第19話 ガチャと少しのお得感の為に行え!
精霊城の緑に囲まれた広場でネロから話があると言われて呼び出されたチャコ達は、白いシスター服を着た魔法少女と引き合わされていた。
「私の名前はフィオナっす! 先輩達にはこれからお世話になるっす!」
「先輩……? ポン太、何か聞いてますか?」
「特に話は聞いてないポン」
元気に挨拶してベールから薄緑色の前髪を零す様に深く頭を下げた魔法少女は、その緑色の目でチラリと首を傾けているチャコ達を伺うと、隣で宙を浮いている黒い猫ネロに顔を近づけて小さな声で抗議した。
「ネロさん……どういう事っすか? ベテランの先輩達を紹介するから来いって言っていたのに話が行ってないみたいっすよ?」
「あとは流れで何とかなるナー」
「流れってなんすか!? 挨拶の時点で既に止まったお話の流れをどうやって取り戻すんすか!?」
どうやらこの魔法少女フィオナもネロから何も聞いて無いみたいで、最初は小さな声でしていた内緒話は段々声が大きくなりチャコ達の目の前で寸劇を繰り広げている。
その混沌とした様子に状況を理解したらしいポン太が、ネロに声を掛けた。
「ネロ、まずは担当を得たことを祝わせてもらうポン。めでたいポン」
「フフーン! 予見によると相性最高だからナー! 出世間違いなしだナー!」
ポン太の祝福に鼻高々のネロは腰に手を当ててふんぞり返っている。どうやら予見の権能を使って担当を見つけたらしい。
「担当をチャコと引き合わせた理由は《《アレ》》ポン?」
「そうだナー! 《《アレ》》だナー! 良い制度があったものだナー!」
《《アレ》》で分かりあっている二体を眺めるその担当の二人は、お互いに顔を見合わせて首を傾けている。
「アレってなんすか? 先輩」
「私にもわかりませんね……」
新人のフィオナは兎も角としてベテランであるチャコも知らない《《アレ》》の正体とは……!
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ひんやりとした石造りのダンジョン内で、シスター服の二人組が魔物と相対している。チャコとフィオナの二人組だ。
チャコは蒼い鎧に頭の横からヒレの出る【レヴィアタン】で前衛として突っ込んでくる小鬼を突き飛ばしたり転ばせたりしている。
黒色カードケースからカードを五枚引き抜いた後衛のフィオナはカードの内容に目をさっと走らせてすばやく確認すると宣言する。
「【トリプルドロー】っす!」
フィオナが三枚のカードを放りなげて新たに三枚を引き、ちょっと肩を落としてカードを掲げ光り輝かせる。
「……ハート6とダイヤ6の【ワンペア】っす!」
その場に六つのハート型と菱形の光弾が出現し、チャコが素早く突き飛ばした小鬼を滅多打ちにする。
ボコボコになった小鬼は消えて後には青い石が残された。
「だいぶ慣れてきましたね。もう雑魚悪魔と戦っても良いのでは?」
『雑魚悪魔はちょっと早いポン。もう少し想像力を馴染ませるポン』
『俺の力を貸してるんだからナー。もっと予見を使うべきだナー!』
魔物を倒したフィオナに拍手をするチャコと精霊二体はそれぞれにアドバイスや感想を送った。皆で好き勝手に言っているので言われたフィオナはメモ帳片手に混乱している。
「ネロさんとチャコ先輩!? メモるので、ちょっと待って欲しいっす!」
何故急に出会ったばかりのフィオナをチャコが教導しているのかと言えば、当然の事ながらガチャの為だ……!
ネロも突飛な事はするが部下を持つ幹部であり、何の利益も無く人を動かせるとは考えていない。
チャコを釣る餌を見つけた上で担当の勧誘に踏み切った。
それは師弟制度だ!
下位の魔法少女達の成長速度の遅さに焦りを覚えた精霊たちが中位や上位の魔法少女向けに考えた制度で、その目的は全体の底上げとオマケに強さの違う魔法少女同士の交流により下位には向上心を中位と上位には下位への関心を持ってもらう事である。
何故そんなことをする必要があるのか?
それは魔法少女や精霊は基本的にプラスの想像力が強ければ強いほど強くなるが、人々を助ける魔法少女が弱すぎたりお互いに無関心だったり殺伐としていればプラスの想像力の上り幅は自然と小さくなり先細りになってしまう為だ。
要するに精霊たちの細々としたイメージアップ戦略の一環である。
当然チャコにとってそんな事はどうでもよく、チャコの目的は師弟制度の報酬だ。
報酬の条件を満たすことで特別なガチャコイン類で特別なガチャをすることが出来る。
今チャコ達の居る場所は、精霊達が協定で許されているダンジョンを一部だけ魔法少女しか入れないように改造した、師弟制度専用のプライベートダンジョン。
他の師弟と朗らかにすれ違いつつ、報酬の要件を満たす為にも癖の強いフィオナの魔法を弱いモンスターで練習しているのだ。
彼女の使える魔法は癖が強いがネロの権能と相性が良く、最高な相性などとネロが言うのも頷けるものだった。
その名もポーカー魔法。
カード五枚ルールでポーカーを戦闘中に行い、出た役によって強力な魔法を発動できるギャンブル魔法だ。ギャンブルではあるがネロの予見の権能を使う事によりドローするカードを選定する事が可能な為、慣れれば強力な魔法少女になるだろう。
「ハートの5! クラブの5! スペードの5! 【スリーカード】っす!」
元気な声で掲げて強く光り輝く今度の【スリーカード】は先ほどの【ワンペア】と違い、それぞれの数字の三倍の十五ずつ魔弾が降り注ぎ小鬼数体をぺしゃんこにした!
するとチャコの精霊スマホに通知が鳴り響き、素早く取り出したチャコが弾む声でその内容を読み上げる。
「中位術式級の魔法使用に成功しましたね! 師弟ガチャコイン五枚です!」
『下位の子がすぐに中位級術式なんて出来すぎだポン』
「やったーっす!バンザーイっす!」
『俺の予見とフィオナのポーカー魔法の相性は最高だナー!』
「バンザーイです!」
『……チャコがついてる間に防御方法を確立した方が良いポン』
報酬の要件達成に喜び合う白と青のシスター服の二人。
その陰で今後の育成方針を相談する二体。
精霊たちのイメージアップ戦略は地味に成功しているみたいだ。
師弟ガチャコインとは師弟制度専用のガチャを回す為のコインであり、一定の要件を達成する度に師弟へ同数支給される。
そのガチャ内容は精霊たちの焦りが反映されているのか通常貢献度ガチャの三倍のSR・UR率を誇り、チャコが目の色を変えて導いているのも頷けるガチャである。
「なかなかの枚数が溜まってきましたね。行きますか……!」
「チャコ先輩! 私も一緒に行っても良いっすか?」
「もちろんです! 三倍ですからね。今日は行ける気がしますよ!」
訓練をしながら師弟ガチャコインをたんまり集めたチャコ達は、プライベートダンジョン内のガチャスペースに行くことを決めた。
ご褒美の師弟ガチャが待っている!




