関西弁の人と話してると自分も訛ってくる
私と真実さんも食事を終え、昼休みも後半に入ったことで、学食が混んできたので、場所を移すことにした。昼休みは、昼食を食べるための学食・コンビニ・外のテラスなど、机やテーブルのある席という席が学生で埋めつくされ私ている。いつも、私は放課後にしか来ないので、大学が大学生でこんなにもいっぱいになっている状態は見なれなくて、びっくりした。私たちは全学講議棟の前の木影の下にあるベンチに座ることにした。
「大学って、こんなに人がいるんですね。人がごみのようです」
「あー昼休みはすごく混むんだよね。こんなに混むのは平日の昼間でも、昼休みの1時間だけだよ」
「私は16時半以降のあの閑散とした大学の方が好きです」
「僕も空いてる方が好きだな。まあ、あと30分もすれば、昼休みも終わって、みんな授業に向かうから、元通りになるよ」
あれ、なんかこっちに向かってくる人がいる。 オーバーサイズのスウェットに、淡色のワイドデニムという大学生らしいラフな格好で、ポニテールにした髪を風に揺られながら、早歩きで近づいてくる。私はその姿に見覚えがある。
「梢さん!」
「梢!」
「お、無事にまこっちに会えたんか、薫。大成功やな」
「まあ兄責にも会っちゃいましたが」
「なんや、もう景にバレとんのわのか。つまらんわー」
今日、真実さんが大学図書館にいることを教えてくれた張本人、兄貴の元カノの梢さんである。ちなみに、梢さんは全々関西の人ではないので、これはエセ関西弁である。なので、適当な上に時々訛りを忘れて標準語で話すこともある。
「それで、まこっちと薫は何つながりで知り合ったん?」
「薫ちゃんと梢は知り合いだったんだね。僕と梢は同じ師匠から魔法を習った兄弟弟子なんだ」
「え」「え」
「すまん、薫。こいつ昔から中2な妄想の虚言癖があって。かわいそうな奴なんだ。こいつのことは私がどうにかしておくから、今の発言は忘れてやってくれ」
「真実さん⋯そういう感じなんですか魔法って」
「いやいやいや、梢、何言ってるの。薫ちゃんも本気にしないで」
「そうや。私と薰はもう10年来の付き合いやで。薫が小学生のときから一緒に学校にも通った仲や。薫がうちら2人のうち、どっちの言葉を信じるかは火を見るよりも明らかや」
「真美さん、嘘だったなら、正直に言って下さい」
梢さんが私の肩に腕を回しながら言う。真実さんがあたふたしているのが面白くて、私も梢さんに便乗してみることにした。真実さんは、私にまで疑いの目で見られて焦ったのか、慌てて説明を始める。
「誤解だ、梢、薫ちゃん。実はかくかくしかじかで薫ちゃんは僕の弟子になったんだよ。だから薫ちゃんに梢のことも紹介しようと思ったんだよ。」
「なんやそうやったんか。いきなり重大機密を話し出すなんて、いよいよ頭がどうかしてしもたんか思たわ」
「つまり、こずえさんも魔法使いだったってことですか?なんで今まで言ってくれなかったんですか?というかいつから魔法使いだったんですか?」
「うちは物心つく前から魔法使いやったよ。そやから薫ちゃんと会うずっと前からやな」
「ずっとこんなに身近に魔法使いがいたなんて思いもしなかったよ。このこと兄貴は知ってるんですか?」
「いや知らないよ。基本的に魔法使い以外の人に口外しないから」
「それで梢さんと真実さんはどういった関係なんですか?」
「うちの彼氏や」
「いや、梢さん、そのくだりは今日私が既に兄貴にやっちゃったよ」
「ははは、うちら考えることは同じやな。さすが私の妹分や」
「僕たちは同じ師匠のもとで育ったからね。つまり、兄弟弟子ってところかな」
梢さんと私のノリが分かってきたのか、真実さんは動じずに説明を続ける。
「2人の師匠って誰なんですか?」
「うちのおじいちゃんだよ。せやから、ウチははいつ弟子にになったとか覚えとらんのや」
「まあ、事情は分かった。そういうことやったら、うちも何か手伝うわ。2人はこれからどうする予定なん?」
「この後の授業は休講が決まったみたいで、僕は予定がないから、薫ちゃんとお茶でもしながら魔法について話そうかと思ってるけど」
「うちもこの後は予定ないわ。それやったら、、」
梢さんが私たちを交互に見た。