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第13話 ガチャと少しの充実感の為に導け!

 依頼斡旋(あっせん)所のカウンター横にある魔法陣上へ、青いシスター服に身を包み赤いマントを羽織った女の子と浮遊する黒猫のぬいぐるみが現れた。

 女の子は、縄でぐるぐる巻きにした二頭身のおじいさんを引っ張っている。


 ダンジョンの主である精霊を捕まえてきたチャコ達だ。


 行く時には居なかった二頭身のおじいさん精霊を捕縛して帰還したチャコ達を水で出来た半透明の女性、水の精(ウンディーネ)が出迎えると、現れたポン太が慣れていない二人の代わりに受付をしてくれる。


「ずいぶん早いお帰りですワ。お客様もつれてきたのですワ?」

「客じゃなくて協定違反者だポン。捕縛をよろしく頼むポン~」

「報酬は山分けナー。今回は俺の予見が大活躍したんだナー!」


 おじいさん精霊を客と勘違いした水の精(ウンディーネ)にポン太が訂正して、素早く反応したネロが報酬の分け前を主張した。


「そこのノームを尋問部屋に放り込むのですワ」


 その訂正に水の精(ウンディーネ)が厳しい顔で指を鳴らすと、鎧騎士姿の水のウンディーネたちが現れて彼女の指示でおじいさん精霊、ノームの両手をがっしりと掴み現れた時と同様、拘束したノームと共に一瞬で消え去る。


「協定違反者の捕獲お手柄ですワ。ボーナスは尋問じんもん後になりますワ」

「時間が空いたから次の仕事に行くポン。何かあるポン?」

「バンバン働いて、偉くナーってやるナー!」

「精霊のお仕事はせわしないですね」


 ボーナスが後だと聞いたポン太とネロは早速次の仕事に向かおうと水の精(ウンディーネ)に聞いていて、それを見ているチャコは目の前の先生と生徒のやる気具合にいつも通りな半目でぼやく。朝一番の爆死にちょっとブルーなのだ。


「今ある日本でのお仕事は、先ほどと別の場所での巡回だけですワ」

「よろしく頼むポン」


 ポン太の返事に水の精(ウンディーネ)が頷くとカウンター横の魔法陣が再び輝き始める。


 輝く魔法陣へチャコ達は踏み込んでいった。


 #####


 寂れた神社の苔むした狛犬の間に、青いシスター服を着た女の子と宙を浮く黒猫のぬいぐるみが現れた。


 石畳に降り立った女の子はチャコだ。


 周囲を見回して神社の位置を確認したチャコは、飛ばされた場所についてポン太に質問した。


「山中の神社なんて辺鄙へんぴなところに出ましたね?」『人目につかないのが優先だポン』

「なるほど」


 的確なポン太の説明に納得したチャコの耳にネロの声が届く。


「今回は悪魔が居るナー! でも人間の多い所で暴れないでいるナー?」

「不思議な悪魔ですね。暴れる前にやっつけましょう!」『暴れる前に倒せれば貢献点が多くもらえるポン』

「なるほどナー。むぐ! 何をするナー!?」


 気を取り直したチャコが素早く判断を下すとネロをむんずと掴み、腰の黒いカードホルダーからカードを引き抜いて掲げる。


「【アドラメレク】! ネロ、案内を頼みます!」『便利な悪魔レーダーだポン』


 青いベールからロバの耳を生やしたチャコが、極彩色の魔法陣を背負って一気に飛び立った!


 寂れた神社がみるみる遠ざかっていく。


 勢い余って雲を突き抜けたずぶ濡れのチャコは、手に持つ同じくずぶ濡れ猫のネロに問いかける。


「悪魔はどっちにいます?」『雑だポン……』

「ギャー! 水浸しだナー……あっちだナー」


 さんさんと降り注ぐ日差しを浴びて輝く水滴を弾き飛ばし、チャコがネロの指差す方向へと突っ込んていく。


 今度は雲をしっかり避けたチャコは、半乾きのネロと共にビルの上に降り立った。下にはたくさんの人達が行き交っていて悪魔が居るとは思えない。



「……どこにいるんです?」『暴れている様子は無いポン』

「あそこだナー!」


 ネロが指さした先は色とりどりの電飾で飾られた機械の並ぶ場所で、ゲームセンターだ。

 その場所に対して目を丸くしたチャコがネロに聞き返す。


「本当にあんなところに悪魔が?」『人がいっぱいいるポン』

「俺の予見ではあそこだナー」


 その答えにしばらく考えたチャコは自分に呪いをかけた。


「【悪魔の技(デモンズスキル)】! 変身の呪い!」


 悪魔の呪いで見た目だけ茶々子に戻ったチャコは【アドラメレク】の空を飛ぶ権能は健在なので、ビルの屋上から人気のない路地へゆっくりと飛び降りると、一緒に降りてきた黒猫ぬいぐるみであるネロを捕まえて人の行き交う表通りへ歩き出す。


 そして何食わぬ顔で表通りに出て、歩行者の列に加わった。


 このやり方は認識阻害にんしきそがいが最大限効果を発揮する変身前の姿のまま、変身後の力で不意打ちできるので人の多い場所で活躍する戦法なのだ。


 ゲームセンターへの道をちょっと目立つ歩行者として進んでいく茶々子。


 茶々子がゲームセンターの自動ドアに近づくと、店のBGMとゲームの音楽の入り混じった独特な音の波に歓迎された。


 開いた自動ドアを通って軽く見まわしてみるがゲームを楽しんでいる人間ばかりで、悪魔らしき存在は見当たらない。


 認識阻害にんしきそがいも効いているしこの騒音の中なら大丈夫だろうと、ちょっと濡れているネロに話しかける茶々子。


「ネロ、遊んでいる人しかいないですが空振りですか?」

「あの女だナー。人間に乗り移っているみたいだナー」


 ネロの指差す先にはゲームマシンに食いつくようにして遊んでいる女性が居て、茶々子が便利なR(レア)景品の精霊メガネを具現化して着ければ確かに女性と重なる様に人影がはみ出て見えている。


 何かに乗り移られている人間の見え方だ!


