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交錯する文明の新秩序  作者: the chair
第一章 諸国の混乱
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「それで、皇国サマはどんな状況だ?」


ここは、ジェラルド王国の王の間である。


「はっ。ご報告いたします。

旧バートル王国の統治を順調に進めているものと見られますが侵入が不可能であり詳細は不明。

ヨーク川下流域では、恐らく魔物の攻撃で艦船を一隻失うも、順調に進んでおり、理由は不明ですが時折水中で大爆発を起こしています。魔物を攻撃しているのかもしれません。

ロンド大王国内では内乱勢力を大戦力で粉砕していますが、民を攻撃しないように相当腐心しているようで、戦闘で負けることは一切ないものの遅々として進みません。それと、大王国内にいる竜を次々と屠っているらしく、竜の死体を空から運ぶ様子も観察されています。

レッグ湖水国とロンド大王国の国境では、湖水国の要請を受けて巨大な柵を建設しているようです。

また、レッグ湖水国付近に異常な大きさの船が停泊しており、例の航空機とやらが大量に出入りしています。」


「無茶苦茶だな!」


ジェラルド国王は、半ば自棄気味にそう叫んだ。


「連中、いったい何をどうするつもりなんだ。何でもありじゃねえか。そもそも大王国は友好国なんだろうに、そんな乱暴なことをして良いのか?」


「大王国のほうからは、皇国軍が大王の要請と許可を受けているという話と、大王は死んで王太子は皇国軍に保護されているという話があります。確度の低い話ではありますが、王太子は寧ろ無差別攻撃を主張していて、皇国が難色を示しているそうです。前の首席大臣がバートル王国を滅ぼす際に無差別攻撃を命じたところ、国内で大反発が起きてその首席大臣がクビになったとかで。」


「訳の分からねえ国だな!」


「ただ、皇国もどの程度かはわかりませんが軍事力に余裕があるわけではないらしく、降伏勧告に力を入れています。それと、大王国内に相当規模の軍事基地建設を許可させたとか。中央大陸での拠点を確保したいのかもしれません。」


「ふん、軍事力に余裕がないったって、本気でやりゃあ国の十や二十は更地にできるんだろうがよ。たまったもんじゃねえぜ。」


「それと、先日、北バートル山脈のほうで異様な爆発音と不自然な雲が発生したという報告がありました。ロンド大王国のほうまで聞こえたらしく…。」


「あのあたりはよくわからない魔物が多いからな、その仕業じゃねえか…?皇国と魔物が戦ってんのか…。いや、皇国が一方的にやってる可能性すらあるわな。」


そんな会話が続けられている王の間に、突如眩い光が走った。光は次第に人のような形を成し、やや光量を落とした。


「ジェラルド王よ。汝、彼の皇国の弱みを何と心得る。」


光が喋った。


「何奴!」


部下が光に斬りかかるが、刀は光を通り抜けるだけで、何も斬ることはできていない。


「汝、彼の皇国の弱みを何と心得る。」


「…そんなものはないだろう。」


「ファイナルアンサー?」


「は?」


「これ以上答えを変えるつもりはないか?ということだ。」


「いや…うむ…待て、貴様は何者だ。」


「ふむ。失格だ。またのご縁に期待しておけ。」


嵐のように現れ、嵐のように消えた光は、今宵、各国の王家に現れたという。




─────


「ファイナルアンサー?」


「ファイナルアンサー。」


「合格だ。新しきもののなかでは古きものよ。」


光が光量を増し、そしてふと消えた。そこには、黒いローブを纏った人らしきものがあった。


「汝に古き力を与えよう。古き、そして強き魔術だ。今の世界が生まれるより昔、世界が今より栄えたときに用いられていたものよ。汝のもつ魔術は我らの作ったものだが、古き魔術は神の作りたもうたものだ。」


「ふん、それを持って忌まわしき新参者を叩け、か。」


「ふっ…あれを忌まわしいとは思わんがな、実のところ、古き世界にあれはなかったが、あれを知るものはいないではない。…ただ、世界には均衡というものがある。いくらなんでもあれは強すぎるのだよ。」


