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第22話 ガチャと少しの師弟感の為に行え!

 弟子が身長+一センチを出してしまった次の日、茶々子は完全復活していた。


 数多あまたの爆死を乗り越えてきた彼女の強靭な精神は、新しいタイプの爆死にも無事耐えきったらしい。


 いつも通り牛乳(ひげ)を洗面台で流して食後の歯磨きもした茶々子は、階段を上り自室のプレートを茶々子外出中に変えるとドアを開けて入っていく。


 部屋の中には巨大ハムスターであるポン太と黒猫ぬいぐるみなネロの二体が、暇つぶしに精霊スマホをつついて待っていた。

 ドアを開けた半目の茶々子をポン太が気づかわし気な黒い瞳で覗き込み話を切り出す。


「調子はどんな感じポン? ネロから提案があるらしいポン」

「美味しい獲物を予見で見つけたからナー! 付き添いをお願いしたいナー!」


 美味しい獲物という言葉に素早く反応した茶々子は、机の上で胸を張り二本足で立っていたネロに詰め寄りながら矢継ぎ早に詳細を聞き始めた。その紫の目は半目から鋭くなって三角気味だ。


「どんな獲物ですか? 場所は?」「……もう元気なら良いポン」

「落ち着いて欲しいナー。街中に人間そっくりな悪魔が居るはずだナー」


 茶々子の気迫に、誘ったネロの方が机の端まで追いつめられてタジタジになってしまう。新たなるガチャの為に稼ぐ気満々だ。


 彼女の身長+一センチへの情熱はおとろえることを知らない!


 そんな様子に完全復活を感じ取ったポン太は「心配して損した」とピンクの両手を肩の高さに持ち上げると、つぶらな黒い目を半目にして赤いクッションに収まった。


 #####


 日本の街中をフィオナが魔法少女のシスター服ではなく、ファスナーを開いた緑色のジャンパーを着て一人歩いている。時々、何かを待つように立ち止まっては再び踏み出されるその足には迷いが無い。


 目立つ顔立ちの外国人が歩いているので、周囲の人々は遠巻きにして道を空ける。


「ネロさん、そろそろいいっすかね?」『そうだナー。獲物も此方こちらを見ていないし。丁度良いナー!』


 一応、そんな状況でも認識阻害にんしきそがいは効いているので、フィオナとネロがタイミングを相談している事は周囲の人間には聞こえていない。


 フィオナはジャンパーのポケットから鈴を取り出し、カバーを外して軽く振る。


 鈴が鳴り響くとたくさん歩いていた周囲の人間は、潮が引くように去って行く。


 これはフィオナがSR(スーパーレア)として引いた人除けの鈴の力だ。皆予定があって道を歩いているはずなのに、人々も車も次々と別の道に逸れていき周囲に人は居なくなった。


 そんな中、一人取り残されて左右を見て慌てている人間? の前で、フィオナがくるりと回るだけという師匠譲りの低レア変身を披露ひろうする。


 白いシスター服に身を包み腰の黒いカードケースに手を置いたフィオナは、人間? に対して宣言した。


「【ゲームスタート】っす!」『このタイミングなら中々の引きだナー!』


 手を当てていた腰のカードケースは光り輝き、その中に魔法のトランプ一式が現れた。


 突然の魔法少女出現に更に動揺した人間? は背を向けて逃げ出す。


 そんな背中に五枚カードを引いたフィオナのポーカー魔法が発動する!


「スペードのA(エース)とハートの2345っす!」『やっちまえナー!』


 妙に素早く逃げようとする人間? をビルの様に巨大なスペードのA(エース)が足止めすると、その周囲を真っ赤なハート魔弾の軍勢が包囲した。


「本当に大丈夫なんすかね?」『大丈夫だナー! 俺が言うんだから間違い無いナー!』「……【ストレート】っす!」


 自信満々なネロの言葉に背を押され、戸惑いがちにフィオナの手は宣言と共に振り下ろされた。次々と殺到する大きなハートの魔弾が絶望した人間? を道のアスファルトごと打ち据える。


 大きな魔弾の直撃に歩道のガードレールは千切れ飛んでアスファルトの地面は引きはがされていき、固められた砂利の地面が露出する。そんな中を人間? がバウンドしたりきりもみ回転している。


 最後に倒れてきた巨大なスペードのA(エース)が押しつぶし、大爆発が引き起こされた。


 爆発の余波に近くに立っていた電柱や信号機も巻き込まれ折れ曲がってしまった。周囲のビルのガラスは一気に全損してガラスの雨が降ってくる。


 降り注ごうとするガラスの雨にフィオナの顔が引きつった。


「ヤバいっす!? どうし……ぐええっす!?」『あっ……うっかりしたナー』

「詰めが甘いです。『加速』!」『もしもし魔法少女保険ですポン? 悪魔災害デモンズディザスターの原状復帰をお願いしたいポン。またなんだポン。今回はビルの窓ガラスが全損したポン。よろしく頼むポン』


