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36.引っ越しはテストの後で

 「終わった、、」


 高校三年生の一学期定期テストが、今日終了した。科目は、現代文、英語、コミュ英、生物、化学、日本史、倫理、経済の十科目。一日に3~4科目のテストを受けて、三日間ですべてのテストが終了した。


 テスト初日の前日にパリからかえって来たことを思うと、きちんとテストを受けられたことだけでも素晴らしいと思ってしまう。そして、これまでの定期テストと同じように、手応えは全く感じられなかった。これについては、私に言い訳させて欲しい。なにしろ、定期テストの平均点が四十から五十点の学校なのだ。だから、点数自体より、学年での偏差値や、クラス内での順位の方が気になるところ。

 私だって、中学での定期テストでは、勉強すれば百点近い点数がとれるから、やる気を出してテスト勉強していた。でも、高校に入ってからは勉強しても効果が現れにくくなり、あまり定期テストのための勉強をしなくなってしまった。超進学校に入って落ちこぼれてしまった生徒の苦しい言い訳にすぎないのだけれど。


 ただ、私の所属するクラスは、大学の指定校推薦枠がないので、正直言って、定期テストの出来映えにあまり興味はない。ただ、平均点を見て先生が決める赤点ラインを下回ると、放課後の補習に参加しなければならない。これからの放課後は、受験勉強の以外に、魔法の修行にも使いたいから、なんとしても補修は避けたいところ。


 そして、テスト明けの二日間は高校がお休みなので、土日も合わせると四連休となる。この休み中に、私は梢さんのおじいさんの持つ秋葉原のマンションの部屋に引っ越すことにした。


 真実さんは、引っ越し手続の都合で、来週の土日に引っ越すみたい。梢さんは、すでに少しずつ荷物を運び込んでいて、私が引っ越す今日から、梢さんも拠点をこちらに移すみたい。


 「梢とおじいさんに、くれぐれも迷惑かけるなよ。自分のことは、きちんと自分でやること。俺が見ていなくても、学校を無断でサボらないこと。毎日必ず二十時までには家に帰って、帰ったら俺に連絡すること。夏休みが終わった時は一旦家に帰ってくること。梢がいれば心配無いとは思うが、受験生なんだから必ず毎日勉強すること。この五つは必ず守れよ。一つでも破ったら則帰宅だからな」


 まだ家に帰ってこない兄貴に、引っ越しの許可を貰うために電話をかけたら、条件は出されたけれど、すんなりと認めてくれて拍子抜けだった。どうやら、梢さんとおじいさんが、事前に兄貴に連絡して話を通しておいてくれたみたい。どんな口先三寸で丸め込んだのかな。魔法関連に関してはうまく触れずに話したみたいだけれど。


 引っ越し業者に頼むほどの時間もお金もないので、ひとまずこの四連休の間に何往復かして、勉強道具や最低限の生活用品を秋葉原の部屋に運ぶつもり。生活用品は、ちょうどパリに持って行ったものを、鞄ごと持って行く予定だ。


 パリから帰って来て、テスト期間中はずっと梢さんのアパートに止まっていたけれど、今日は一旦自宅に戻ってきた。


 「制服は着たままで、通学鞄に勉強道具を入るだけ入れて、生活用品は兄貴のボストンバッグを拝借してできるだけ持って行くか」


 自宅の最寄り駅から三十分ほど電車に乗り、秋葉原駅につくと、相変わらずの混雑具合。外国人観光客も多いから、平日だっていうのに人がいっぱいだ。この賑わいもたまらなく好きなのだけれど。これから、この街に住むことが出来るなんて、夢みたい。


 「あのマンションかな」


 電気街口を出て、五分ほど歩いたところにある高層マンションが梢さんのおじいさんの部屋があるマンションだ。そして、今日から梢さんと私の住む部屋。


 エントランスのインターホンで部屋番号を入力し、先に到着している梢さんを呼び出す。


 「梢さん!薰です!来たよ~開けて!」

 「よう来たな!待っとったで」


 オートロックの自動ドアを開けてもらい、エレベーターで六階へ上がる。マンションに一歩入ると、静けさに包まれて、ここが秋葉原駅前だということを忘れてしまいそうになる。


 「605号室、ここだよね」


 玄関前に立ち、インターホンを鳴らそうとしたとき、ちょうど梢さんが内側からドアを開けてくれた。


 「薰、テストお疲れ様!どやった?」

 「もう!私のテストのことなんて忘れてくれていいのに!第一声でテストの出来なんて聞かないでよ!せっかく新生活に心躍らせてたところなのに」

 「受験生に勉強の進み具合聞いて、何が悪いねん。さては惨敗か?」

 「そもそも、手応えなんて、さっぱり分からないんだよ!これだから、超進学校は嫌だね~これじゃあ、定期テストじゃなくて、ただの模試だよ」

 「まあ、そんなもんだわな。まあ、とりあえず、はよ入り!」

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