8話 スキル
コンコンコン
「トウヤ様、準備はお済ですか?」
デスターニャさんが迎えに来てくれた。
昨晩と今朝の事があるので顔を合わせづらい。
「これから訓練場に案内いたします。馬車の手配をしましたのでどうぞ」
案内されて馬車についたが御者がいない。
「デスターニャさんが馬車を操縦なさるのですか?」
「はい、従者たるもの馬車くらい操れないといけませんので。それと私達従者に対して敬語は必要ありません。見る人が見たら不自然に思われてしまいますので」
確かに身分が高そうな方が従者に敬語を使っていたら不自然に見えるな。
そういった点も気をつけておかないといけないな。
「わかった、これから気を付ける。名前も呼び捨ての方が良いのかな?」
「はい、デスターニャとお呼びください」
そういって彼女は俺が乗り込むのを確認するとドアを閉めて馬車を走りださせた。
~30分後~
カラカラカラ キィィィィィィィ トンッ
馬車の揺れが収まった。目的地に着いたみたいだ。
コンコンコン
「トウヤ様着きました。降りてついてきていただけますか?」
デスターニャさんに案内され着いたのは小学校のグラウンド程の大きさのスペースだった。
観客席があるのでグラウンドというよりはオープンな野球場という感じだ。
「観客席があるということは何か催し物もここでするのか?」
「はい、一年に一度兵士や騎士の練度を確かめるために闘技大会が開かれるのでこのような形になっております」
闘技大会か…デスターニャさん出てそうだよな。
「はい、私も従者の部で参加しております。現在5年連続で制覇中ですね」
さらっと心を読むなと…って5連覇中⁉ 恐るべし。
なんて考えていたらマキシウスがこちらに近づいてきた。
「トウヤ様リリアム様より話は承っております。今まで同じスキルを持つ方が居なかったためスキルを試してみたいとのことですよね。こちらでも過去に発現したスキルを確認しましたがトウヤ様のスキルと同じものはございませんでした」
このスキルは俺だけのスキルって事か。
なおさら使い方がわからないぞ。
「リリアム様よりトウヤ様は魔法が少ない場所から来たため、魔法の基礎から説明してほしいと頼まれておりますがよろしいでしょうか?」
「それで頼む」
マキシウスの説明をまとめるとこうだ。
【魔法の属性 火 水 木 土 金 雷 風 闇 光 月 命 音 】
【魔法のクラス 初→中→上→破→絶→無級】
【魔力量 白→青→黄色→緑→紫→赤→虹】
【魔法の難易度ごとに魔力の消費量が決まっていて、魔法のクラスが上がるごとに消費量は増える。またクラスが上がるごとに魔力量も増えていく。】
「そういえばマキシウスは最初に会ったときに水の魔法を使っていたよな。使えるのは水だけか?」
「私が使える魔法は水と土と風の三種類ですね。水と土は上級、風は破級、魔力量は紫になります」
…こいつやっぱりできる奴だったか。
でもそんな奴でもあそこまで追い込まれたんだよな。
「私が敵に追い込まれたのが不思議そうですね。魔法は上級を超えると広範囲・高威力の魔法が増えてしまうので味方を巻き込みそうな状況では気軽に使えなくなってしまうのですよ。あの場面では後ろにリリアム様やリリアス様がいらっしゃいましたしね。後強力な魔法ほど詠唱なしで唱えるのが難しいのですよ。私が無詠唱で行けるのは中級位までですね」
状況判断的に使えなかったってわけか。
さらっと無詠唱でいけるって言ってるのもすごいな。
「さて魔法の説明はここまでにして一度トウヤ様のスキルを使ってみましょうか。スキルの使い方はスキルで可能とされていたことを言葉にするか頭で具体的にイメージしたら使えます」
言葉にするか頭に具体的にイメージねぇ…「設置!」
………なにも起こんねぇじゃねえかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
無駄に叫んで恥ずかしいわ!デスターニャさんなんて笑いを隠しきれてないぞ!
「トウヤ様…っぷぷ もう一度お願いしてもよろしいですか…っぷぷ」
この人本当に隠す気ねえなぁ!てか笑いすぎだろ!
「設置っ……設置設置設置ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「あははははははっ、トウヤ様本当に貴方様は面白いですね!あははははっ」
何回叫んでも何も起こらない。俺ちゃんとスキルの発現したよな…
何でスキルが発動しないんだと思っていたらマキシウスがアドバイスをくれた。
「トウヤ様、何を設置するかを指定していないのでスキルが発動しないのではないでしょうか?」
…それもそうだよな。マキシウスもさっき具体的にイメージって言ってたもんな。
というかデスターニャさんもしかしてそのことに気づいていてもう一回叫ばせたのか⁉
「はい、気づいておりましたが叫ぶトウヤ様が面白かったのでお伝えしなかったです」
この人も後でお返しリストにメモメモっと…
…気を取り直して頭の中で<C-4爆弾300gを自分の足元から5m先に正方形の形にして地面に設置>とイメージしてみる。
何か体から抜け出る感覚があった後、服に入れていたC-4爆弾が無くなって服が少し軽くなった気がした。
「成功した…のか?」
「今トウヤ様の体から魔力が消費されるのが見えました。発動したみたいですね、残念です」
…デスターニャさん魔力も見えるのかよ。というか残念ってなんだ残念って!
「トウヤ様、成功したのですね!気分が悪くなったりしていませんか?初めて魔力を使うときに気分を悪くする人もいるそうなので」
…マキシウスもそういうことは初めに言ってくれ。
確かに体から何かが抜け出る感覚は慣れないと違和感で気持ち悪くなりそうだな。
「マキシウス、気分は大丈夫だ。それよりスキルを使った結果がどうなったか確認しに行ってもいいか?」
「ええ!行きましょう!」
そうして俺はC-4爆弾を設置した場所を確認した。C-4はイメージした通り正方形で地面に置かれていて、それを動かせるか持ち上げようとしたが動かない。文字通り設置されたみたいだ。
「解除っと」
そう言うとC-4爆弾は簡単に持ち上がった。解除の際は魔力の消費は無いようだ。
今度は発動を試してみるか。普通ならC-4爆弾は雷管か炸薬が無ければ爆発しない。いったいどうなるのか楽しみだ。
「今からもう一個スキルの効果を確認したいのだけど、どっちか防壁みたいなの作れない?もしかしたら爆発するかもしれないから」
「爆発なら私のアクアドームである程度防ぐことができますが…」
「マキシウス頼んだ」
そう伝えて俺は俺達から70mほど離れた場所にC-4爆弾を設置した。
「マキシウス準備はいい?」
「ええ、【アクアドーム】トウヤ様どうぞ」
マキシウスがアクアドームと唱えると水がドーム状に俺達を覆った。
「じゃあいくぞ…発動!」
ドッッッッッッッッッッッ パシャッ パシャパシャパシャッ
C-4が爆発しアクアドームに石や泥が勢いよく飛んできた。
雷管や炸薬を使っていないのに見事に爆発した。
「発動するとその仕掛けたものが発動した状態になるのか…使い方難しくね?」
と、このスキルの使い方を考えていると大勢の人が走ってくる音が聞こえた。
「「「「「マキシウス様!大丈夫ですか!」」」」」
この訓練場で待機していた兵が慌てて確認しにきたのだ。
そして地面に開いた穴を見て唖然としている。
「トウヤ様…分かっていますよね」
「はい。すみませんでした」
俺は謝りながら軍議までに穴を埋められるかなーと現実逃避しようとしていた。