 そんなフィオナの隣に高速飛行してきた極彩ごくさい色の魔法陣背負うロバ耳のチャコは、加速の指輪を使い周囲を確認。近くにあった自動車を鉄杖てつじょうに突き刺してひょいと持ち上げる事で傘にするとフィオナのえりつかんで飛び上がった。


 チャコは自動車傘を盾にしてガラスの雨へ突っ込んでいく。


 凶器の通り雨は光を乱反射して美しく輝く、それを浴びた物は自らに棘を突き刺された逆ハリネズミに変えられていく。


「チャコ先輩、助かったっす!」『危なかったナー……すまんナー。フィオナ』

「弟子を守るのは師匠の務めですからね」『未熟な弟子を守るのは大変ポン』


 フィオナの言葉に胸を張って返したチャコは、ゆっくり降下すると盾にした車を静かに着地させてあげる。

 車は盾にした側だけが傷だらけになっていて、まるで一部の酷使を主張する現代アートのような姿だ。チャコがガラス片のまぶされたアスファルトに置いたことで奇跡的に無事だった片側のタイヤも無事パンクしてアートを完成させた。


 きっと精霊の修復部隊が何とかしてくれるだろうと見なかったことにしたチャコ。


 車の無事な所に降ろされたフィオナは、突き刺さった鋭利なガラスを足先で慎重にツンツンした。


「こんな所歩いても平気なんすかね?」『舐めるんじゃないナー。楽勝だナー!』

「わざわざガラスまみれになるのもアレですから、このまま飛んで運びますか?」

『チャコ、甘やかすのは弟子の為にならないポン。戦ってれば良くある事だポン』


 ガラスの雨に周囲は大変な事になっているが、想像力によって守られた魔法少女達はこの程度で怪我をすることはない。

 怪我はしないのだが本能的にとがった物は怖いので、ガラスの上を通らないで済むならば通りたくないのが人情だ。しかし、弟子を思うなら歩かせろと文字通り人でなしのポン太は説得する。


 おっかなびっくりといばらの道ならぬガラスの道を歩いている弟子に付き合い、チャコも一緒に歩いてあげる。【レヴィアタン】で特にこういった状況に慣れているチャコは進みながら怖い場所を歩く時のコツを教えてあげる。


「なんか不思議な感じっす」『想像力で守られてるから、大丈夫だナー』

とがってても意外と刺さらないものです」『想像力が馴染んできている証拠だポン』


 悪魔は現代兵器で武装する事があるので、チャコは地雷原を起爆しながら駆け抜けた事もあるのだ。


 行く先にはあんなにボコボコにされたのにまだ動いている人間? が居た。


 逆ハリネズミになっても真っ黒な血を流しふるえているので、ネロの予見通り明らかに悪魔だ。


 そのあわれな姿にちょっと同情したチャコは、悪魔に鉄杖てつじょうを突き付ける。彼女の慈悲じひに対して、瀕死の悪魔は無理な姿勢で飛び上がり何とか空中で身体をひねって回避しようとした。


「【悪魔の技(デモンズスキル)】! 必中の呪い! 私も鬼では有りませんので楽にしてあげます!」『鬼だポン』


 チャコの宣言に鉄杖てつじょうじれた姿に変わり、勢いよく突き込まれた。空気を割くその一撃は紙一重で回避されたと思われたが、杖先がぐにゃりとじ曲がることによって悪魔の体を綺麗きれいに貫き通して空中ではりつけにする。


 チャコが柄頭のレバーをゆっくりとひねれば悪魔は消えていき、後には人の描かれたカードが残された。


 カードを素早く拾ったチャコはその内容を読み上げる。


「前にも拾いましたが……ドッペルゲンガーのカードです」『ハズレだポン』

「流石っす! 変身が増えるんすよね?」『ハズレ扱いは悲しいだろうナー』

「人に化けるだけなので、強さは雑魚悪魔以下ですね」『哀れではあるポン』


 カードをさっさと黒いカードケースに収めたチャコは、弟子と一緒に破壊され尽くされた街の一角を立ち去っていく。

 街に被害は出たが倒した相手は弱くても雑魚悪魔以外の姿をしていたので、魔法少女保険の追加支払いを考慮しても良い報酬がもらえるだろう。


「さて! 報酬を貰ってガチャに行きましょうか!」『気が早いポン』

「お供するっす!」『あんまり見習わない方が良い気がするのは気のせいかナー?』

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