第20話 弟子と一緒に師弟ガチャを回せ!
藍色のガチャマシン前に青のシスター服を着た魔法少女と、白のシスター服を着た魔法少女が立っている。
腰に片手を当ててもう片手に何かを持っているチャコと、両手で何かを持っているフィオナの師弟だ。
急造の為かガチャスペースは単純な構造になっており、部屋の真ん中にガチャマシンが置かれているだけで他には何も無い。
楽し気な二人は既にコインを具現化済みで、ガチャを回す直前といった様子。
「そういえば」とチャコがフィオナに対して気になった事を聞いてみた。
「ネロの予見の力を借りているなら、レアの出るタイミングだけ回してレア出し放題じゃないですか?」
「…………う~ん、何故かガチャについては見えないっすね。不調っすかね?」
セコイ真似をフィオナにやらせようとするチャコだったが、師匠に従って素直な弟子が試してみても首を傾けていて、どうやら上手く行かないみたいだ。
「不調じゃないナー。どうやらガチャだけが見え無いナー」
「ガチャの不正は出来ないように調整されているポン」
そんな二人の会話にネロが現れて額に爪も無い腕を当てて自分でも試すことでフィオナの考えを否定し、次いでポン太が現れるとピンクの前足を横に広げてその理由を語ってくれる。
「前は見れたけどナー」
「今は前と違って担当の為に見ようとしているポン。その気持ちが条件に引っ掛かるポン」
「……なるほどナー」
ポン太の説明にネロが食い下がっていたが、ポン太が提示した理由にネロはそっぽを向いて納得した。担当の前でそんなことをバラされて照れているのだ。
「ネロさん! そんなに私の事を思ってくれるっすか……!」
「ヤメロナー! フィオナが強くなれば出世できると考えていただけだナー!」
そんなネロに感激したフィオナは、コイン片手に否定の言葉を並べるネロをうりうりと撫でくりまわす。
「確かにネロとフィオナの相性はかなり良さそうですね」
「担当と仲が良いのは想像力の運用上でもいい事だポン」
大騒ぎで親睦を深める弟子コンビを眺めている腕組み後方師匠コンビはそれぞれ好きな事を言って頷いている。
『ガチャをしに来たんだからさっさとガチャるべきだナー!』
「まあ、その通りではあるポン。何枚のコインが集まったポン?」
そんな状況からネロは消えることで逃げ出し、二人にこの場所に来た目的を思い出させる。
ネロの言葉につぶらな黒い目を半目にしながらも一理あると感じたポン太は、集めたコインの枚数を聞く事でアシストをしてあげた。
「色々と条件達成したので合計十八枚です!」
「先輩! お先にどうぞっす」
「じゃあ遠慮なく、ガチャらせてもらいますよ! 『加速』です!」
半目を見開いたチャコが藍色のガチャマシンへ一気に十枚を投入する!
加速の指輪の力も使い本気のコイン投入をやり遂げたチャコは、ガチャレバーに手を置いて精神を集中させている。
「チャコ先輩! 目にも止まらぬ早業っす!」
「まあ……実戦以外で練習するのは重要ポン」
フィオナとポン太の感想にも気が付かないほど集中しているチャコは、レバーを壊さぬように気を付けて回転させた。
「……『加速』ですっ!」
回転させた後に指輪の力を再度使ったチャコは連続で出てくるカプセルを見ているらしい。
一つ目は青いRカプセルだ。
それを見るチャコの目は冷静で次のカプセルに意識を切り替えている。
二つ目も青いRカプセルだ。
新たなカプセルを見送る目は少し厳しくなった。
三つ目と四つ目もまた青いRカプセルだ……!
次々と現れる青いカプセルに目を見開いたチャコは、ちょっとした好奇心で加速の指輪を使ったのを後悔した。
その時点で加速の指輪の効果時間である三秒が過ぎて、一気にカプセルが流れていく。
残りも全てが青カプセルであり、チャコの周りが青カプセルで囲まれている。
それを見回した半笑いのチャコは、先輩の高速百面相と酷すぎるガチャ結果に両手で目を隠しているフィオナへ振り返って告げた。
「ガチャは嘘つきですから信じちゃダメですよ?」
「表示確率は正しいポン。偏っただけだから次を回すポン」
無情なるポン太の宣告にいつも通りの半目でヤケクソ気味に立ち上がったチャコは、残り八枚の師弟コインをセットして回転させる。
するとポン太の正しさを証明するように赤いSRカプセルが三連続で飛び出した。
狙いでは無いとはいえ確率に近いカプセルの排出率にちょっと安心したチャコ。フィオナはその様子を指の隙間からチラッと見て、緑の目を隠すのを止めた。
その後は青いRカプセルが四連だったが、最後の最後で紫のURカプセルが飛び出した!
