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「お兄ちゃん」より「兄貴」と呼びたい。そして彼氏を紹介してみたい。

「で、おまえら二人はどういう関係なんだ?」

兄貴は真実さんの方に目をやって、回答を求めている。

「あのね、兄貴。こちらは、文学部3年生の榛名真実さん。私の、えっと、、、彼氏です」

「は?」

「え?」

 兄貴と真実さんの声が重ないた おお、また漫画みたい。2人で一つのふきだしみたいな。

「おまえ、俺の妹に手出してタダで済むとでも思ってんのか!このロリコン野郎」

 兄貴が今にもすテーブルを狭んだ向かいに座る真実さんにつかみかからそうな勢いだ。やばい、さすがにふざけすぎた。でも私、引き際の見きわめは得意分野。もうちょっといけるはず。

「私の一目惚れで告白したらOK してくれたの。すごく話が合う人なんだよ。兄貴も気に入ると思うんだけどなぁ」

「ちょ、薰ちゃん!?何言ってるの、、、か、か、彼氏てって?ええええ?」

 今まで何が起こったか分からず放心状態だった真実さんが復活した。案の定パニック状態。ほんと期待を裏切らないなあ。

 おお、兄貴の目が据わってる。私の17年の人生で培った勘が、そろそろ引き際だと告げている。兄貴は騒いでる間は案外冷静なんだけど、黙ったときが危険だ。さてと、ネタバレは潔くいきますか。

「ごめんなさい 二人とも。今の話は真っ赤な嘘です。真実さんは趣味の友人です。図書館で知り合ったの。でもでも、兄貴と真実さんは絶対合うと思うな」

 兄貴にまた、今度は隣の席から顔をスパンと叩かれれた,

「阿呆か。くだらない嘘つきやがって。で?高3のこの時期に学校サボって何やってる?それに昨日、俺の財布から学生証を盗んだだろ。計画的な犯行だな?

「嘘ついたのは本当にごめんなさい。真実さんも。どうしても兄貴に彼氏を紹介するのやってみたかったの。でも女子校で出会いないし、やるなら今しかチャンス無いって思って、つい。えっと、学校サボるのは今日で最後だから見逃して下さいっ。お願いします」

「えっと、お兄貴さん。薰ちゃんもこう言ってることだし、、 あと、いくら妹とはいえ、女の子の頭を叩くのはやめた方が良いと思います」

 私の彼氏じゃないと分かった途端、まったく真実さんのことを眼中に入れていなかった兄貴が、再び真実さんに向き直る。

「あ?赤の他人が兄貴妹関係にまで口出そうっていうのか?」

「わわ、待って待って。真実さんありがとうございます でも私、後でやり返すし大丈夫です。バカ兄貴、兄貴は上背ある上に、ただでさえ眉間のシワで柄悪く見られがちなんだから、ケンカ腰はダメっていってるでしょう」