「気に食わんが、あの忌まわしい力か貴様ら古き民の力か、前者に屈するくらいなら後者に縋った方が多少良い。ありがたく受け取っておこう。」


「ふふ、そうだね。細かいことは追って伝えるよ。」




─────





「帝王国には屈さぬ。しかしあの悍しい連中にも屈さぬ。」


「では、どうされるのですか!?」


「ロンドの諸侯と結ぶ。彼らの建国を認め、同盟を結び、西の帝王国と東のバートル王国もとい皇国に備える。」


「ロンドも敵に回りますぞ!」


「ロンドはあの有様だ。身動きは取れぬ。」


北の果ての地にある辺鄙な国には、まだ皇国とロンドが結んだという報は届いていない。


「だいたいからして、ロンド諸侯の建国を認めるという話であるぞ。我らの領土を増やすわけではないし、我らの領土が失われる心配をする必要もない。我らはただ、西の敵と東の無法地帯を抱えていたのが、西の敵と東の友を持つようになるだけだ。」


「そのまた東とそのまた南には…!」


「ええい、黙らんか!ごちゃごちゃと喧しい!皇国とは明確に敵対するわけではない!もともと我らは孤立しておるのだ!それの何が悪いように変わる!えぇ!?」


沈黙した臣下を睨みつけながら王が捲し立てる。

別の臣下が恐る恐る口を開く。


「ええと…王様、ロンド諸侯と結べるでしょうか…?」


王はにやりと笑みを浮かべた。


「国の命名法則…誰が決めたものであったかのう。なに、奴らを王国として認めてやれば良いのだ。奴らは、うんたら伯国とかうんたら侯国とかいって独立したいのだろうが、王国でもよかろう。我らはそう認めよう。」


「な、なるほど。…確かに喜びそうですな。」


先ほど沈黙させられた臣下は、北方の辺境にある弱小国だけに王と認められたようなことで喜ぶものかと呟いたが、その声は、名策を披露して機嫌の良い王には届かなかった。




─────




「きな臭いのう。」


「無視に限りますぞ、こういうものは。」


「然り、然り。」


「ロンドの泥沼に嵌り、ヨークと諍いを起こし、北の小ヨークが全部を悪いように持っていく。それと、バートルの支配にも手間がかかりましょう。」


「我らは今まで通り、東和北睥(とうわほくへい)を貫けばよろしゅうございましょう。」


「みなまで言わんでもわかっておるわい。」


最古の大国が一、エーテル大王国は、不動の構えである。


「とはいえ、世は荒れようなぁ。東のほうは軒並みあれと組んだという。ヨークは組みせぬであろうが、我が北方といい、この大陸はつくづく争いが絶えぬ。先々のことも考えておかねばなるまい。」


「探りは徹底いたしましょう。」




―――――




「例の新しい国ですが、皇帝や貴族こそいるものの、民が選んだ者による会議が国の決まりを定め、統治するのもその会議が選んだ者たちだそうです。我らは大王を打倒しましたが、彼らは皇帝や貴族を残したというだけで、民が統治する大国であると。」


「本当か!?すぐにでも連絡を取ろう。話をしたい。」


「ちなみに、民が統治するようになってから100年は軽く経っているとのことなので、先輩にあたるみたいですよ。」


「そりゃすごいや。すぐにでも船を出そう。敵ばかりだった我々にとって、数少ない、しかし強力な味方になってくれるかもしれない!」


ここはアルボス民王国。世界で初めて民が選挙で王を選ぶ仕組みを導入した国である。




―――――




大陸の北東に謎の巨大国家が現れ、一国が滅ぼされ、東方の大国ロンド大王国が遂に崩壊し、大陸の南から北東にかけて巨大な同盟機構が誕生するという前代未聞の事態に、中央大陸は正に上を下への大騒ぎとなっている。

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