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嘆きの天使  作者: 山河はんこ
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天使―Angels―

初めて作品を投稿します。見ていただけると幸いです。―山河はんこ

 300年前、闇の世界から『深淵の王』が現れた。

『深淵の王』は『悪魔』を引き連れ、その力で世界を食い尽くそうとした。人間たちは持てる力で抵抗したが、圧倒的力に1人また1人と命を落とし、敗北は確実かと思われた。

 だが、諦めなかった人間たちに、奇跡は応えた。

闇を切り裂き、大いなる光から『天使』と『女神』は世界を救うため現れた。彼女たちに力を与えられた人々は『深淵の王』の肉体を封印し、『悪魔』を闇の世界に送り返した。それから力を与えられた人々は『守護天使』となって『悪魔』を倒し続け、『女神』は世界を守るため人間に転生し、世界を見届け続けた。

そんなそんなおとぎ話のような過去の中で、虹色の君は告げる。

「いつか会いに行く」


 「…またこんな夢か…」

 時刻は午前5時。いつものように同じ時間に目が覚めた。体を起こしていつものように行動を開始する。顔を洗い、制服に着替え、弁当を作る。そして日課の「銃」の手入れを行う。普通の高校生が持つには憚られる冷たい武器を、さも当然のように扱い、いつものように鞄の奥底にしまう。

 時刻は午前8時。そろそろ学校に向かう時間だ。自分1人で住むには持て余している屋敷の玄関をくぐる。朝にしては輝きすぎている太陽に目が眩んだ。その瞬間、大型トラックが道路脇に突っ込んだ―――という光景が浮かんだ。

「今日は道変えて行くか」

普通ならただの幻覚だと片付けるだろう。だが自分――鮮谷 望――は確固たる確信をもって歩き出した。

今日はいつもとは違う、特別な日であることは、10年前から知っていたことだ。


 「おっは~☆鮮谷!今日もでけー背中してんな!」

校門前でクラスメイトの女子に背中を叩かれる。これもいつも通りの光景だ。

「おはよう鮮谷。そういえばさっきトラックが君の家の近くに突っ込んだらしいな。大丈夫だったか?」

眼鏡をかけたクラスメイトの男子に挨拶を返す。

「おはよう2人とも。トラックは別に大丈夫。道変えて来たから」

「マジで!?ホント鮮谷って悪運つえーよなー」

「デジャブとか予知夢的なやつだよ」

少し冗談めかして語る。実際冗談にしか聞こえてないだろう。

「昔からそういった危ない事故は回避できてたらしいな。まさか、本当に予知だったりするか?」

そう、これは予知だ。自分自身でも使いこなせているわけではないから、ただの予知というわけでもないのだけど。

 他愛のない話を続けながら教室に着く。瞬間、背中が泡立つような感覚に襲われた。いつも予知を見るときのように、背中に光が流れていくのを感じて身震いした。この感覚はいまだ慣れない。

「お、どした鮮谷?元気ねーか?そーだ今日放課後なんか食おーぜ!決まりな!」

「どういうつながりなんだそれは。体調不良か鮮谷?」

「…大丈夫。俺ハンバーガーが良いかな」

2人にはばれないように振舞う。もし回収班が接触してくるなら、学校が終わった後の自宅のはずだ。今この場で現れるとは考えにくい。だとしたら、この胸騒ぎは何なのだろうか。自分は思ったより、今日という日に緊張しているのだろうか。

「今日が、俺の運命の日」

2人には悪いが、今日俺はここ日本を離れて、『天使』として戦わなければならないんだ。


 「えー、であるからして、この300年前に発見された新エネルギー『エンジェニウム』は近年になってようやく全世界に普及し、次世代のクリーンエネルギーとして発展し……」

()()()()()()()()授業を聞き流しながら、鞄に触れる。父の最後の言葉が正しければ、今日俺は運命を選ばなければならない。自分が『天使』という存在と知ってから、答えは決まっていた。その為に、俺の16年の人生は全てこの日のために捧げてきた。300年前からの『悪魔』との戦いはいまだ続いている。だが、これを知るのは1部の人間のみ。自分は『天使』の末裔として、その戦いに参加する義務がある。

 また背中が泡立つ。『天使』の力が本能を刺激している。今日が運命の日だからなのか、それとも回収班に他の『天使』がいるからなのか、今までにないほどの力が体を駆け巡る。力が増しているからなのか、夢で見たあの虹色の人が脳裏に瞬く。

「いつか会いに行く」

度々見る、自分たちの始まりの夢。なぜこの夢を見るのか答えはまだ分からない。未来がわかる自分に、誰かが語り掛けているのか―――少なくとも分かっているのは、

「君は、『女神』なのか…?」

自分は、「この人に会わなければならない」ということだけだ。


 「ったー!食った食った!」

しっかり日の落ちるまでジャンクフードを3人で楽しんだ。おそらく回収班はすでに自宅で待機してるはずだ。そうすれば、自分はもうここにはいられない。この2人とも会うことはなくなるのだろう。

「どうした鮮谷?やっぱり体調不良だったか?」

どうやら心配されていたらしい。短い付き合いだったが、せめて心配はかけずに別れよう。

「別に大丈夫。それと2人とも、今日まで―――」

バチリと目の前に別の光景が広がる。明らかにこの世のものではない怪物――資料で見た『悪魔』――が突如として現れる光景。

「何?なんか言ったあざ――」

「走れ!」

普段とは違う声色、表情で緊急事態を伝えて2人の手を引いて走り出す。

「ちょ、何!?」「どうした!?」

2人の困惑を無視して走る。こんなこと初めてだ。日本に『悪魔』は現れるのは稀のはず。せめて2人を安全な場所へ届けなければ、まず戦うことすらできない。

「何、あれ…」

振り返ると、つい1秒前まで自分たちのいた場所に『悪魔』は現れた。闇の中から静寂を破った『悪魔』は、虫のような体をしており、1本の触覚についた目玉がぎょろりとこちらを向いていた。最も目を引くのは足についたブレードだろう。あれを食らえば、普通の人間がたちまち細切れとなる。『悪魔』は補足した目の前の3人を切り裂かんと、まっすぐ向かってきた。