「・・・」

 久しぶりに三人の間に沈黙がおとずれた。

 実際のところは3秒もなかったのだろうが、さっきまでの騒がしさとのギャップでかなり長く感じられた。この沈黙を破ったのは真実さんだった。

「あの、改めましてここの文学部三年の様名真実です。お兄貴さん、さっきは失礼しました。薰ちゃんとは東口の図書館で昨日知り合いまして、友人です」

さっきの事とは、図書室で兄貴から私とかばたときの二とか、兄貴が私の頭をはたいたのをたしなめた事か、どっちだろう。どちらも混ざっていそうな濁した口ぶりだ。

「こちらこそ。妹が本当失礼な真似をして。俺もつい取り乱して申し訳ない。お前ももう一度ちゃんと謝れ、薫」

 兄貴が気まずそうに目てふせながら 静かな口調で話し出して、私の頭をつかんで 自分と一緒に下げさせた。

「ごめんなさい。真実さん。ちょっとふざけすぎました。反省してます」

 やっといつものペースを取り戻した兄貴が切り出した。

「改めまして、俺はここの理学部三年の雨宮景だ。ええと、少し早いがもう昼時だし、混む前に昼メシにするか」

「うん。そうしよう。真実さん、迷惑かけたおわびで昼ごはんおごるよ」

「え、いいよいいよ。いくらら学食とはいえ高校生の薫ちゃんにおごってもらうわけには」

「薫、俺がこいつにおごれってことだろ?ったく仕方ねえ。お前、何食べたい?」

「え、悪いですよ」

「いいんだって。兄貴は要領いいからバイトでかなり稼いでるし」

「じゃあお言葉に甘えて、ローストビーフ丼で」

「よし、薫はたぬきうどんだろ」

「うん。よろしくー」

「茶ついで待っ てろよ」

「了解!」

 兄貴が学食のカウンターに注文をしに席をはなれると、様名さんが二ヤ二ヤしている。

「ずいぶん面倒見のいいお兄貴さんだねえ。不器用だけど薫ちゃんのこと大切にしてる、素敵なお兄さんだ」

「えへへ。あれで結構な心配性なんです。口うるさいけど、昔から自慢の兄貴なんです。結構、頼りになるんですよ」

「いいねえ、兄妹。僕は一人っ子だから羨ましいなぁ。そういえば薫ちゃん、この大学にはよく来るの?」

「え、どうしてですか?」

「この学食来るまでも僕たちの前歩いていて、迷ってる様子がなかったから」

「あはは、実は結構通いつめてます。高校の授業が終わったら、直接大学に来て、兄貴の授業が終わるまで待ってるんです」

 さてと、ここから先、どこまで話したものか。慣れてるから、いつものように上手に誤魔化すのは簡単だ。でも真実さんに適当な嘘はつきたくない。

「私、どうしても家に一人で居るのが苦手で。兄貴が大学に入ってから、はそうしてて。待ってる間は自習室で勉願したり、本読んだり、あとは構内散歩したり、おやつ食べたり。だから、そこちの大学生より、構内にくわしい自信ありますよ」

「そっか、毎日来てたんなら納得だよ。それに、ますます素敵なお兄さんなんだね。仲良くなりたいなぁ」

「本当ですか!?あの、本当にぜひ兄貴と仲良くしてや て下さい。兄貴ってば、彼女は割と途切れないのに 友人が全然いなくて。本白、高校・大学と一緒のあっくんくらいしか友人なんていなくて」

 ばこ、と頭に何か重量が。あったかい。

「おつおう。人の悪口吹きこむな。このバカ妹め。おまえだって、みーちゃんしか友達いないくせになぁ」

 あ、私のたぬきうどんが載ったトレーか、コレ。さっきまで怒ったのに、私のメニューを一番に持ってきてくれちゃう所とか私ってば本当兄貴に甘やかされてるなあと心の中でちょっと苦笑。

「余計なおせ話なんですけどっ。お先にいただきます,」

「おう。お前はこっち来て運ぶの手伝ってくれ」

「もちろん。僕も行けば良かったですね、すみません」

「いや別に全々。むしろ薫のお守り任せて悪いな」

「もう、お守りって何よ。早く行ってらっしゃーい」

 ひらひらと手を振って、連れ立って歩いていく兄貴と真実さんを見送る。うまく話が途切れてよかった。


「それで、お前らの共通の趣味って何なんだ」

 あとから食べ始めておいて、一番早ぐ食べ終わって緑茶とすする兄貴が、思い出したように聞いてきた。カツ井大盛りって、の中で一言ボリューミーなのに、さすが早食いの兄貴である。私はまだ三分の一くらいうどんが残っていますが。

「えーーと、うーーんと、そうだな、、、。平たく言うと、中世ヨーロッパの歴史についてって感じかな。」

 中学生の頃に買った竹幕もいまだ秘密にしているように、私はまだ真実さん以外の人に魔法への熱い想いを打ち明けたことがない。そして、兄貴には一番知られたくないし、できれば一生隠しておきたい。

 ちらっと真実さんの方を見ると、何やら考えているような顔。

 私の答えの意図するところを考えてくれてるのかも。

「僕は文学部で、ヨーロッパの文学に興味がありまして。背景の歴史についても気になっているので、その関係で⋯」

 魔女狩りとか、魔術といったものが中世ヨーロッパであったことに関連付けて、ぎりぎり嘘ではない発言をしている私の意図をうまく扱みとってくれた様子だ。結構、携転がきくんなんだな。

「そうなのか。中世ヨーロッパねぇ⋯。あー⋯あれか。お前がからハマってるって話してた漫画、主人公の前世が中世ヨーロッパ風異世界の城主の姫だったもんな」

おお、私が数ヶ月前に言ったようなこと、よく憶えてるな。さすが粘着質な兄貴だ。そして、良い方向に勘違いしてくれた様子。

「うん。そうそう。それで図書館で調べようと思ってたら、椿名さんと出会ったんだよ」

「なるほどな。⋯こいつは、学校をたまにサボったり、行動が突飛なことがあるが、まぁ、根は良いやつだから、仲良くしてやってくれたら嬉しい。ただ、これだけは言わせてもらう。大事な妹に手を出したら承知しないからな。」

 保護者的かつ追保護に兄貴が真実さんに挨拶しはじめた。

 「心得てます。こちらこそ宜しくお願いします。」

 そして、真実さんも相変わらず勤じないなあ。

 兄貴は、よし、という風にうなずくと、3限の授業があると言ってそのまま学部棟に向かった。

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