせた。


「今度は私の番です!」「……今回の支払い十回分だポン」

「……行きます!」


 弟子の良い結果に奮起ふんきしたチャコもコインを投入し始める。枚数が多いので両手を使って次々に投入口に入れられる貢献度コインに、ポン太の言葉がこぼれた。


 ちょっと後ろめたくなったのかピクリとしたチャコだったが、その手は迷うことなくガチャレバーを回転させる。


 すると天井からぶら下がるガチャマシンは突如として引っ込んでいく。


「どういうことです? ……泥棒です? むむ!?」「まあ、落ち着くポン」


 その反応に段々目の座ってきたチャコが腰の黒いカードケースからカードを抜こうとすれば、ポン太の静止と共に天井から新しいガチャマシンが出て意表を突いた。


 今のも演出だったらしく、新しいガチャマシンはなんと紫色だ!


 見上げる紫の目に光を取り戻したチャコ。天井からぶら下がるガチャマシンから吐き出されたカプセルは、フィオナ同様に途中で減速してチャコの前に整列する。


 チャコはその中に一つだけ混ざっていた紫のカプセルを迷いなく取り開いた。


 カプセルは光り輝いて、その手には三連の返しが付いた青い槍が握られている。


「槍っすか?」「槍だナー」

「……武器は珍しいです」「ハープーンだポン。投げると悪魔を追尾するポン」


 目を丸くして口を開ける弟子と黒猫の為に、精霊スマホをつついたポン太が説明文を読み上げた。

 せっかくのUR(ウルトラレア)が武器だったチャコは、テーブルに突っ伏しながらも室内なこともあり槍で周りに被害を出さないように気を付けている。


 目的のモノは出なかったが新たな力を得たチャコ。


 この力で身長+一センチを手に入れる為に悪魔と戦うのだ……!

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