 強く手を掴んで全速力で走る。日々続けてきた訓練と、予知によって逃げるルートは選択できている。自分の身に降りかかる攻撃であれば、予知は確実に働く。だが分かっている。ただ走っているだけでは『悪魔』から逃れることなんてできない。いくら狭い道を選んでも、『悪魔』は道を削りながら近付く。

「きゃっ」「くっ」

2人が躓く。当然だ。2人は普通の一般人。ずっと走り続けるなんて無茶な話だ。未知の化け物に追われているならなおさらだろう。

 『悪魔』はその体躯とは裏腹に、機敏な動きですぐ後ろまで迫っていた。

「2人とも、ここから先は自分の足で逃げてくれ」

鞄を開いて銃を握る。初の実戦で状況は最悪。それでも、自分は『天使』だ。すぐそこまで迫る『悪魔』を見据える。

「何言ってるの鮮谷!?」「無茶だ!」

当然の反応だ。普通であるならば、それはただの自殺行為だ。だが自分は普通ではない。戦う力を持っていて、守る対象がいる。ならばその力を使うのは人として当然のことのはずだ。

『悪魔』の刃が振りかざされる。絶対的な死の一撃が迫ろうとした瞬間―――

「…は?」

1発の軌跡が『悪魔』の体を貫いた。自分が撃った銃弾ではない。恐らくスナイパーの狙撃。銃弾が放たれたのは『悪魔』の直上、つまり何もない空から撃たれたことになる。本来なら不可能な狙撃。だが目を凝らして闇夜の空を見上げると、大型の狙撃銃を掲げた1人の男性が、()()()()()()()()()()()()。彼の背中からは青白い光で構成された幾何学的な翼が輝いていた。

貫かれた『悪魔』は身をよじって自分たちから距離をとり、こちらの出方を待ち始めた。いつの間にか、周りには空の彼と同じ隊服を着た隊員が自分たちを取り囲んでいた。

「えっ、誰この人たち…?」「自衛隊じゃ、ないよな…?」

隊員たちはこなれた動作で陣形を作り、『悪魔』の警戒に当たっている。父の遺した資料の中で、自分はこの人たちのことを知っている。300年前より、この世界を守るために戦っている、防衛機関。その名は―――

「俺たちは『G.S.W』だぜ。覚えて帰ってくれよな!」

目の前の自分たちと同じくらいの青年が答えた。他の隊員とは違う特別な散弾銃を装備している。

「『覚えて帰ってくれよな!』じゃねーんだけど。一般人に覚えさせないでくれる?」

「ゼータさん、日本に来てから元気過ぎるよ」

青年の脇から年端もいかない双子の少女が現れる。一体いつからそこにいたのだろうかと考えを巡らしていると、短剣を持った少女のほうが自分を睨みつけていた。

「お姉ちゃん…?」

「…。はぁー、やっぱ駄目だよコイツ」

少女は振り返って『悪魔』のほうに意識を向ける。短剣の子が姉、槍の子が妹のようだ。突然のことに戸惑っていると、青年は軽い調子で話を続けた。

「あー、ごめんなーこの子日本に来る前からこんな感じでさー、悪気は…んまぁあるっちゃあるのかもしんないけど、気にしないで気にしないで!実はさ今日の朝も…」

青年が話を続けようとすると、『悪魔』は業を煮やしたのか、目の前の集団目がけて触角の目から光線を放った。

「うおっあぶね」

青年が手をかざすと、輝く翼とともに円状のバリアが展開され、何事もなかったかのように光線を防ぎ切った。

「話は後か。エルト、アルゥル、よろしくぅ!」

「分かってる。アルゥル、良い?」

「良いよ、お姉ちゃん」

合図とともに双子の背中に翼が現れる。次の瞬間には光の軌跡だけが『悪魔』の周囲を廻っていた。「超高速移動」。そうとしか形容できない圧倒的スピードで『悪魔』の体が解体されていく。『悪魔』も抵抗を行おうとはしていたものの、その動作を上空からの狙撃で潰されている。ものの数秒で『悪魔』の方が細切れになっていた。

確信した。間違いない。彼ら4人こそ自分と同じ『天使』の末裔たちだ。

「君が、鮮谷 望君で間違いないね」

空からゆっくりと下降してきた男性が告げる。

「私たちは『G.S.W』に所属する『守護天使』≪エクシード≫。私はリーダーのクロト。君の先代、鮮谷 勇吉の遺言に従い、君を『G.S.W』にスカウトしに来た。異論があれば―」

「やります。俺を『G.S.W』に入隊させてください」

異論などあるものか。ようやくスタートラインに立つことができたんだ。『天使』としての責務をようやく果たすことができる。それは、生まれてきた理由にほかならない。

今日、俺は運命を選んだ。世界を守る『守護天使(エクシード)』として、この命をささげる。


これは、人間・天使・悪魔、俺が生きていく世界の話だ。








 



鮮谷 望

性別:男性 年齢:16歳 誕生日:4月9日 血液型:B型 身長:170㎝ 髪色:黒 

好きな食べ物:牛肉(レアが好き) 嫌いな食べ物:梅干し(梅を使った料理も苦手)

趣味:筋トレ・銃の整備 性格:効率的・人間っぽくない

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