「ガチャレーヴァテイン……」


 目標を発見した茶々子が、つつましい胸元にぶら下がる金色ガチャレバーをつかかかげてこっそり言うと、ガチャレバーの裏から一メートルほどの金属棒が伸びてきて、鉄杖てつじょうに成り茶々子の手に収まった。


 ゲームマシンに夢中な悪魔入り女性の後ろから鉄杖てつじょうを突きつける。


「【悪魔の技(デモンズスキル)】! 悪魔退散の呪い!」


 呪いによって人間そっくりな悪魔が女性から飛び出した!


 悪魔は突然な事におどろき、床に手を突いたままの姿勢で呆然ぼうぜんとしているが、その手はゲームをしていた時の名残でゲームセンターの床をリズム良く叩いている。


 一方、悪魔に乗り移られていた女性は気を失い、遊んでいたゲームマシンにうつ伏せで寄りかかっていて、ゲーム内では操り手の居なくなった自機がボコボコにされて爆発炎上した後、画面が暗くなりゲームオーバーと表示されて悪魔の未来を暗示した。


 新たな呪いを使ったことで変身の呪いが解けて元に戻ったチャコ。



 ゲームセンターの中に極彩ごくさい色の魔法陣を背負った魔王が降臨して場が騒然そうぜんとしてしまったが、気にしないチャコは飛び出してきた悪魔へ鉄杖てつじょうを向けて宣言した。


「【悪魔の技(デモンズスキル)】! 必中の呪い!」『運の無い奴ポン』


 その言葉に悪魔は何かをわめきながら逃げ出そうとするが、螺旋らせん状にじられた鉄杖てつじょうがチャコの怪力で突き込まれると、片手持ちの螺旋槍らせんやりは逃げようとした悪魔を不自然に追尾して突き刺さった。


 人間そっくりな悪魔がゲームセンターの床にはりつけにされて苦しんでいる。


 遠巻きにチャコを見ているゲームセンターの客へ、ペコリとロバ耳の飛び出している頭を下げながら自然に根元のガチャレバーを回転させていく。


 すると、苦しんで黒い血を流す悪魔が薄れていきカードが残された。


 床に深々と突き刺さっていた螺旋槍らせんやりを破砕音をひびかせて軽々と引き抜いたチャコが周りを見渡すと、目を向けられた人々が後ずさりして離れていく。


 人々の様子に首を傾けて、悪魔が退治されたことを教えてあげるチャコ。


「どもー! 魔法少女チャコが悪魔を退治しました!」『絵面悪すぎポン……』


 その足元には砕けた床と真っ黒な悪魔の血だまりが残っていて、悪魔に取りつかれていた女性は気を失ったままゲームマシンに寄りかかっている。


 カードを回収したチャコは騒然そうぜんとしている周囲へ愛想笑いを浮かべて一言告げると、赤いマントをひるがえし去っていく。

 しゃべるわけにもいかない黒猫ぬいぐるみなネロは、何かを言いたげな目でチャコを見ている。


「サヨナラー」『もしもし、魔法少女保険ですポン? 悪魔災害デモンズディザスターの原状復帰をお願いしたいポン。まただけど、今回は軽いポン。悪魔に取りつかれた女性の介助と壊れた床の修復、後は悪魔の血を片付けて欲しいポン』


 途中でたくさんの人がごった返していたが、魔王みたいな姿のチャコが近づくと蜘蛛くもの子を散らすように道を空けてくれる。

 ゲームセンターの騒音と、客のさわがしさを自動ドアがまとめてシャットアウトすると、チャコは空へ飛び立った。


 雲を避けて楽し気に空を駆けるチャコがポン太に話しかける。


「今日は怖がりな人が多かったです」『もう少し気を使った方が良いポン』


 ポン太の忠告をロバの耳に念仏で聞き流したチャコは、山中の寂れた神社に着陸して宣言した。


「やっぱり精霊城でガチャりますよ~! 昨日の十連もしっかりやっちゃうから二十連です!」『忘れてると思ったら覚えてたポン。もう少し貯金するポン』

「今日も貢献度ガチャをやるのかナー。昨日あんなに散財したのにナー」


 その散財っぷりに呆れている二人を気にしないで、チャコはガチャレーヴァテインを元のガチャレバーに戻し、ロバ耳と極彩ごくさい色の魔法陣を消して元の姿に戻ると急かす。


「貯金は今日頑張った分で十分です! 依頼斡旋(あっせん)所に戻りましょう!」『……まあいいポン。昨日吹きとばした貯金も順調に戻ってきているポン』

「多少は元が取れてればいいけどナー。一日千点は重すぎるナー……」


 精霊スマホを取り出したポン太は、いつも通り爆死していたチャコの貯金が回復しつつあるので、チャコが言っている案を認めた。

 貯金話で毎日千貢献点を払っている現状を思い出したネロは、黒猫ぬいぐるみの赤い目を半目にして悪魔スマホと替えてもらった黒色の精霊スマホをながめている。


 精霊城で二十回も貢献度ガチャを回すつもりな、ガチャ魔法少女チャコ。


 果たして目当てである身長+一センチを当てることが出来るのか!?

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