第14話 精霊城で二十連ガチャを回せ!
依頼斡旋所で諸々の手続きを終えたチャコ達は精霊城の広場にある貢献度ガチャ前に立っている。金色のガチャマシンは広場の中心に設置されていて、憩いの場であるそこで休憩する魔法少女は多い。
数多くの爆死を経験しているチャコにとって、そんな魔法少女達の興味本位な視線はそよ風のような物で、気にすることなく真剣にガチャと向き合っている。
チャコの振り上げられた手の中に百貢献度コインが具現化した。
「まずは一回です! やりますよ~!」
「百貢献点あれば精霊城でデザート付きの食事が食べれるポン」
ポン太の誘惑を振り切ったチャコが、ガチャに貢献度コインをセットして力強く回転させる。
一瞬ぶるりと震えたガチャマシンは真っ赤に輝いて赤いカプセルを吐き出した!
一発目から演出を起こしたガチャマシンに、見物をしていた魔法少女達もパラパラとした拍手を送っている。
「一回目でSRとは、流石は現地です! 今日は行けそうな気がしますよ!」
「何が入ってるポン?」
一発目からのSRにチャコの目がクワっと見開かれ、手慣れた動作でカプセルを開いた。
「これは何です……? また爆弾車ですか?」
「違うポン。車の裏にあるボタンを押してみるポン」
「爆弾車はヤメロナー! 怖いナー!」
中から出てきたのは車のおもちゃで、中に運転手が居たりして作り込まれている。半目になったチャコが軽くいじると、ドアレバーまで動いてドアの開け閉めも可能になっていた。
ネロはトラウマが刺激されたのかパニックになっている。
「まさか爆発しないですよね」とチャコがやけに詳しいポン太に勧められるままにボタンを押してみると車のおもちゃは光り輝いて、貢献度ガチャ前には人が乗った車が鎮座していた。
その衝撃的光景に広場の魔法少女達もざわざわと立ち上がって見ている。
チャコが運転手に手を振ると、振り返してきて本当に人が乗っているみたいだが、じっと眺めてみると運転手はリアルだが木製で肩やヒジの関節部分が妙に四角かった。
「これは一体何のためのアイテムなんです?」
「僕が作った本当の自動車だポン。作れたから、作ったポン」
「道路交通法の無い場所向けかナー?」
ポン太が車の下に入ってボタンを押すと一瞬でおもちゃに戻る車。それをチャコが拾い上げて具現化した花柄の手提げに放り込んだ。
再び貢献度コインを具現化するチャコだが今度は思い切って五百貢献度コインを具現化した。見た目は表示されている数字が500になっている以外何も変わらないが、その価値は百貢献度コインの五倍!
五倍の価値があるコインを捧げ持つチャコが、ゆっくりとガチャマシンのレバーにセットして息をついた。
「ヨシ! 五連行っちゃいます!」
「思い切ったポン。購買で日本製の小型テレビが買えちゃうポン」
チャコは感触を確かめるように、レバーを回さない程度に動かしては戻すの動作を繰り返し始めた。
慎重にレバーをガチャガチャするチャコに、ポン太から突っ込みが入る。
「回すならさっさと回すポン」
「むむむ……仕方ないです」
気合一捻りとレバーを回転させたチャコ、すると金色のガチャマシンが大きな反応を起こす。
光り輝いた貢献度ガチャがその場で回転を始めたのだ。
「ん? この演出は……」
「昨日見た気がするポン」
ぐるぐると回転するガチャマシンに魔法少女達が立ち上がるが、これを昨日見たチャコと一部の魔法少女の反応は淡白である。昨日見たハズレ演出なので期待出来ないのだ。
光が収まった時、ガチャマシンの色はなんと紫に変わっていて紫のカプセル一つと、青いカプセル四つを吐き出す。
マシンは元の金色に戻った。
突然の紫カプセルに固まるチャコ。淡白だった魔法少女達も素早く立ち上がって、元々立っていた子に混ざり祝福する。
紫のカプセルを拾い上げたチャコは手慣れた様子でカプセルを開いた。
「……指輪です?」
「とりあえず付けてみるポン」
出てきたのはカットされた黒い宝石付きの指輪で、素早く指にはめて掲げたチャコの身長が伸びる気配はない。
祝福の拍手の中、膝をついたチャコ。
黒い精霊スマホをつついていたネロがチャコの出した指輪を見つけて、説明文を読み上げた。
「加速の指輪だナー。発動句の『加速』と唱えれば3秒間2倍の速度で動けるらしいナー」
「私の身長+一センチ……」
凄い効果の装備だが、チャコの目的は身長を伸ばすことであって、戦力を伸ばすことではない。
うわ言のように求めるものをつぶやくチャコへ、ポン太が助言した。
「まだ十四回あるポン」
「そうですね……! まだ六回です!」
その言葉に正気を取り戻したチャコは、百貢献度コインを一気に十四枚具現化して抱えると一枚ずつ投入していく。
「『加速』です!」
手に入れたばかりの力を使いこなしたチャコは、二倍速ですべてのコインをガチャマシンに納めると感想を漏らした。
「周囲は遅く感じますが私自身は普通に動くので、コインのセットに使っても意味がないですね……」
「パフォーマンスには良いポン。ギャラリーが盛り上がっているポン」
チャコの目にも止まらぬコイン投入に、見物していた魔法少女達は全員立ち上がって拍手している。
そんな話を聞いても気にしていない半目のチャコはガチャレバーを力強く、しかし壊さないように掴み回転させていく。
金色のガチャマシンは次々に赤と青のカプセルを吐き出していき赤が四個、青が十個の結果となった。
「……」
「こういう日もあるポン。どちらかと言えば大勝利ポン」
「一パーセントを当てたんだからもっと喜ぶべきだナー」
どちらかと言えば運の良い結果だが、欲しいものが出なかったチャコは無言でカプセル達を回収してパラパラとした拍手の中を立ち去ろうとする。
そんなチャコに近づいて来る魔法少女が居た。
青いシスター服に身を包んだその少女は、ベールからはみ出した長い黒髪を揺らしてチャコの顔を覗き込むと声を掛けてくる。
「簒奪さん? 美味しい話があるんだけど~乗らない?」
「魔弾さん……今日は放っておいて欲しいのです……」
楽しげな顔をした魔弾さんからの誘いに、半目のチャコはフラフラと立ち去ろうとするがその目の前にぴょんと飛び出してきた魔弾さんが腰のポーチから紙を取り出して見せつけてくる。
書かれている内容を見て紫の目に力が戻ってきたチャコ。
「一人一枚のUR確定ガチャコインですか!」
「そうそう! 上位の悪魔が暴れてるから倒しに行こ~!」
素晴らしい報酬に完全復活したチャコは、快活に笑って手を挙げる魔弾さんの誘いに飛びついた。
「人助けは大事ですからね! もちろん同行します!」
「そうこなくちゃ! こっちだよ~!」
返事を聞いた魔弾さんがチャコの手を取り引っ張っていくと、顔を見合わせたポンタとネロが急いでついて行く。




