受験生のときほど勉強以外のものに夢中になりがち
「行くで、これから3人でパリに。」
「いやいや、行くで、じゃないよ。どこから突っ込んだらいいのか、、」
断言する梢さんの言葉に、真実さんが狼狽えている。
「薫ちゃんは高校3年生で受験生だよ。僕だってバイドがあるし、旅費だってどうするんだよ」
しかし、梢さんは真実さんを無視し、私に問いかける。
「薫はどうしたい?」
私は違いなく答える。
「行く!」
私の 言葉を受け、梢さんは満足げに頷く。
「よし、分かった。景にはうちが話を通す。任せとき。うちら三人の旅費はウチが出す。そんで、現地であいつに払わせるわ。真実、バイトはシフト変えて貰え。最悪、景をピンチヒッターにすれば認められるやろ」
「そんな、めちゃくちゃな」
ため息をつく真実さん。しかし、言葉とは裏腹に、バイトのシフトを変えてもらうため、スマホですぐに連絡を入れている。
梢さんの突然の無茶ぶりには私もはじめは驚かされたけれど、今ではもう慣れている。毎度、驚くのは変わらないが、その行動力に感心する。それに、いつも明確な目的があっての行動なので、信頼している。真実さんと梢さんは長い付き合いのようだし、真実さんは、私と同じで、梢さんの行助に驚きはして も、梢さんを信頼しているからこその行助なのだろう。
というわけで、私たち三人は、それかろ約4時間後の18:00に羽田空航で待ち合わせることとなった。
一体、梢さんはどうやってあの過保護な兄貴に、私のバリ行きを納得させたのか分からない。兄貴は梢さんに弱みを握られているのではないだろうか。もしくは、私や真実さんと同じように、兄貴も梢さんのことを信頼しているということなのだろう。