チャコは演出無しでのUR出現に、口元を手で押さえて喜ぶ。
「UR来ました!」
「先輩おめでとうっす!」
「おめでとうポン。確率は嘘をつかないポン」
二人の祝福に意気揚々とカプセルを開けるチャコ。
開かれたカプセルは光り輝き中からは金の首飾りが出てきた。その意匠はチャコの付けている指輪やアミュレットそっくりで、蒼い宝石を金の葉が包んでいる。
分かってはいても諦めきれずに掲げてみるチャコだが、背が伸びる様子はない。
「……」
「先輩? どうしたんすか?」
掲げたままで固まるチャコの謎行動に首を傾けるフィオナ。
そんな師弟の様子をいつの間にか現れていたネロと黒いつぶらな瞳を半目にしたポン太の二体が何も言わずに眺めている。言わない情けが二体にもあるのだ。
いつもの言葉を飲み込み何とか落ち着いたチャコは、激励の言葉と共にカプセルを具現化した花柄の手提げ袋に回収するとガチャ前をフィオナに譲った。
「幸運を祈ります」
「ありがとっす!」
チャコのやり方を見ていたフィオナは、ガチャコインをゆっくりセットしていく。
一枚二枚……沢山と、途中で枚数の分からなくなったフィオナは思い切って全部のコインを投入してしまった。
振り返ってチャコに頷いてもらうと、元気いっぱいにレバーを回転させる。
すると藍色のガチャマシンが青く変わって、その色をじわじわと濃くしていく。
「これって大丈夫っすか……?」
「これは当たり演出です……!」
再び振り返ったフィオナは腕を組んで頷くチャコに力づけられ、その様子を見守り続ける。
「ビギナーズラックというやつだポン」
「やっぱりナー。持ってるやつだナー」
その様子を眺める二体も連続でURの出そうな事態に身振り手振りでその原因を語り合う。
青さを増し続けたガチャマシンの色はついに紫に変わり、カプセルを三個づつ一気に吐き出し始めた。青や赤のカプセルに混じって紫もある!
チャコに倣って紫のカプセルを拾い上げるフィオナ。
そのカプセルをゆっくりと開けば中には券が入っていて、二本の指でチョンと摘まみ上げられた。
フィオナが書かれていることを読み上げる。
「身長+一センチっす?」
「なななな……!?」
大きく口を開けて紫の目を見開いた驚きの表情で固まるチャコ。
求めるものが自分の直後に出たのだ!
その驚愕は計り知れない
異変を察知した二体が二人の近くに移動してくる。
そんなチャコの様子に気が付かないフィオナは、いつの間にか現れていたネロに出てきた券について聞く。
「これってどういうモノっすか?」
「そのだナー。精霊城の魔法少女クリニックで身長を伸ばせるナー」
「ええ……。ハズレって奴っすかね」
微笑みながら音も無く金の剣を具現化したチャコが、フィオナの言葉に笑みを深くして交換を提案した。
「不要なら、このアスカロンと交換しましょう! 多分凄い剣ですよ!」
「ええ!? そんな凄そうな剣をこんな紙切れと交換なんて何か悪いっすよ」
突然な交換の提案にフィオナは目を見開き、アスカロンはピカピカ光って驚いた。
光った剣に皆の視線が集中する。
「チャコの突飛な行動にアスカロンが起きたみたいだポン」
「……光るなんてお得感がアップしたと思いませんか?」
「その前に直接景品を交換するのは治安上の問題で禁止されているポン」
「そ、そんなぁ……!」
膝を突いて悔しがるチャコ。目の前に欲しいモノがあるのに得ることが出来ないのだ。そんなチャコの様子にフィオナも心配そうにしている。
「そんなに欲しかったんすね。交換できれば良かったんすけど」
「SRも出たし、切り替えていくんだナー」
「はいっす。ネロさん」
魔法少女達が欲しいモノの為に交換と称してカツアゲや搾取を始めたら、精霊達の地道なイメージアップ戦略が台無しになるから仕方無いのだ。
魔法少女や精霊は基本的にプラスの想像力が大きいほど力を増す。
人々を守る魔法少女が裏であくどい事をするのは、バレた時にプラスの想像力をかき消してしまうので厳禁だ。
強くなる為のガチャで、逆に弱くなったら本末転倒である。
身長+一センチが目の前で出てしまったチャコ。
だが考え方を変えれば、出ることも無かったものが出たので目標に近づいているともいえる。
戦え! 魔法少女チャコ!
目標はもうすぐそこかもしれないぞ!




